六部
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アナスイによってカエルと同じ本能でしか動けなくなったスタンド『ヨーヨーマッ』が、ボートの上でよたよたと蠢く。自分が持っていたカエルを埋め込まれるなんて誰であっても予想外だっただろう。
これで今この状況におけるある程度の危険は排除されたと考えて、アマネは座り込んだ。ヨーヨーマッによる攻撃で全身に大小様々な穴が開いてしまっている。それを治さなければならないしアナスイの怪我もだ。
だがそろそろ本気で少し休みたかった。ボートを『霧の炎』で隠し続けているのもこのままでは危うい。
「アマネ?」
「……悪ぃ。ちょっと疲れちゃってぇ」
身体がなかなか回復しないのは、承太郎の記憶をダウンロードするなんて荒技を行なったからか。今までにしたことのない事をすると、身体がついてこれなくなるのはいつものことである。
何度も行なって慣れればまた違うのだろうが、こればかりは仕方ない。
徐倫が傍に来てストールを肩へかけ直してくれた。腕にあったミミズ腫れは既に消えてしまっている。
それを見たところで、気付いて顔を上げた。徐倫は両手を使ってストールを直している。
「徐倫? 『実』はどうしたぁ?」
「『実』? 実ならさっきあそこに――」
徐倫が指差した先に『実』はない。いや、『実』の残骸は残っていた。
外側を覆っていた丸い殻の部分が残っている。だがそれは割れてしまっており、中にあったはずの『人間の胎児』の様な部分がなくなっていた。
アナスイも気付いて殻の残骸を見やる。殻の残骸の一部が推進機の傍へ落ちていた。
落ちていたというのは正しくない。何かの上へ乗ったままであるせいで、動いている。その殻を乗せた『何か』の想像は、三人とも同じだった。
殻の下から船縁へしがみつく小さな手。
「『手』なのか!? こいつは、なんなんだ? 産まれたってことなのか? 『緑色』の……『人間』なのか!? コイツは!?」
本来なら緑色の赤ん坊など存在しないし、植物に実る赤ん坊も有り得ない。
赤ん坊の手が船縁から離れるのにアナスイが手を伸ばす。だがその手は赤ん坊のそれを掴むことは出来ず、赤ん坊を中心に水面が波立った。
広がっていくその波へ巻き込まれたのだろう魚が、何故か絶命して浮いていく。湿地の草が強風でも吹いたかのようになぎ倒され、離れた場所の樹に留まっていた鳥が逃げていった。ギャアギャアと鳴き声が響く。
正直アマネも逃げたいと思った。この感覚に似たものを知っている。
『到底倒しえないのでは』と思う存在へ出会った時に感じるものだ。
徐倫とアナスイはそこまで感じなかったのか、落ちた赤ん坊を捜している。アマネだけは動けないまま二人へ悟られないように呼吸を落ち着かせた。
これで今この状況におけるある程度の危険は排除されたと考えて、アマネは座り込んだ。ヨーヨーマッによる攻撃で全身に大小様々な穴が開いてしまっている。それを治さなければならないしアナスイの怪我もだ。
だがそろそろ本気で少し休みたかった。ボートを『霧の炎』で隠し続けているのもこのままでは危うい。
「アマネ?」
「……悪ぃ。ちょっと疲れちゃってぇ」
身体がなかなか回復しないのは、承太郎の記憶をダウンロードするなんて荒技を行なったからか。今までにしたことのない事をすると、身体がついてこれなくなるのはいつものことである。
何度も行なって慣れればまた違うのだろうが、こればかりは仕方ない。
徐倫が傍に来てストールを肩へかけ直してくれた。腕にあったミミズ腫れは既に消えてしまっている。
それを見たところで、気付いて顔を上げた。徐倫は両手を使ってストールを直している。
「徐倫? 『実』はどうしたぁ?」
「『実』? 実ならさっきあそこに――」
徐倫が指差した先に『実』はない。いや、『実』の残骸は残っていた。
外側を覆っていた丸い殻の部分が残っている。だがそれは割れてしまっており、中にあったはずの『人間の胎児』の様な部分がなくなっていた。
アナスイも気付いて殻の残骸を見やる。殻の残骸の一部が推進機の傍へ落ちていた。
落ちていたというのは正しくない。何かの上へ乗ったままであるせいで、動いている。その殻を乗せた『何か』の想像は、三人とも同じだった。
殻の下から船縁へしがみつく小さな手。
「『手』なのか!? こいつは、なんなんだ? 産まれたってことなのか? 『緑色』の……『人間』なのか!? コイツは!?」
本来なら緑色の赤ん坊など存在しないし、植物に実る赤ん坊も有り得ない。
赤ん坊の手が船縁から離れるのにアナスイが手を伸ばす。だがその手は赤ん坊のそれを掴むことは出来ず、赤ん坊を中心に水面が波立った。
広がっていくその波へ巻き込まれたのだろう魚が、何故か絶命して浮いていく。湿地の草が強風でも吹いたかのようになぎ倒され、離れた場所の樹に留まっていた鳥が逃げていった。ギャアギャアと鳴き声が響く。
正直アマネも逃げたいと思った。この感覚に似たものを知っている。
『到底倒しえないのでは』と思う存在へ出会った時に感じるものだ。
徐倫とアナスイはそこまで感じなかったのか、落ちた赤ん坊を捜している。アマネだけは動けないまま二人へ悟られないように呼吸を落ち着かせた。