五部
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スタンド使いとの戦闘を回避して『男』の姿を誰よりも早く確認するつもりが、自分の持久力不足で予想以上に時間を食ってしまった。
あの父の息子になってからは体力作りを忌避した覚えはなかったが、それでも根本的な体力値が低かったのだろう。だからトムはゲームでいうところの後衛か中距離ポジションなのだ。チャクラムの投擲操作力は自負出来るが、ある程度大きくしたチャクラムは全身で振り回さないと使えない。
「くそ……肉体派魔法使いなんてナンセンスだろ」
やっとのことでコロッセオへ到着するも、何かがおかしい。歩調を緩めて周囲を見回せば、そのおかしい理由はすぐに理解出来た。
皆、眠っているのだ。
人間だけではない。鳥や猫、犬も例外なく地面へと倒れて眠っている。
走っていたのだろう車は運転手が眠って操作が利かなくなったのか至るところで事故を起こしていた。爆発が起きている様子は今のところ無いが、猛スピードを出していた車があったなら大惨事になっているだろう。何となく見上げた空には雲と、どこかの事故現場から立ち上る煙だけだった。鳥なんて飛んでいない。
近くに倒れている女性に近づいて、様子を窺ってみても外傷という外傷は何も見当たらなかった。寝息も安定していて、落ち着いて熟睡している。
だからこそ、おかしいのだけれど。
これが何者かのスタンド能力であるのなら、広範囲すぎるし無差別すぎてもいる。カビを繁殖させるスタンド使いも無差別であるところは変わらなかったが、それとは違う気がした。
そもそも、何故トムだけが起きて活動出来ているのか。
「――ジョルノ? ブチャラティお兄さん?」
ジョルノ達の姿は近くに見当たらない。トムが遅く来てしまったし既にコロッセオの中だろうかと、トムは辺りを観察しながらコロッセオへと足を踏み入れた。
コロッセオへ立ち入る前から、とても静かだ。人間や生き物が眠り込んでいるだけでこんなにも静かになるのかと感動してから、何かに似ていると思った。
「……ああ、心の海だ」
深い深い海の底を思い出す。十二年よりも前はずっとそこを歩き回っていたというのに、今が刺激的だからか忘れてしまっていたらしい。
自分で忘れておいて何だが、よく忘れられたなと思った。
コロッセオの堅牢な石で作られた壁に手を当てる。“青い蝶”が視界を横切っていくのに、トムは急いでそれを追いかけた。
蝶を追いかけた先ではジョルノ達が倒れている。驚いて駆け寄ろうとすると、コロッセオの物陰から黒い影が出てきた。
あの父の息子になってからは体力作りを忌避した覚えはなかったが、それでも根本的な体力値が低かったのだろう。だからトムはゲームでいうところの後衛か中距離ポジションなのだ。チャクラムの投擲操作力は自負出来るが、ある程度大きくしたチャクラムは全身で振り回さないと使えない。
「くそ……肉体派魔法使いなんてナンセンスだろ」
やっとのことでコロッセオへ到着するも、何かがおかしい。歩調を緩めて周囲を見回せば、そのおかしい理由はすぐに理解出来た。
皆、眠っているのだ。
人間だけではない。鳥や猫、犬も例外なく地面へと倒れて眠っている。
走っていたのだろう車は運転手が眠って操作が利かなくなったのか至るところで事故を起こしていた。爆発が起きている様子は今のところ無いが、猛スピードを出していた車があったなら大惨事になっているだろう。何となく見上げた空には雲と、どこかの事故現場から立ち上る煙だけだった。鳥なんて飛んでいない。
近くに倒れている女性に近づいて、様子を窺ってみても外傷という外傷は何も見当たらなかった。寝息も安定していて、落ち着いて熟睡している。
だからこそ、おかしいのだけれど。
これが何者かのスタンド能力であるのなら、広範囲すぎるし無差別すぎてもいる。カビを繁殖させるスタンド使いも無差別であるところは変わらなかったが、それとは違う気がした。
そもそも、何故トムだけが起きて活動出来ているのか。
「――ジョルノ? ブチャラティお兄さん?」
ジョルノ達の姿は近くに見当たらない。トムが遅く来てしまったし既にコロッセオの中だろうかと、トムは辺りを観察しながらコロッセオへと足を踏み入れた。
コロッセオへ立ち入る前から、とても静かだ。人間や生き物が眠り込んでいるだけでこんなにも静かになるのかと感動してから、何かに似ていると思った。
「……ああ、心の海だ」
深い深い海の底を思い出す。十二年よりも前はずっとそこを歩き回っていたというのに、今が刺激的だからか忘れてしまっていたらしい。
自分で忘れておいて何だが、よく忘れられたなと思った。
コロッセオの堅牢な石で作られた壁に手を当てる。“青い蝶”が視界を横切っていくのに、トムは急いでそれを追いかけた。
蝶を追いかけた先ではジョルノ達が倒れている。驚いて駆け寄ろうとすると、コロッセオの物陰から黒い影が出てきた。