六部
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トム視点
中庭へ着いたのは待ち合わせの時間よりたった数分前だった。何故か一人看守が手持ちぶさたに立っていて、建物の屋根の上へ着地したトムはその看守を眺めて首を傾げる。
この時間、中庭を警備する看守はいないはずだ。
「……つまり、情報が漏れてるってことだよな」
看守をよく観察すれば何もないはずなのに銃を手に持っていつでも撃てるようにしていた。徐倫からDISCを受け取りに何者かが来るということは分かっているが、それが何者であるのかは分からない。更に言えばあの看守自体はスタンド使いでは無いということだろう。
となればトムはあの看守からDISCと姿を見られるだろう徐倫を助けなければならない。正直面倒臭いが父の為だと諦めた。
今のトムにはナギニが傍にいない。だから魔法の杖代わりもチャクラムも手元へは無く、実質武器がないということになる。杖が無くとも単純な魔法は使えるが、精密な操作は出来ない。
ではどうするか。簡単だ。
通路から徐倫が飛び出してくる。中庭を見回して立ち尽くしている看守に気付き、その看守が徐倫へ気付いて振り返った。徐倫がその看守の持つ銃に気付くのと同時に、トムは屋根の上を走って勢いを付けその看守の上へと飛び降りる。
「うげっぇ!?」
「やあ徐倫。この刑務所は随分と安っぽいカーペットを敷いてるね」
「トム!」
中庭の中心部付近、時計台のモニュメント近くまでよく飛べたものだ。人間一人分の重さと勢いを受けて潰れた看守の上で立ち上がって、靴先で看守の意識を蹴り飛ばした。
銃を見て咄嗟に逃げようとしていた徐倫が、トムの姿に安堵した様子を見せ飛びついてくる。それを抱き留めて背中へ手を回した。ここへ来るまでに何があったのか徐倫の顔には傷も付いている。
「悪いね。怪我は治してやれないんだ。DISCはどこ?」
「いいわ。DISCはここよ」
離れた徐倫の服の下からナギニが顔を覗かせた。匣を飲み込んでいるせいで歪な胴体となってしまっているのが可哀想だが、後少し我慢して欲しい。
「これで父さんは大丈夫よね……?」
「ああ。少なくとも自立は出来るはずだ。さぁ、看守に見つかる前に戻れ」
「ええ。一分だけだから」
「一分?」
「ここへ居るのに神父へバレて、一分だけって約束で出してもらってるの」
「……そうか。寛大な神父だね。ちゃんとお礼を言って気を付けて戻れよ」
ナギニとトムへ手を振りながら徐倫が戻っていく。徐倫が戻った通路の窓から黒人の神父がこちらを見ていた。その視線は囚人でも看守でもないトムの存在へ驚いているという風ではない。
トムがその姿を見返せば窓から離れる。こちらを見ていないタイミングでその窓の死角である時計のモニュメントの陰へと移動し、トムは《姿現し》をした。
少しして神父が外へ出てくる。倒れている看守を気にせずにトムがいた辺りで何かを探す様に辺りを見回し、それから看守を無視して去っていった。
「……“寛大”な、神父だ」
中庭へ着いたのは待ち合わせの時間よりたった数分前だった。何故か一人看守が手持ちぶさたに立っていて、建物の屋根の上へ着地したトムはその看守を眺めて首を傾げる。
この時間、中庭を警備する看守はいないはずだ。
「……つまり、情報が漏れてるってことだよな」
看守をよく観察すれば何もないはずなのに銃を手に持っていつでも撃てるようにしていた。徐倫からDISCを受け取りに何者かが来るということは分かっているが、それが何者であるのかは分からない。更に言えばあの看守自体はスタンド使いでは無いということだろう。
となればトムはあの看守からDISCと姿を見られるだろう徐倫を助けなければならない。正直面倒臭いが父の為だと諦めた。
今のトムにはナギニが傍にいない。だから魔法の杖代わりもチャクラムも手元へは無く、実質武器がないということになる。杖が無くとも単純な魔法は使えるが、精密な操作は出来ない。
ではどうするか。簡単だ。
通路から徐倫が飛び出してくる。中庭を見回して立ち尽くしている看守に気付き、その看守が徐倫へ気付いて振り返った。徐倫がその看守の持つ銃に気付くのと同時に、トムは屋根の上を走って勢いを付けその看守の上へと飛び降りる。
「うげっぇ!?」
「やあ徐倫。この刑務所は随分と安っぽいカーペットを敷いてるね」
「トム!」
中庭の中心部付近、時計台のモニュメント近くまでよく飛べたものだ。人間一人分の重さと勢いを受けて潰れた看守の上で立ち上がって、靴先で看守の意識を蹴り飛ばした。
銃を見て咄嗟に逃げようとしていた徐倫が、トムの姿に安堵した様子を見せ飛びついてくる。それを抱き留めて背中へ手を回した。ここへ来るまでに何があったのか徐倫の顔には傷も付いている。
「悪いね。怪我は治してやれないんだ。DISCはどこ?」
「いいわ。DISCはここよ」
離れた徐倫の服の下からナギニが顔を覗かせた。匣を飲み込んでいるせいで歪な胴体となってしまっているのが可哀想だが、後少し我慢して欲しい。
「これで父さんは大丈夫よね……?」
「ああ。少なくとも自立は出来るはずだ。さぁ、看守に見つかる前に戻れ」
「ええ。一分だけだから」
「一分?」
「ここへ居るのに神父へバレて、一分だけって約束で出してもらってるの」
「……そうか。寛大な神父だね。ちゃんとお礼を言って気を付けて戻れよ」
ナギニとトムへ手を振りながら徐倫が戻っていく。徐倫が戻った通路の窓から黒人の神父がこちらを見ていた。その視線は囚人でも看守でもないトムの存在へ驚いているという風ではない。
トムがその姿を見返せば窓から離れる。こちらを見ていないタイミングでその窓の死角である時計のモニュメントの陰へと移動し、トムは《姿現し》をした。
少しして神父が外へ出てくる。倒れている看守を気にせずにトムがいた辺りで何かを探す様に辺りを見回し、それから看守を無視して去っていった。
「……“寛大”な、神父だ」