何だか変な事で驚かれたところで、ティレニア海を渡りローマ近くの漁村へと到着した。ここから車を盗んでローマまでは高速を走らずとも一時間とも掛からずに着く。
移動の車を手に入れるのにトムは亀の外へ出させてもらえなかった。トムの年齢が十二歳だと判明して少し子供扱いをされている気がする。

「僕だって何か出来るかも知れないのに」
「子供が無茶しちゃダメよ」
「年齢が分かった途端に子供扱いされるのが一番腹立つね。スタンドが使える子供だって居るんだから、見た目で判断しないで」
「でもトムはスタンド使いじゃないだろ？ 君はコーイチ君みたいに矢で貫かれなかったのかい？」

ジョルノが聞いてくるのに肩をすくめた。

「失敗したら死ぬような事を試すつもりはなかったし、父さんも康一さんたちへ止められたんだ。矢で撃たれれば当然痛いからね」

あの矢は普通に射抜かれたら痛いのだ。その辺りは不親切だと思うが、痛くなかったとしてもトムは試さなかっただろう。
ナギニがいるのにスタンドなんていらないし、たった一つの能力しかないスタンドよりはトムはペルソナの方が欲しいと思えた。
それにしても。

「どっちも『隕石の欠片』なんて偶然かな……」

亀の外にいる二人が騒がしくなる。天井を見上げるとミスタの手にいつの間にか“カビ”の様なものがこびり付いていた。話を聞く限りでは近くにいる村民も同じようにカビが全身へこびり付いて身体が崩れているらしい。
ナランチャがボートで沖へ逃げようとすると、一気にその全身へカビが繁殖した。同時にナランチャが持っていた亀の中にいるトム達にも、わずかにカビが生え始める。
トリッシュの脚やジョルノの手へ繁殖したカビに、トムも全身を確認した。念の為ナギニは匣の中へ戻す。これでナギニは絶対に大丈夫だ。

「ミスタ、手を伸ばしてはいけない！ このスタンドにはスイッチを押すように攻撃のきっかけがあるッ！」

ナランチャを助けようとしたミスタがそのジョルノの言葉に、わずかに手を下げる。途端にミスタの下げられた手へカビが生えた。
つまり、このスタンドは低い位置へ向かうとカビが生える能力なのだろう。カビが生えるだけと油断する訳にはいかない。何故なら感染した村民が既にそのカビによってくずくずに崩れて死んでいるのだ。
亀の中も安全とは言い難い。既にジョルノとトリッシュが少しとはいえカビが生えてしまっている。空気で蔓延するのかカビ自体をスタンド使い本体が操っているのかは分からないが、下手に動いてはカビの範囲を広げるだけだ。