六部
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トム視点
神父はトムによって倒れた看守を助けはしなかった。“約束通り”一分で戻れたのだろう徐倫を逃がしたのはいいが、逆にだからこそあの神父は怪しい。
屋根の上で眺めていただけのトムでもその変な行動は引っかかった。看守が倒れていたなら普通、自分が中庭へ行くことを許した囚人が何かしたと考えてもいいはずだ。
なのに神父は徐倫へ何もしていない。気付くのが遅くなったという事もないのだろう。あの神父は窓から中庭を監視していたのだから。
戻ったら調べるかと頭の隅へ書き留めておき、スピードワゴン財団の施設へと戻る。承太郎とアマネのいる病室へ向かう途中で、財団スタッフがトムを呼び止めてきた。
確かアマネの同僚だった人だと思い出す。トムも小さい頃から知っていた人だ。
「トム。アマネは……」
「すみません。今急いでいるので」
「待ってくれ! アイツはスタンド使いだったのか!?」
二人の命が懸かっていて急いでいるというのに鬱陶しい。
「父さんも僕もスタンド使いなんかじゃない! 何でもかんでもスタンドで解決できると思うな」
「じゃあアイツは――」
「父さんが目を覚ましたら聞けばいい」
「そうじゃない。そうじゃなくてアマネは我々にとって害になるのかって言う……」
「そんなどうでもいい事で僕の時間を奪って二人を殺すのならもっとマシな妨害をしろ!」
アマネが能力の殆どを隠していた理由を痛いほどに理解する。なまじここの職員は『スタンド』という超能力や『吸血鬼』という化け物を知っているから、そういうモノへ対し過剰に反応し頭ごなしに警戒から入るのだ。
警戒から入るのはいい。だがアマネに関してはその対応が間違っている。
異能を持っていると分かった途端手のひらを返すように距離を取るのは、異能を持つ者達にとって辛いものだ。受け入れられない、理解されない能力。スタンド能力だって二十数年前までは同じだっただろうに。
スタンド使い同士が引かれ合うのは、そういうことでもあるのではとトムは考えている。
周囲に理解されない孤独を分かち合う為に。
『カキョウイン』には承太郎達が引かれあった。トムには父親のアマネがいる。
ではアマネには。
父には誰もいなくなってしまって、それでも必死に生きているのに。
病室へ戻れば寝台に承太郎とアマネがいる。エレボスがトムの顔を覗き込んでくるのに腕を伸ばして撫でてやってから、ナギニが腹へ隠していた匣を取り出す。
「――承太郎さん。スタープラチナだ」
匣から出したDISCは、何も知らずにただそこにあった。
神父はトムによって倒れた看守を助けはしなかった。“約束通り”一分で戻れたのだろう徐倫を逃がしたのはいいが、逆にだからこそあの神父は怪しい。
屋根の上で眺めていただけのトムでもその変な行動は引っかかった。看守が倒れていたなら普通、自分が中庭へ行くことを許した囚人が何かしたと考えてもいいはずだ。
なのに神父は徐倫へ何もしていない。気付くのが遅くなったという事もないのだろう。あの神父は窓から中庭を監視していたのだから。
戻ったら調べるかと頭の隅へ書き留めておき、スピードワゴン財団の施設へと戻る。承太郎とアマネのいる病室へ向かう途中で、財団スタッフがトムを呼び止めてきた。
確かアマネの同僚だった人だと思い出す。トムも小さい頃から知っていた人だ。
「トム。アマネは……」
「すみません。今急いでいるので」
「待ってくれ! アイツはスタンド使いだったのか!?」
二人の命が懸かっていて急いでいるというのに鬱陶しい。
「父さんも僕もスタンド使いなんかじゃない! 何でもかんでもスタンドで解決できると思うな」
「じゃあアイツは――」
「父さんが目を覚ましたら聞けばいい」
「そうじゃない。そうじゃなくてアマネは我々にとって害になるのかって言う……」
「そんなどうでもいい事で僕の時間を奪って二人を殺すのならもっとマシな妨害をしろ!」
アマネが能力の殆どを隠していた理由を痛いほどに理解する。なまじここの職員は『スタンド』という超能力や『吸血鬼』という化け物を知っているから、そういうモノへ対し過剰に反応し頭ごなしに警戒から入るのだ。
警戒から入るのはいい。だがアマネに関してはその対応が間違っている。
異能を持っていると分かった途端手のひらを返すように距離を取るのは、異能を持つ者達にとって辛いものだ。受け入れられない、理解されない能力。スタンド能力だって二十数年前までは同じだっただろうに。
スタンド使い同士が引かれ合うのは、そういうことでもあるのではとトムは考えている。
周囲に理解されない孤独を分かち合う為に。
『カキョウイン』には承太郎達が引かれあった。トムには父親のアマネがいる。
ではアマネには。
父には誰もいなくなってしまって、それでも必死に生きているのに。
病室へ戻れば寝台に承太郎とアマネがいる。エレボスがトムの顔を覗き込んでくるのに腕を伸ばして撫でてやってから、ナギニが腹へ隠していた匣を取り出す。
「――承太郎さん。スタープラチナだ」
匣から出したDISCは、何も知らずにただそこにあった。