六部
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承太郎視点
徐倫が捕まり刑務所へ入れられたのは、二十年以上昔に承太郎が倒した『DIO』の崇拝者による陰謀だと考えていた。だが『真の黒幕』は他にいて、その者の目的は分からないものの承太郎は『記憶』と『スタンド』を奪われたのである。
問題はその後の事だ。
「どうして私は生きている? 徐倫はどうした」
「……僕も全部は把握してない。でも父さんが貴方を『生かしてる』のは分かる」
承太郎が寝かされている寝台を回り込んだトムが、承太郎と手を繋いだまま血だらけで倒れているアマネへと歩み寄る。握られている手を離させないように慎重にアマネを抱え、出来るだけ楽そうな姿勢へ変えてやっていた。
ガラス張りの廊下側の壁の向こうでは、スピードーワゴン財団の職員達が驚き慌てて走り回っている。それを部屋の中を窮屈そうに立っている《エレボス》が眺めていた。
アマネの腰元からウォレットチェーンを外したトムが、そのチェーンで繋がれている承太郎とアマネの手を雁字搦めにする。
「……よし。当分面倒だろうけど外さないでね承太郎さん」
「なんだこれは」
「外したら死ぬよ」
トムは言い切った。
「外したら、正確には父さんの手が離れたら死ぬ。んだと思う。僕だってよくは分からない。先に承太郎さんが体験したことを教えて欲しい」
「……刑務所へ娘を助けに行った。そこでスタンド使いへ襲われ、おそらく『記憶』と『スタンド』をDISC状にして奪われた」
「記憶とスタンド? じゃあスタープラチナは出せないの?」
試しにスタープラチナを出してみようとしてみるが、あの気配は全く感じられない。
「……出せないな」
「でも記憶が奪われたって割には、僕や父さんのことは覚えてるね」
「そこが分からん。覚えてるのは徐倫へペンダントを渡すまでとここで目覚める……いや、覚えのない記憶がある」
「覚えのない記憶?」
「この黒いヤツの名前や、花京院のことだ」
トムが訝しげな顔をして部屋に詰まっている黒い化け物を見上げた。白い歯を鳴らしてトムへ顔を近付ける黒い化け物は、相変わらず承太郎が起き上がろうとすると身体を押さえつけてくる。
財団の職員が意を決した様子で部屋へ入ってこようとすると、その黒いのが一気に殺気立って唸りだした。そして後ろ脚なのか前脚なのか分からない手でその職員を外へ押し出す。
「記憶がない筈なのにあって? エレボスのことを知ってて……?」
「多分だが、花京院の記憶はアマネのものだろう。私はアイツと学校で話した記憶は一度しか無い」
「……!? まさかッ! でも……嘘でしょ?」
信じられないものでも見るかのようにトムが自身の養父を見下ろした。
「父さんなら出来ないことは無いだろうけど……無謀過ぎる」
「無謀?」
トムの父親へ似ない紅い瞳が承太郎を写す。
「なんて言えばいいのかな……。父さんは、なくなった貴方の記憶をダウンロードして貴方へ送り込んでる、んだと思う」
徐倫が捕まり刑務所へ入れられたのは、二十年以上昔に承太郎が倒した『DIO』の崇拝者による陰謀だと考えていた。だが『真の黒幕』は他にいて、その者の目的は分からないものの承太郎は『記憶』と『スタンド』を奪われたのである。
問題はその後の事だ。
「どうして私は生きている? 徐倫はどうした」
「……僕も全部は把握してない。でも父さんが貴方を『生かしてる』のは分かる」
承太郎が寝かされている寝台を回り込んだトムが、承太郎と手を繋いだまま血だらけで倒れているアマネへと歩み寄る。握られている手を離させないように慎重にアマネを抱え、出来るだけ楽そうな姿勢へ変えてやっていた。
ガラス張りの廊下側の壁の向こうでは、スピードーワゴン財団の職員達が驚き慌てて走り回っている。それを部屋の中を窮屈そうに立っている《エレボス》が眺めていた。
アマネの腰元からウォレットチェーンを外したトムが、そのチェーンで繋がれている承太郎とアマネの手を雁字搦めにする。
「……よし。当分面倒だろうけど外さないでね承太郎さん」
「なんだこれは」
「外したら死ぬよ」
トムは言い切った。
「外したら、正確には父さんの手が離れたら死ぬ。んだと思う。僕だってよくは分からない。先に承太郎さんが体験したことを教えて欲しい」
「……刑務所へ娘を助けに行った。そこでスタンド使いへ襲われ、おそらく『記憶』と『スタンド』をDISC状にして奪われた」
「記憶とスタンド? じゃあスタープラチナは出せないの?」
試しにスタープラチナを出してみようとしてみるが、あの気配は全く感じられない。
「……出せないな」
「でも記憶が奪われたって割には、僕や父さんのことは覚えてるね」
「そこが分からん。覚えてるのは徐倫へペンダントを渡すまでとここで目覚める……いや、覚えのない記憶がある」
「覚えのない記憶?」
「この黒いヤツの名前や、花京院のことだ」
トムが訝しげな顔をして部屋に詰まっている黒い化け物を見上げた。白い歯を鳴らしてトムへ顔を近付ける黒い化け物は、相変わらず承太郎が起き上がろうとすると身体を押さえつけてくる。
財団の職員が意を決した様子で部屋へ入ってこようとすると、その黒いのが一気に殺気立って唸りだした。そして後ろ脚なのか前脚なのか分からない手でその職員を外へ押し出す。
「記憶がない筈なのにあって? エレボスのことを知ってて……?」
「多分だが、花京院の記憶はアマネのものだろう。私はアイツと学校で話した記憶は一度しか無い」
「……!? まさかッ! でも……嘘でしょ?」
信じられないものでも見るかのようにトムが自身の養父を見下ろした。
「父さんなら出来ないことは無いだろうけど……無謀過ぎる」
「無謀?」
トムの父親へ似ない紅い瞳が承太郎を写す。
「なんて言えばいいのかな……。父さんは、なくなった貴方の記憶をダウンロードして貴方へ送り込んでる、んだと思う」