六部
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盗んだ風圧推進型の湿地帯専用ボートへ乗り込んで、東へと逃げている途中で同じく湿地を進むボードの音がする。見れば何艇ものボートへ乗り込んだ看守が湿地を見回っているようだった。
草葉の陰へボートを停め、その巡回しているボートを観察する。懲罰房棟側のボートが無くなったのに気付いて探しにきたというところだろう。警戒の具合から懲罰房棟で何か異常事態が発生したのとボートが無くなっている事が同時に起こった為、ボートを盗んだ者を探しているだけというところか。
少なくとも巡回しているボートの看守は、懲罰房棟の事態を把握はしていないだろう。把握していたのならもっと動揺して不安がっているはずだ。
巡回している看守のボートには、アマネ達の乗っている船にはない重機関銃が搭載されている。人間が撃たれればひとたまりもないし、この船も無事では済まないだろう。
二艇のボートが方向を変えてこちらへ向かってくる。
「来るわッ、エンジンをかけて逃げたほうがいいッ!」
「徐倫、アナスイ君。こっちにおいでぇ」
エンジンをかけて逃げようと慌てる二人を引き寄せ、指を鳴らしながら抱きしめた。アマネにはボンヤリとしか見えないスタンドもこの船へは乗っていたはずだが、スタンドは一般人には見えないのでソイツは無視する。
「ちょっ、アマネッ」
「黙ってなさい。大丈夫だから」
二人を無理矢理抱きしめてボートの船底へ身を低くした。看守の巡回ボートが傍へ来る。腕の中で徐倫がきつく眼を閉じていて反対の腕で抱えていたアナスイがそれに見惚れていた。
ボートがすぐ傍へ接近する。乗っていた看守の視線がアマネ達へ向けられ、アナスイがぐっと身構えるのが分かった。
「……やっぱりワニだったみたいだ。別にどーってことないな。行こう」
看守の視線がアマネ達から逸らされる。看守達の通信機へ『懲罰房棟へ戻れ』という緊急報告が入るのに、やはり看守達は懲罰房棟で何が起こったのか知らないらしくやっと深刻そうにしていた。今までは単に囚人が逃げた程度に考えていたのだろう。
方向転換した看守のボートの、風圧推進器からの強風による水飛沫がアマネ達の全身にぶつけられた。二人が風邪を引いたら困るなと、二人の分だけ『拒絶』する。
すぐに看守達のボートは遠ざかっていき、充分にそれが遠ざかったと判断してからアマネは二人を解放した。自由になった二人が信じられないとばかりに振り返ってアマネを見たが、アマネはそれに構っていられない程の苦痛に身体を丸めて咳き込む。
血を吐きすぎて貧血状態だ。それに何だかやけに息苦しい。
「……ボートの、姿は、見えなくしてやるから、ゆっくり進めぇ。……ワニの立てる波みてぇになぁ」
草葉の陰へボートを停め、その巡回しているボートを観察する。懲罰房棟側のボートが無くなったのに気付いて探しにきたというところだろう。警戒の具合から懲罰房棟で何か異常事態が発生したのとボートが無くなっている事が同時に起こった為、ボートを盗んだ者を探しているだけというところか。
少なくとも巡回しているボートの看守は、懲罰房棟の事態を把握はしていないだろう。把握していたのならもっと動揺して不安がっているはずだ。
巡回している看守のボートには、アマネ達の乗っている船にはない重機関銃が搭載されている。人間が撃たれればひとたまりもないし、この船も無事では済まないだろう。
二艇のボートが方向を変えてこちらへ向かってくる。
「来るわッ、エンジンをかけて逃げたほうがいいッ!」
「徐倫、アナスイ君。こっちにおいでぇ」
エンジンをかけて逃げようと慌てる二人を引き寄せ、指を鳴らしながら抱きしめた。アマネにはボンヤリとしか見えないスタンドもこの船へは乗っていたはずだが、スタンドは一般人には見えないのでソイツは無視する。
「ちょっ、アマネッ」
「黙ってなさい。大丈夫だから」
二人を無理矢理抱きしめてボートの船底へ身を低くした。看守の巡回ボートが傍へ来る。腕の中で徐倫がきつく眼を閉じていて反対の腕で抱えていたアナスイがそれに見惚れていた。
ボートがすぐ傍へ接近する。乗っていた看守の視線がアマネ達へ向けられ、アナスイがぐっと身構えるのが分かった。
「……やっぱりワニだったみたいだ。別にどーってことないな。行こう」
看守の視線がアマネ達から逸らされる。看守達の通信機へ『懲罰房棟へ戻れ』という緊急報告が入るのに、やはり看守達は懲罰房棟で何が起こったのか知らないらしくやっと深刻そうにしていた。今までは単に囚人が逃げた程度に考えていたのだろう。
方向転換した看守のボートの、風圧推進器からの強風による水飛沫がアマネ達の全身にぶつけられた。二人が風邪を引いたら困るなと、二人の分だけ『拒絶』する。
すぐに看守達のボートは遠ざかっていき、充分にそれが遠ざかったと判断してからアマネは二人を解放した。自由になった二人が信じられないとばかりに振り返ってアマネを見たが、アマネはそれに構っていられない程の苦痛に身体を丸めて咳き込む。
血を吐きすぎて貧血状態だ。それに何だかやけに息苦しい。
「……ボートの、姿は、見えなくしてやるから、ゆっくり進めぇ。……ワニの立てる波みてぇになぁ」