五部
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よく見えないぼやけた視界に、椅子の脚が見える。トムはそこで大声を上げて泣いていて、けれども泣き続けて疲れ果てていた。
どうして泣いていたのか分からないけれど、泣いていたことでもう喉は痛いし声も枯れてしまっている。泣いても無駄だと悟ったのはいつだったのか分からない。
誰かが手を差し伸べてくれやしないかと期待していた。そのくせ何もかもが怖かったのだ。
話し声がする。けれどもそれは近づいてくることはない。
足音が響く。視界が陰って青色が広がる。トムはその色を知らなかった。
トムが知っていたのは、罪深い紅色だけだ。血の色だったり日が沈んで終わる前の夕日の色だったり、嫌な時には必ずその色があった。
命の色。トムには手に入れられなかった色だ。だから邪悪な心を混ぜていた。業に駆り立てられた深い紅色。
けれども暖かい腕がトムを抱き上げて、トムはその色の事を考えなくなる。心の何処かではしっかりと覚えているしきっと忘れられる事もないのだろうけれど、深い深い心の奥底で箱へ入れて閉じこめた。
その箱へ、青い蝶が鍵を掛けたのだ。
『自分のことを理解していなくても、愛を知らなくても、誰かを愛することは出来るんだ』
トムはジョルノを通して、それが『真実』だと知りたかった。
「――カハッ、……!?」
「トム!」
背中に衝撃があって息が詰まり、目が覚める。地面に落ちたらしくトムは石畳へ寝転がっていて、すぐ傍には『トムを守ろうとした』影が倒れていた。
「大丈夫か!」
「うん……平気」
「トムなんだな?」
「? うん」
近くにはジョルノ達と、見覚えのないトリッシュに少し似た桃色の髪の男。味方かどうかは分からなかったが、トムを見る目の色からトムへ敵意はないと判断する。
影が転んだ拍子に手放したスタンドの矢が地面へ転がっていた。ジョルノがそれを拾おうとしてその動きを止め、近くにあった石を矢へ向けて放り投げる。その直後にジョルノの頭上から小石が降ってきたのをトリッシュがつかみ取った。
トリッシュが上手く掴んでなければジョルノへ当たっていただろう。それなりに勢いもあったからぶつかっていれば血は出ていたかも知れない。矢へ向けて放り投げたはずの小石はなくなっていた。
「……駄目だ。近寄らせない。スタンドだけではなく物を触れさせようとしてもそれがぶつかり返ってくるぞ」
どうやらジョルノ達はスタンドの矢を拾いたいらしい。トムが眠っていた間に何が起こっていたのか分からなかった。
ナランチャがいない理由も分からない。
「どうすれば『矢』は、拾えるの……? 目の前にあるのに」
「なあ……『レクイエム』は『スタンド使い』には『矢』を拾わせない。だがもし、『スタンド使いじゃあない者』が『矢』を拾おうとしたらなら、どうなると思う?」
「亀が喋ってる!」
何だが場違いな事を言ってしまった気がする。
どうして泣いていたのか分からないけれど、泣いていたことでもう喉は痛いし声も枯れてしまっている。泣いても無駄だと悟ったのはいつだったのか分からない。
誰かが手を差し伸べてくれやしないかと期待していた。そのくせ何もかもが怖かったのだ。
話し声がする。けれどもそれは近づいてくることはない。
足音が響く。視界が陰って青色が広がる。トムはその色を知らなかった。
トムが知っていたのは、罪深い紅色だけだ。血の色だったり日が沈んで終わる前の夕日の色だったり、嫌な時には必ずその色があった。
命の色。トムには手に入れられなかった色だ。だから邪悪な心を混ぜていた。業に駆り立てられた深い紅色。
けれども暖かい腕がトムを抱き上げて、トムはその色の事を考えなくなる。心の何処かではしっかりと覚えているしきっと忘れられる事もないのだろうけれど、深い深い心の奥底で箱へ入れて閉じこめた。
その箱へ、青い蝶が鍵を掛けたのだ。
『自分のことを理解していなくても、愛を知らなくても、誰かを愛することは出来るんだ』
トムはジョルノを通して、それが『真実』だと知りたかった。
「――カハッ、……!?」
「トム!」
背中に衝撃があって息が詰まり、目が覚める。地面に落ちたらしくトムは石畳へ寝転がっていて、すぐ傍には『トムを守ろうとした』影が倒れていた。
「大丈夫か!」
「うん……平気」
「トムなんだな?」
「? うん」
近くにはジョルノ達と、見覚えのないトリッシュに少し似た桃色の髪の男。味方かどうかは分からなかったが、トムを見る目の色からトムへ敵意はないと判断する。
影が転んだ拍子に手放したスタンドの矢が地面へ転がっていた。ジョルノがそれを拾おうとしてその動きを止め、近くにあった石を矢へ向けて放り投げる。その直後にジョルノの頭上から小石が降ってきたのをトリッシュがつかみ取った。
トリッシュが上手く掴んでなければジョルノへ当たっていただろう。それなりに勢いもあったからぶつかっていれば血は出ていたかも知れない。矢へ向けて放り投げたはずの小石はなくなっていた。
「……駄目だ。近寄らせない。スタンドだけではなく物を触れさせようとしてもそれがぶつかり返ってくるぞ」
どうやらジョルノ達はスタンドの矢を拾いたいらしい。トムが眠っていた間に何が起こっていたのか分からなかった。
ナランチャがいない理由も分からない。
「どうすれば『矢』は、拾えるの……? 目の前にあるのに」
「なあ……『レクイエム』は『スタンド使い』には『矢』を拾わせない。だがもし、『スタンド使いじゃあない者』が『矢』を拾おうとしたらなら、どうなると思う?」
「亀が喋ってる!」
何だが場違いな事を言ってしまった気がする。