六部
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「……くう、じ――グフッ」
空条と言おうとして、せり上がってきた吐き気に口を押さえる。錆びた血の臭いが口の中から鼻へ抜けて、押さえた指の隙間から唾液と混ざり合って粘り気のある赤色がボタボタと垂れた。
「父さん!」
トムの声がして背中をさすられる。口の中へ溜まった血を嚥下するのが嫌で、仕方なく恥を承知でシーツへ吐き出した。喉へへばりつく粘液に咳き込んで全部外へ出してしまう。
少しだけ楽になった顔に今度こそしっかりと顔を上げた。手を伸ばせば届く距離にいる承太郎は“生きている”し意識もある。
「……ど、の、くらい、経ったぁ?」
「数週間だ」
トムが答えてくれた期間は、それでも普通なら長い。しかしこの場合短かったと思えばいいのか。いずれにせよアマネの全身の筋肉が強ばるには充分な時間だったようである。
ひきつる感覚を覚える手足を無理矢理根性で動かして起き上がった。水が飲みたいし口を濯ぎたい。あと出来れば風呂にも入りたかった。
左手を見ればまだ承太郎と手を繋いだままで、トムがそうしたのかウォレットチェーンが巻き付けられている。それを右手だけで慎重に外し、手は繋いだまま承太郎を見た。
「この手を離したらこれからの『記憶』は自分で認識しろぉ。本能的な生命維持はスタープラチナがやってくれる。だが彼はお前でお前も彼でしかねぇ。いいか空条。――覚悟はぁ?」
「出来てるぜ」
手を離す。途端に崩れ落ちそうになる承太郎が何かへ支えられ、アマネはトムへ支えられた。目を眇めて薄ぼんやりと見えるスタープラチナ。
『記憶』はちゃんと補完されている。『スタンド』も大丈夫。なら目下の問題はないだろう。病室の外で財団のスタッフが騒がしくなる。アマネが見上げれば部屋いっぱいに巨大化していたエレボスが顔を覗き込んできた。
たった数週間。されど数週間だ。一時的にとはいえ二人とも仮死状態へ陥った。承太郎はアマネが意識のない間も少しは動けただろうが、それでも体力や筋力は衰えている。何をするにもまずはそれを回復しなければならない。
「――トム。空条。何があったのか教えてくんねぇ?」
平行して承太郎から『記憶』と『スタンド』を奪った敵について調べる。承太郎が動けるようになった時、それが分かっていなければ困るからだ。
病室へスタッフがなだれ込んでくる。威嚇して追い出そうとするエレボスを呼んでなだめて、アマネはスタッフの診察を受ける承太郎を見た。
星がある限りは、誰も孤独にならないように世界は出来ている。
空条と言おうとして、せり上がってきた吐き気に口を押さえる。錆びた血の臭いが口の中から鼻へ抜けて、押さえた指の隙間から唾液と混ざり合って粘り気のある赤色がボタボタと垂れた。
「父さん!」
トムの声がして背中をさすられる。口の中へ溜まった血を嚥下するのが嫌で、仕方なく恥を承知でシーツへ吐き出した。喉へへばりつく粘液に咳き込んで全部外へ出してしまう。
少しだけ楽になった顔に今度こそしっかりと顔を上げた。手を伸ばせば届く距離にいる承太郎は“生きている”し意識もある。
「……ど、の、くらい、経ったぁ?」
「数週間だ」
トムが答えてくれた期間は、それでも普通なら長い。しかしこの場合短かったと思えばいいのか。いずれにせよアマネの全身の筋肉が強ばるには充分な時間だったようである。
ひきつる感覚を覚える手足を無理矢理根性で動かして起き上がった。水が飲みたいし口を濯ぎたい。あと出来れば風呂にも入りたかった。
左手を見ればまだ承太郎と手を繋いだままで、トムがそうしたのかウォレットチェーンが巻き付けられている。それを右手だけで慎重に外し、手は繋いだまま承太郎を見た。
「この手を離したらこれからの『記憶』は自分で認識しろぉ。本能的な生命維持はスタープラチナがやってくれる。だが彼はお前でお前も彼でしかねぇ。いいか空条。――覚悟はぁ?」
「出来てるぜ」
手を離す。途端に崩れ落ちそうになる承太郎が何かへ支えられ、アマネはトムへ支えられた。目を眇めて薄ぼんやりと見えるスタープラチナ。
『記憶』はちゃんと補完されている。『スタンド』も大丈夫。なら目下の問題はないだろう。病室の外で財団のスタッフが騒がしくなる。アマネが見上げれば部屋いっぱいに巨大化していたエレボスが顔を覗き込んできた。
たった数週間。されど数週間だ。一時的にとはいえ二人とも仮死状態へ陥った。承太郎はアマネが意識のない間も少しは動けただろうが、それでも体力や筋力は衰えている。何をするにもまずはそれを回復しなければならない。
「――トム。空条。何があったのか教えてくんねぇ?」
平行して承太郎から『記憶』と『スタンド』を奪った敵について調べる。承太郎が動けるようになった時、それが分かっていなければ困るからだ。
病室へスタッフがなだれ込んでくる。威嚇して追い出そうとするエレボスを呼んでなだめて、アマネはスタッフの診察を受ける承太郎を見た。
星がある限りは、誰も孤独にならないように世界は出来ている。