六部
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エンポリオ視点
アナスイの考えで、海の飛沫でこれから追って来るであろう神父の動きを予測する作戦を立てる。その他にアナスイのスタンドを全員の身体へ潜り込ませ、攻撃してきた瞬間を知るという計画もだ。
全員が海の中で固まり合う。アナスイが今の自分は運があるから、もし生き残ったら徐倫に結婚を申し込むと宣言して、徐倫もそれを受け入れていた。
でもその時、きっとアマネはいない。
「……トム。生き残ったら自分で言うつもりだが、もし無理なら伝言を頼んでいいか」
足の付かないエンポリオを片腕で抱き上げていたトムへ、承太郎が小声で話しかける。海へ来るまでにスタンド能力なのか宙を飛んだトムはアマネの息子で、ここへ来てから会ったばかりだ。
「何?」
「……アマネに、『わたしだって生きていた』と」
「自分で言え馬鹿野郎」
トムは無碍もなかった。それから視線へ気付いたらしくエンポリオを見下ろして、珍しい紅い瞳で笑う。
口角をちょっとだけ上げる笑い方だった。
「僕が怖いかい?」
小声で訪ねてくる。
「……ううん」
「そうか。僕は父さんと違うからね。どんなことだって出来るよ」
「……アマネさん。優しかったです」
「あの人の『命の答え』のお陰さ」
太陽が東の空へ昇ってきて、時間が更に加速される。壊れないのが逆に不思議なくらい時計の針が回転し、海の波が激しくなった。
加速した時間に波の動きも合わさったからだ。これでは神父の動きは分からない。
次の瞬間には、皆が海に浮いていた。
エルメェスの両腕が無くなっている。アナスイの胸には穴が開いていた。承太郎の顔面にも右側へ切り裂いたような深い傷。エンポリオを抱えていたトムは首を切り裂かれていた。腕も切り裂かれていたから、エンポリオのことを庇ったらしい。
たった一人になってしまった状況から、徐倫がエンポリオを逃がした。イルカにエンポリオの身体を縛り付けて、生き物に加速する時間は関係ないから。
「ひとりで行くのよエンポリオ。アンタを逃がすのはアマネでありアナスイであり、エルメェスでありトムであり……あたしの父さん空条承太郎」
そこに徐倫本人の名前がない。
「生き延びるのよ。アンタは『希望』!」
言っていることを理解できても分かりたくなかった。だってエンポリオはまだ子供だ。神父へ適う力を持っているでもない。
なのに、徐倫はひどいことを言う。
イルカの背から、徐倫が糸を切ってその場へ残る。
「来い! プッチ神父」
叫んだ声が意味もない。きっと死んでしまった皆の死体は時の加速によって腐り果てている。徐倫だって死んでしまったらその身体は腐って骨になって風化して、何も残らない。
何も――。
アナスイの考えで、海の飛沫でこれから追って来るであろう神父の動きを予測する作戦を立てる。その他にアナスイのスタンドを全員の身体へ潜り込ませ、攻撃してきた瞬間を知るという計画もだ。
全員が海の中で固まり合う。アナスイが今の自分は運があるから、もし生き残ったら徐倫に結婚を申し込むと宣言して、徐倫もそれを受け入れていた。
でもその時、きっとアマネはいない。
「……トム。生き残ったら自分で言うつもりだが、もし無理なら伝言を頼んでいいか」
足の付かないエンポリオを片腕で抱き上げていたトムへ、承太郎が小声で話しかける。海へ来るまでにスタンド能力なのか宙を飛んだトムはアマネの息子で、ここへ来てから会ったばかりだ。
「何?」
「……アマネに、『わたしだって生きていた』と」
「自分で言え馬鹿野郎」
トムは無碍もなかった。それから視線へ気付いたらしくエンポリオを見下ろして、珍しい紅い瞳で笑う。
口角をちょっとだけ上げる笑い方だった。
「僕が怖いかい?」
小声で訪ねてくる。
「……ううん」
「そうか。僕は父さんと違うからね。どんなことだって出来るよ」
「……アマネさん。優しかったです」
「あの人の『命の答え』のお陰さ」
太陽が東の空へ昇ってきて、時間が更に加速される。壊れないのが逆に不思議なくらい時計の針が回転し、海の波が激しくなった。
加速した時間に波の動きも合わさったからだ。これでは神父の動きは分からない。
次の瞬間には、皆が海に浮いていた。
エルメェスの両腕が無くなっている。アナスイの胸には穴が開いていた。承太郎の顔面にも右側へ切り裂いたような深い傷。エンポリオを抱えていたトムは首を切り裂かれていた。腕も切り裂かれていたから、エンポリオのことを庇ったらしい。
たった一人になってしまった状況から、徐倫がエンポリオを逃がした。イルカにエンポリオの身体を縛り付けて、生き物に加速する時間は関係ないから。
「ひとりで行くのよエンポリオ。アンタを逃がすのはアマネでありアナスイであり、エルメェスでありトムであり……あたしの父さん空条承太郎」
そこに徐倫本人の名前がない。
「生き延びるのよ。アンタは『希望』!」
言っていることを理解できても分かりたくなかった。だってエンポリオはまだ子供だ。神父へ適う力を持っているでもない。
なのに、徐倫はひどいことを言う。
イルカの背から、徐倫が糸を切ってその場へ残る。
「来い! プッチ神父」
叫んだ声が意味もない。きっと死んでしまった皆の死体は時の加速によって腐り果てている。徐倫だって死んでしまったらその身体は腐って骨になって風化して、何も残らない。
何も――。