六部
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承太郎視点
時を止めた。神父はエルメェスの撃った銃弾は目視できても、止めた時間の中で承太郎が投げたナギニの動きには気付かない筈だった。
だが時が動き出す数秒前、神父の目が動いた気がしたのである。
神父の身体が銃弾をはじき返す衝撃で歪んだフレームから外れ、しかしナギニがぶつかった慣性が働いて回転しながら飛んでいく。ナギニはスタープラチナの力で投げたのだ。そう簡単に避けることも外す事もないはずだった。
それが外れた。
神父は慣性の法則に従って吹き飛ばされながらも、展示用シャトルへとしがみついて扉を開け、その中へと乗り込んでいく。展示用シャトルとはいえ殆ど本物同然の作りとなっていて、内部へ入ることも可能だ。
そして神父が『中』へ入れば、神父ごと宙へ浮かび上がる。
ナギニの当たった耳から出血しながら、神父がこちらを見下ろしていた。
「ナギニをかわしたのか!? だが、どうやって……」
「あいつ……ただ逃げようとしているだけじゃあない。まさかあいつ、ヤツに与えてはならない何かを知ったんじゃあ……!? アイツの能力を完成させる条件を……」
トムに支えられた徐倫が呟く。追いかけようにも浮いて離れていくシャトルへ追いつくのは難しい。
重力は未だに地面へ垂直ではなく、承太郎でもこのまま走って追いかける事は無理だろう。シャトルは巨大すぎて壊せない。
せめて何か投げ飛ばしでも出来やしないかと考えた承太郎達の頭上を、風を切る音が響き渡った。頭上を何かが過ぎ去りシャトルへと絡み付いていく。
幾重にも伸びるそれはそう細くもない銀色の鎖で、それらがシャトルの推進を阻止しようとしていた。
鎖が伸びる始点はたった一ヶ所。預かっていたウォレットチェーンが揺れる。
「――アマネッ!」
建物の上。血塗れの白衣を着たアマネがズタボロの姿で立っていた。前へ突き出した両手にはシャトルへ向かって伸びる鎖の先端が雁字搦めに握られていて、アマネの背後にはかつて見せてもらったことのある『ペルソナ』の姿。
たった一人でシャトルを引き留めようというのか。アマネは承太郎の声にも気付いていない様子で、真剣に鎖を掴んでズルズルと進むシャトルを睨んでいるようだった。
僅かに推進の遅くなったシャトルの外壁に、徐倫の仲間らしい男がしがみついている。神父まではあと少しだ。
だが間に合わない。神父が激しい光に包まれる。その光がどんどんと広がっていったかと思うと辺り一面がその光へ覆われた。
近くにいた徐倫の姿もトムの姿も、アマネ達の姿も見えなくなる。
次に目を開けた時には、目の前にアマネが倒れていた。
時を止めた。神父はエルメェスの撃った銃弾は目視できても、止めた時間の中で承太郎が投げたナギニの動きには気付かない筈だった。
だが時が動き出す数秒前、神父の目が動いた気がしたのである。
神父の身体が銃弾をはじき返す衝撃で歪んだフレームから外れ、しかしナギニがぶつかった慣性が働いて回転しながら飛んでいく。ナギニはスタープラチナの力で投げたのだ。そう簡単に避けることも外す事もないはずだった。
それが外れた。
神父は慣性の法則に従って吹き飛ばされながらも、展示用シャトルへとしがみついて扉を開け、その中へと乗り込んでいく。展示用シャトルとはいえ殆ど本物同然の作りとなっていて、内部へ入ることも可能だ。
そして神父が『中』へ入れば、神父ごと宙へ浮かび上がる。
ナギニの当たった耳から出血しながら、神父がこちらを見下ろしていた。
「ナギニをかわしたのか!? だが、どうやって……」
「あいつ……ただ逃げようとしているだけじゃあない。まさかあいつ、ヤツに与えてはならない何かを知ったんじゃあ……!? アイツの能力を完成させる条件を……」
トムに支えられた徐倫が呟く。追いかけようにも浮いて離れていくシャトルへ追いつくのは難しい。
重力は未だに地面へ垂直ではなく、承太郎でもこのまま走って追いかける事は無理だろう。シャトルは巨大すぎて壊せない。
せめて何か投げ飛ばしでも出来やしないかと考えた承太郎達の頭上を、風を切る音が響き渡った。頭上を何かが過ぎ去りシャトルへと絡み付いていく。
幾重にも伸びるそれはそう細くもない銀色の鎖で、それらがシャトルの推進を阻止しようとしていた。
鎖が伸びる始点はたった一ヶ所。預かっていたウォレットチェーンが揺れる。
「――アマネッ!」
建物の上。血塗れの白衣を着たアマネがズタボロの姿で立っていた。前へ突き出した両手にはシャトルへ向かって伸びる鎖の先端が雁字搦めに握られていて、アマネの背後にはかつて見せてもらったことのある『ペルソナ』の姿。
たった一人でシャトルを引き留めようというのか。アマネは承太郎の声にも気付いていない様子で、真剣に鎖を掴んでズルズルと進むシャトルを睨んでいるようだった。
僅かに推進の遅くなったシャトルの外壁に、徐倫の仲間らしい男がしがみついている。神父まではあと少しだ。
だが間に合わない。神父が激しい光に包まれる。その光がどんどんと広がっていったかと思うと辺り一面がその光へ覆われた。
近くにいた徐倫の姿もトムの姿も、アマネ達の姿も見えなくなる。
次に目を開けた時には、目の前にアマネが倒れていた。