六部
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徐倫の怪我を治している間、疲れが出たのか徐倫がほんの少しの間だけうとうとと船を漕いだ。治療中ならいいかと無理に起こさずにいれば、すぐに目を覚ます。そうしていつの間にか右腕に浮かび上がっていたミミズ腫れを見やった。
「徐倫? そんな怪我してたかぁ?」
「ううん。でも……これは治さないで」
ミミズ腫れは歪ながらも『JOLYNE』と読めなくもない。偶然な怪我にして出来すぎなそれに、アマネは出来るだけそっとそのミミズ腫れを撫でた。
「空条が心配してんのかもなぁ」
「……ねえアマネ。父さんってどんな人なの」
周囲を見張っていたF・Fとアナスイが振り返る。
「今までは一度もそんな質問してこなかっただろぉ。……そうだなぁ。言葉が少なくても気持ちは通じてると勘違いしてた馬鹿?」
「プッ、徐倫のお父さんバカなんだ?」
「でもそれはきっと仕方のねぇことだったんだよ。アイツは昔仲間を殺されてる。だからきっと怖かったんだろうなぁ。次は守れるかどうか分からない。自分に関わったら死んでしまうかも知れない。突き放すことで徐倫達を守ろうとしてたところはあるなぁ」
承太郎は言ったのだ。『あの旅は楽しくもあり辛くもあった』と。
その旅で一緒だった者を、信頼していた仲間を失った事実が彼にどんな影響を与えたのかは想像に難くない。消えた命は決して戻らないのだとアマネも彼も痛い程理解している。
だから次は失わないようにと守ろうとしていた。
守ろうと、していたのだ。
仗助へ会いに行った杜王町で、何度も電話をしようかどうか悩んでいたのを知っている。ヒトデの論文の書き損じに紛れて握り潰した手紙の存在を知っていた。アマネがいくら後押ししてもどれも出せなかったことも。
「失うのは怖ぇことだよ徐倫。守れねぇのも恐ろしいことだぁ。俺もアイツも不器用なモンだから、守られてる側の気持ちなんてあんまり考慮できねぇんだけど、それでもアイツは、君達の見えねぇ場所で必死だった」
治療を終わらせて晴の炎を消す。サポートはともかく承太郎のフォローなんてアマネの役目ではない。ましてや家族間の問題となれば尚更だろう。
アマネは息子のトムを愛していた。承太郎は離婚したとはいえ妻と娘の徐倫を愛している。立場も状況も方法も違うけれど、アマネ達は同じ事をしていたのだ。
「トムに嫌われてたら病んでたなぁ……」
今は承太郎の傍へ居るはずの息子のことを考えて呟く。あの子がいなかったらアマネは今頃、承太郎がいたとしても死んだ『花京院』の存在に依存して狂っていたかも知れない。
「徐倫? そんな怪我してたかぁ?」
「ううん。でも……これは治さないで」
ミミズ腫れは歪ながらも『JOLYNE』と読めなくもない。偶然な怪我にして出来すぎなそれに、アマネは出来るだけそっとそのミミズ腫れを撫でた。
「空条が心配してんのかもなぁ」
「……ねえアマネ。父さんってどんな人なの」
周囲を見張っていたF・Fとアナスイが振り返る。
「今までは一度もそんな質問してこなかっただろぉ。……そうだなぁ。言葉が少なくても気持ちは通じてると勘違いしてた馬鹿?」
「プッ、徐倫のお父さんバカなんだ?」
「でもそれはきっと仕方のねぇことだったんだよ。アイツは昔仲間を殺されてる。だからきっと怖かったんだろうなぁ。次は守れるかどうか分からない。自分に関わったら死んでしまうかも知れない。突き放すことで徐倫達を守ろうとしてたところはあるなぁ」
承太郎は言ったのだ。『あの旅は楽しくもあり辛くもあった』と。
その旅で一緒だった者を、信頼していた仲間を失った事実が彼にどんな影響を与えたのかは想像に難くない。消えた命は決して戻らないのだとアマネも彼も痛い程理解している。
だから次は失わないようにと守ろうとしていた。
守ろうと、していたのだ。
仗助へ会いに行った杜王町で、何度も電話をしようかどうか悩んでいたのを知っている。ヒトデの論文の書き損じに紛れて握り潰した手紙の存在を知っていた。アマネがいくら後押ししてもどれも出せなかったことも。
「失うのは怖ぇことだよ徐倫。守れねぇのも恐ろしいことだぁ。俺もアイツも不器用なモンだから、守られてる側の気持ちなんてあんまり考慮できねぇんだけど、それでもアイツは、君達の見えねぇ場所で必死だった」
治療を終わらせて晴の炎を消す。サポートはともかく承太郎のフォローなんてアマネの役目ではない。ましてや家族間の問題となれば尚更だろう。
アマネは息子のトムを愛していた。承太郎は離婚したとはいえ妻と娘の徐倫を愛している。立場も状況も方法も違うけれど、アマネ達は同じ事をしていたのだ。
「トムに嫌われてたら病んでたなぁ……」
今は承太郎の傍へ居るはずの息子のことを考えて呟く。あの子がいなかったらアマネは今頃、承太郎がいたとしても死んだ『花京院』の存在に依存して狂っていたかも知れない。