六部
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トム視点
だから徐倫にはやってもらうことがある。
「徐倫。君は承太郎さんの娘としてまた狙われる可能性がある。僕が奪われた物を取り返すまででいい。自分の身は自分で守っていてくれ」
トムとしては最大限の譲歩だった。徐倫を今すぐこの刑務所から出してやることは出来ない。法律の問題とかそう言うことではなく、刑務所から徐倫を出したとしても匿う場所がないのだ。
アマネが動ける状態であったなら助け出していた。承太郎が動ける状態であったならトムも協力していただろう。けれどもあの二人が同時に動けなくなっている以上、トムだけではどうすることも出来ないのである。
「嫌よ」
だから、そう言われた時は『掛かった』と思った。
「徐倫ッ」
「だってアイツはアタシの父さんよッ! アイツはアタシを庇ったせいで死んだ! ならアタシがその奪われた物を取り返すのが筋じゃないッ」
「いや、承太郎さん死んでないから」
「え、あ、そうだったわね……」
「まぁ、父親の為に動きたい気持ちは分かるよ。承太郎さん、君と君のお母さんのこと大切にしてたしね」
「……は?」
「でも徐倫。僕は君が無駄に動くのは賛成出来ない。父さんの事は教えたし、言いたいことも言ったから僕は一度帰る。くれぐれも危ない真似はするなよ」
「ちょっ、トム!」
椅子から立ち上がって面会室を出ようとしたトムを徐倫が呼び止める。
久しぶりに会った幼なじみは、何者かの陰謀によってこの刑務所へ入れられた。それを可哀想だと思いこそすれ今のトムは慰める余裕もない。
父が動けないなら父の代わりにトムが動く。父を助けることがトムの生まれてきた理由だ。
そして徐倫も目的は同じ。
「父さんが承太郎さんを守るのは別に君の為だけじゃない。でも承太郎さんが君達を守っていたのは君達の為だけだ。もう一度言う。『無駄に動くな』」
「……じゃあ、無駄じゃない動きをすればいいのね」
ならば本人の意思で手伝わせればいい。想定通りの行動をする徐倫に、トムは手帳を取り出して紙を破りそこへ電話番号を書いた。
それから一つ、匣を取り出して一緒に差し出す。
「僕の番号。それとこれは『お守り』だ。父さんの物だからお守りとしては充分だろ」
「アマネの……? 何よコレ」
「中身は空だ。勝手に持ち出してきた」
空の匣を渡されて徐倫が理解出来ないといった顔をする。実際、それの中身は空なのだから仕方がない。
今度こそ面会室を出て、トムは刑務所の出口へと向かう。看守や監視カメラの眼が無くなったところで、ナギニを地面へと落とした。
だから徐倫にはやってもらうことがある。
「徐倫。君は承太郎さんの娘としてまた狙われる可能性がある。僕が奪われた物を取り返すまででいい。自分の身は自分で守っていてくれ」
トムとしては最大限の譲歩だった。徐倫を今すぐこの刑務所から出してやることは出来ない。法律の問題とかそう言うことではなく、刑務所から徐倫を出したとしても匿う場所がないのだ。
アマネが動ける状態であったなら助け出していた。承太郎が動ける状態であったならトムも協力していただろう。けれどもあの二人が同時に動けなくなっている以上、トムだけではどうすることも出来ないのである。
「嫌よ」
だから、そう言われた時は『掛かった』と思った。
「徐倫ッ」
「だってアイツはアタシの父さんよッ! アイツはアタシを庇ったせいで死んだ! ならアタシがその奪われた物を取り返すのが筋じゃないッ」
「いや、承太郎さん死んでないから」
「え、あ、そうだったわね……」
「まぁ、父親の為に動きたい気持ちは分かるよ。承太郎さん、君と君のお母さんのこと大切にしてたしね」
「……は?」
「でも徐倫。僕は君が無駄に動くのは賛成出来ない。父さんの事は教えたし、言いたいことも言ったから僕は一度帰る。くれぐれも危ない真似はするなよ」
「ちょっ、トム!」
椅子から立ち上がって面会室を出ようとしたトムを徐倫が呼び止める。
久しぶりに会った幼なじみは、何者かの陰謀によってこの刑務所へ入れられた。それを可哀想だと思いこそすれ今のトムは慰める余裕もない。
父が動けないなら父の代わりにトムが動く。父を助けることがトムの生まれてきた理由だ。
そして徐倫も目的は同じ。
「父さんが承太郎さんを守るのは別に君の為だけじゃない。でも承太郎さんが君達を守っていたのは君達の為だけだ。もう一度言う。『無駄に動くな』」
「……じゃあ、無駄じゃない動きをすればいいのね」
ならば本人の意思で手伝わせればいい。想定通りの行動をする徐倫に、トムは手帳を取り出して紙を破りそこへ電話番号を書いた。
それから一つ、匣を取り出して一緒に差し出す。
「僕の番号。それとこれは『お守り』だ。父さんの物だからお守りとしては充分だろ」
「アマネの……? 何よコレ」
「中身は空だ。勝手に持ち出してきた」
空の匣を渡されて徐倫が理解出来ないといった顔をする。実際、それの中身は空なのだから仕方がない。
今度こそ面会室を出て、トムは刑務所の出口へと向かう。看守や監視カメラの眼が無くなったところで、ナギニを地面へと落とした。