六部
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「ッ――みんな掴まれ! 絶対に離すな!」
歯を食いしばったトムの怒鳴り声に徐倫達がトムへしがみつく。子供もいるとはいえ五人もしがみつかせたトムが地面を蹴り、飛び降りたかと思うとその姿が建物から離れていくのが張り巡らせた鎖の向こうへ見えた。
そういえばあの子は箒が無くとも魔力で飛ぶ方法を知っている。流石に他人をしがみつかせてだから大変だろうが、少しでも遠くへ距離を取って欲しかった。
縦横無尽な鎖へ動きを制限された神父は、忌々しげに腕を振り払って鎖を引きちぎろうとしている。だが千切れたそこからまた繋がり無尽蔵に増えていく鎖へ、聖職者らしからぬ舌打ちをこぼしていた。
トムが泣きそうだったのをすまないと思う。でももうあの子も大人だったから、アマネの手元なんて離れていってしまっていた。
子供達を守るのが親の権利なのだから許して欲しい。
貯水タンクから漏れていた水が、加速している時間にすぐ蒸発してしまう。そのくせアマネの出血も止まらない。時間が加速しようと生きている物の速さは変わっていなかった。
だからアマネの心臓はまだ動き続けている。
意識を失うか心臓が止まってしまえば鎖は消えてしまうから、アマネは意識を掴んでいた。
『何でも良いが、諦めるのだけはやめてくれ』
諦めるものか。アマネが無理でもまだ承太郎がいる。承太郎が無理でもまだ徐倫とトムがいた。
流れて乾き乾燥して粉状にまでなった血が風に舞っていく。赤い色を見ていたせいか残光効果でありもしない緑色が視界に映り込んだ。
学生時代に着ていた制服とも、承太郎の目の色とも違う。けれどもそのぼんやりとある緑色に、アマネは気が緩んだ。
星の輝きを失わせないよう、涙はずっと堪えていた。だって星がある限りは、誰も孤独になんてなれないように世界は出来ている。
だからアマネも、承太郎のお陰で孤独じゃなかった。
鎖が崩れて消えていくのに、プッチは貯水タンクへ身をめり込ませていた男を振り返った。最後までプッチへ対し悪足掻きをしてきたが、どうやら彼はここまでらしい。
これでまた一つ、因縁を断ち切れた。
歯を食いしばったトムの怒鳴り声に徐倫達がトムへしがみつく。子供もいるとはいえ五人もしがみつかせたトムが地面を蹴り、飛び降りたかと思うとその姿が建物から離れていくのが張り巡らせた鎖の向こうへ見えた。
そういえばあの子は箒が無くとも魔力で飛ぶ方法を知っている。流石に他人をしがみつかせてだから大変だろうが、少しでも遠くへ距離を取って欲しかった。
縦横無尽な鎖へ動きを制限された神父は、忌々しげに腕を振り払って鎖を引きちぎろうとしている。だが千切れたそこからまた繋がり無尽蔵に増えていく鎖へ、聖職者らしからぬ舌打ちをこぼしていた。
トムが泣きそうだったのをすまないと思う。でももうあの子も大人だったから、アマネの手元なんて離れていってしまっていた。
子供達を守るのが親の権利なのだから許して欲しい。
貯水タンクから漏れていた水が、加速している時間にすぐ蒸発してしまう。そのくせアマネの出血も止まらない。時間が加速しようと生きている物の速さは変わっていなかった。
だからアマネの心臓はまだ動き続けている。
意識を失うか心臓が止まってしまえば鎖は消えてしまうから、アマネは意識を掴んでいた。
『何でも良いが、諦めるのだけはやめてくれ』
諦めるものか。アマネが無理でもまだ承太郎がいる。承太郎が無理でもまだ徐倫とトムがいた。
流れて乾き乾燥して粉状にまでなった血が風に舞っていく。赤い色を見ていたせいか残光効果でありもしない緑色が視界に映り込んだ。
学生時代に着ていた制服とも、承太郎の目の色とも違う。けれどもそのぼんやりとある緑色に、アマネは気が緩んだ。
星の輝きを失わせないよう、涙はずっと堪えていた。だって星がある限りは、誰も孤独になんてなれないように世界は出来ている。
だからアマネも、承太郎のお陰で孤独じゃなかった。
鎖が崩れて消えていくのに、プッチは貯水タンクへ身をめり込ませていた男を振り返った。最後までプッチへ対し悪足掻きをしてきたが、どうやら彼はここまでらしい。
これでまた一つ、因縁を断ち切れた。