五部
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「おい、急ごうぜ! コロッセオに戻るんだ!」
ブチャラティが“死んだ”ことを知らないミスタが言って、コロッセオへ向かおうとする。同じく知らないトリッシュも走り出して、トムは何も言えないまま知っているジョルノを窺った。
「……ああ。行こう。今……行くよ」
力ない声でそう答えてジョルノも動き出す。その足下にスタンドの矢が転がるのに、トムはしゃがんでそれを拾い上げた。
スタンド使いを増やす物だ。今は何でもない一般人でも、その中にはとんでもない危険性を持つ能力を生み出せる者がいるかもしれない。今度こそ誰も対抗できないような、それこそ世界の破滅を望むようなだ。
ジョルノを見る。彼の父親は世界を手に入れようとした吸血鬼だった。
トムの『前世』は、魔法界を手に入れようとした悪い魔法使いだった。
けれどもトム達は、その事実に苛まれずに自分の『真実』から行動していいのだろうか。
「トム?」
ジョルノが不思議そうにトムを見ている。
「ねえジョルノ。どんな風が吹いても僕は君と一緒にいてもいい?」
「……? 当たり前だろ。ボク達は友達だ」
彼ならそう言うだろうと分かっていて聞いたトムも馬鹿だ。
トムには結構徘徊癖がある。学校には殆ど行っていないから時間はあり、父と一緒ではなくとも浮き雲みたいに世界どこでも行く。
でもしばらくはここへ、ジョルノの傍へ留まることにした。ジョルノという黄金色の風と一緒にギャング組織の一新を手伝うのも面白そうだ。
それに、風に吹かれなければ『雲』は動けない。だからトムはジョルノと一緒に居ようと決めた。
先に行っていたトリッシュが転んだかと思うと居なくなる。ミスタが慌てて探せば、石柱の影から亀が喋りながら出てきた。
正確には、亀の甲の中心にあるスタンド能力で出来た部屋から出てきたポルナレフが、だ。
「ポルナレフさん!?」
「この亀のスタンドは結構凄いぞ。魂が吸い出された瞬間中にしがみつくことが出来た。この亀の鍵から外には出られないが、幽霊としてしばらく亀の中へ住まわせてもらうことにしたよ」
「あ、父さん達に貴方の事教えなきゃ。何年も前から貴方の事探してるんだ。教えてもいい?」
「こんな姿だが驚かないか?」
むしろ承太郎が驚くところを見たい。ミスタとトリッシュがディアボロを倒したことで安心しきった様子でブチャラティを迎えに行く。
亀を拾い上げているジョルノと亀の甲から上半身だけを出しているポルナレフへ、トムはスタンドの矢を差し出した。
「どうする?」
「……去ってしまった者達から受け継いだものはさらに『先』へ進めなくてはならない。この『矢』は破壊しない」
「……うん。僕もそれがいいと思う」
「『矢』は亀の中へしまえ。それでいい。それが生き残った者の役目だ」
矢は壊さない。けれどもそれを先へ渡す役目と責任は担う。
ローマは、晴れていた。
第五部 完
ブチャラティが“死んだ”ことを知らないミスタが言って、コロッセオへ向かおうとする。同じく知らないトリッシュも走り出して、トムは何も言えないまま知っているジョルノを窺った。
「……ああ。行こう。今……行くよ」
力ない声でそう答えてジョルノも動き出す。その足下にスタンドの矢が転がるのに、トムはしゃがんでそれを拾い上げた。
スタンド使いを増やす物だ。今は何でもない一般人でも、その中にはとんでもない危険性を持つ能力を生み出せる者がいるかもしれない。今度こそ誰も対抗できないような、それこそ世界の破滅を望むようなだ。
ジョルノを見る。彼の父親は世界を手に入れようとした吸血鬼だった。
トムの『前世』は、魔法界を手に入れようとした悪い魔法使いだった。
けれどもトム達は、その事実に苛まれずに自分の『真実』から行動していいのだろうか。
「トム?」
ジョルノが不思議そうにトムを見ている。
「ねえジョルノ。どんな風が吹いても僕は君と一緒にいてもいい?」
「……? 当たり前だろ。ボク達は友達だ」
彼ならそう言うだろうと分かっていて聞いたトムも馬鹿だ。
トムには結構徘徊癖がある。学校には殆ど行っていないから時間はあり、父と一緒ではなくとも浮き雲みたいに世界どこでも行く。
でもしばらくはここへ、ジョルノの傍へ留まることにした。ジョルノという黄金色の風と一緒にギャング組織の一新を手伝うのも面白そうだ。
それに、風に吹かれなければ『雲』は動けない。だからトムはジョルノと一緒に居ようと決めた。
先に行っていたトリッシュが転んだかと思うと居なくなる。ミスタが慌てて探せば、石柱の影から亀が喋りながら出てきた。
正確には、亀の甲の中心にあるスタンド能力で出来た部屋から出てきたポルナレフが、だ。
「ポルナレフさん!?」
「この亀のスタンドは結構凄いぞ。魂が吸い出された瞬間中にしがみつくことが出来た。この亀の鍵から外には出られないが、幽霊としてしばらく亀の中へ住まわせてもらうことにしたよ」
「あ、父さん達に貴方の事教えなきゃ。何年も前から貴方の事探してるんだ。教えてもいい?」
「こんな姿だが驚かないか?」
むしろ承太郎が驚くところを見たい。ミスタとトリッシュがディアボロを倒したことで安心しきった様子でブチャラティを迎えに行く。
亀を拾い上げているジョルノと亀の甲から上半身だけを出しているポルナレフへ、トムはスタンドの矢を差し出した。
「どうする?」
「……去ってしまった者達から受け継いだものはさらに『先』へ進めなくてはならない。この『矢』は破壊しない」
「……うん。僕もそれがいいと思う」
「『矢』は亀の中へしまえ。それでいい。それが生き残った者の役目だ」
矢は壊さない。けれどもそれを先へ渡す役目と責任は担う。
ローマは、晴れていた。
第五部 完