六部
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「まあいい。お前達には計り知れない事だろうが、最後に一つ言っておく。『時は加速する』」
神父がアマネから視線を逸らし承太郎達へ向き直る。承太郎達が無事でアマネだけが吹き飛んだ理由を、ちゃんと追求しておけばいいものをと思った。
全員を『拒絶』しただけだけれども。
徐倫が張り巡らせた糸を見て思いついた。いくら時が加速しようが襲って来るであろう神父は肉体という質量を持っている。質量を持っているから張り巡らせた糸へ引っかかる可能性があるという事。
糸へ引っかかるという事は物体へ干渉出来るということであり、アマネはその干渉を『拒絶』する事が出来た。
賭けだった部分はある。だから全員に触れておいて、自分一人だけ『拒絶』しなかった。
そうすることで、アマネの肉体へ触れることで神父の速度をほんの少しでも遅くできる可能性もあったし、全員が『拒絶』してしまったら来たかどうかが分からなかったからだ。結果的に承太郎達は神父の攻撃を『拒絶』し、しかしアマネが吹っ飛ばされたことで神父が傍へ来たことを察した。
だから成功と言えば成功か。
「この世の人類が真の幸福に導かれるための力なのだ。名を冠するなら《メイド・イン・ヘブン》! お前達と決着をつけるのは未来の為だ。これからお前達が死ぬのは人類の幸福のための単なる犠牲にすぎないのだ」
「――『犠牲』って、言葉……大ッ嫌いだぜぇ」
指を鳴らす動作はもう音もしない。そもそもまともに指が動いたのかどうか。
幻覚で作り出した鎖が幾重にも神父へ絡み付く。神父だけではなく周辺一帯へもその鎖を張り巡らせて、ただ一つ、承太郎達の“逃げ道”だけを作り上げた。
止まっている物質に接触は出来る。アマネと違って神父は物質を透過しては行動できない。
だからこの張り巡らせた鎖は邪魔で、どんなに速かろうと避けていかなければ、目の前という視覚的には至近距離の承太郎達の元へはたどり着けないだろう。
背中が痛い。下半身の感覚がない。
「い、くら時間が……加速した……って、距離は、無くならねぇ」
アマネの『転移』とは違うのだから、どんなに時間が早くなろうと距離は一瞬で移動出来ない筈だ。今から地球の反対側へ行けと言われても、きっと自力で移動しなければならない神父よりもアマネの方が先にたどり着ける。
だから物理的に『距離』を作り上げたのだ。どんなに速くても到達できないように。星の様に遠い場所へいる『彼ら』まで程の距離は作ってやれないけれど。
「必要だってんなら、犠牲になんて、俺がなる」
鎖が音を立てる。もう指先も震えない。
鎖は幻覚製で、アマネが意識を失ったら消えてしまう。
その前に。
「いきなさい」
笑ってやった。
神父がアマネから視線を逸らし承太郎達へ向き直る。承太郎達が無事でアマネだけが吹き飛んだ理由を、ちゃんと追求しておけばいいものをと思った。
全員を『拒絶』しただけだけれども。
徐倫が張り巡らせた糸を見て思いついた。いくら時が加速しようが襲って来るであろう神父は肉体という質量を持っている。質量を持っているから張り巡らせた糸へ引っかかる可能性があるという事。
糸へ引っかかるという事は物体へ干渉出来るということであり、アマネはその干渉を『拒絶』する事が出来た。
賭けだった部分はある。だから全員に触れておいて、自分一人だけ『拒絶』しなかった。
そうすることで、アマネの肉体へ触れることで神父の速度をほんの少しでも遅くできる可能性もあったし、全員が『拒絶』してしまったら来たかどうかが分からなかったからだ。結果的に承太郎達は神父の攻撃を『拒絶』し、しかしアマネが吹っ飛ばされたことで神父が傍へ来たことを察した。
だから成功と言えば成功か。
「この世の人類が真の幸福に導かれるための力なのだ。名を冠するなら《メイド・イン・ヘブン》! お前達と決着をつけるのは未来の為だ。これからお前達が死ぬのは人類の幸福のための単なる犠牲にすぎないのだ」
「――『犠牲』って、言葉……大ッ嫌いだぜぇ」
指を鳴らす動作はもう音もしない。そもそもまともに指が動いたのかどうか。
幻覚で作り出した鎖が幾重にも神父へ絡み付く。神父だけではなく周辺一帯へもその鎖を張り巡らせて、ただ一つ、承太郎達の“逃げ道”だけを作り上げた。
止まっている物質に接触は出来る。アマネと違って神父は物質を透過しては行動できない。
だからこの張り巡らせた鎖は邪魔で、どんなに速かろうと避けていかなければ、目の前という視覚的には至近距離の承太郎達の元へはたどり着けないだろう。
背中が痛い。下半身の感覚がない。
「い、くら時間が……加速した……って、距離は、無くならねぇ」
アマネの『転移』とは違うのだから、どんなに時間が早くなろうと距離は一瞬で移動出来ない筈だ。今から地球の反対側へ行けと言われても、きっと自力で移動しなければならない神父よりもアマネの方が先にたどり着ける。
だから物理的に『距離』を作り上げたのだ。どんなに速くても到達できないように。星の様に遠い場所へいる『彼ら』まで程の距離は作ってやれないけれど。
「必要だってんなら、犠牲になんて、俺がなる」
鎖が音を立てる。もう指先も震えない。
鎖は幻覚製で、アマネが意識を失ったら消えてしまう。
その前に。
「いきなさい」
笑ってやった。