五部
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よく考えれば当然な話だ。父だって気体を制御しているし固体は液体になり気体にもなる。それらが同義であるのなら男にとって固体も気体も変わらない。
凍っただけで見えない空気を跳ね返ってきた銃弾がミスタへと直撃する。自身の撃った銃弾に弾かれたミスタを掴んで、トムはミスタを無理矢理岸へと上がらせた。
男も水面を凍らせて堂々と岸へと上がってくる。それから駅前をトム達が入手しようとしていた物を探し始めた。どうやらジョルノ達が任務の一環で、ここで何かを手に入れなければならないことは分かっているらしい。
けれどもその『何か』が何であり、どこへ隠されているのかまでは分からないと言ったところか。
トムはミスタを地面へ放置して、箒もその場へ置いて走った。ゴミ箱をひっくり返していた男がトムを見るのに、駅前の植え込みへ向かいそこへ腕を突っ込んだ。
隠し持っていた匣を、さもそこから拾いましたとばかりに持ち直して更に走る。そうして未だ運河の車の上にいるジョルノへとそれを投げた。
「ジョルノ!」
「――トム!」
「それを持って逃げろ! ミスタは僕が逃がす!」
何かを言い掛けたジョルノがぐっと匣を握りしめる。男がトムへ向かって襲いかかろうとしていた。
「いいかジョルノ! 犠牲というものは常に必要だ! 君はここで犠牲を出さねばならない!」
沈み掛けている車の上からジョルノはトムを見つめている。
犠牲は何においても付き物だ。
父のアマネであったなら『犠牲が必要というのなら自分がなる』と言うだろう。彼にとって犠牲とは元から世界へいらないと認識されてしまったものであり、だが世界にいらない物なんて無いというのがあの父の持論であり信念だ。
故に彼は犠牲が必要な状況へ陥ったとき、いとも容易く自身を差し出す。万物を愛し万象を受け入れる。トムの魂もそうして愛されていた。
トムには真似できない。時には犠牲が必要であることも当たり前だと思うし、犠牲なくして成り立たない世界もそうそう無いだろう。
だからトムは父の、『犠牲が必要な状況へ陥った時自身を差し出す』行為だけは真似をしようと思っている。
けれどもそれは、今じゃない。
「犠牲は『覚悟』とは違うんだ。――僕はもう、『覚悟』したよ」
ジョルノがこちらへ向かって必死に泳いでくる。男がその行動を馬鹿にしたようにスーツの中で口角を上げていた。
凍らせられた氷がトムへと襲いかかる。それへ振り向くと同時にトムは隠していたナギニをチャクラムへ変化させて薙ぎ払った。
遠心力をも利用して振り払ったそれを飛ばす。見当違いな方角へ飛んでいったそれに男が僅かに視線で追いかけるが、すぐに勝ち誇ったようにトムへと向き直った。
その男を見つめたままトムは右腕を掲げる。ジョルノが岸へ到達した。
見当違いな方向へ飛んでいったチャクラムが戻ってくる。ジョルノが凍らされていたらしい腕を叩きつけて血を噴出させた。
戻ってきたチャクラムがトムの掲げた腕を切断する。
痛い。
凍っただけで見えない空気を跳ね返ってきた銃弾がミスタへと直撃する。自身の撃った銃弾に弾かれたミスタを掴んで、トムはミスタを無理矢理岸へと上がらせた。
男も水面を凍らせて堂々と岸へと上がってくる。それから駅前をトム達が入手しようとしていた物を探し始めた。どうやらジョルノ達が任務の一環で、ここで何かを手に入れなければならないことは分かっているらしい。
けれどもその『何か』が何であり、どこへ隠されているのかまでは分からないと言ったところか。
トムはミスタを地面へ放置して、箒もその場へ置いて走った。ゴミ箱をひっくり返していた男がトムを見るのに、駅前の植え込みへ向かいそこへ腕を突っ込んだ。
隠し持っていた匣を、さもそこから拾いましたとばかりに持ち直して更に走る。そうして未だ運河の車の上にいるジョルノへとそれを投げた。
「ジョルノ!」
「――トム!」
「それを持って逃げろ! ミスタは僕が逃がす!」
何かを言い掛けたジョルノがぐっと匣を握りしめる。男がトムへ向かって襲いかかろうとしていた。
「いいかジョルノ! 犠牲というものは常に必要だ! 君はここで犠牲を出さねばならない!」
沈み掛けている車の上からジョルノはトムを見つめている。
犠牲は何においても付き物だ。
父のアマネであったなら『犠牲が必要というのなら自分がなる』と言うだろう。彼にとって犠牲とは元から世界へいらないと認識されてしまったものであり、だが世界にいらない物なんて無いというのがあの父の持論であり信念だ。
故に彼は犠牲が必要な状況へ陥ったとき、いとも容易く自身を差し出す。万物を愛し万象を受け入れる。トムの魂もそうして愛されていた。
トムには真似できない。時には犠牲が必要であることも当たり前だと思うし、犠牲なくして成り立たない世界もそうそう無いだろう。
だからトムは父の、『犠牲が必要な状況へ陥った時自身を差し出す』行為だけは真似をしようと思っている。
けれどもそれは、今じゃない。
「犠牲は『覚悟』とは違うんだ。――僕はもう、『覚悟』したよ」
ジョルノがこちらへ向かって必死に泳いでくる。男がその行動を馬鹿にしたようにスーツの中で口角を上げていた。
凍らせられた氷がトムへと襲いかかる。それへ振り向くと同時にトムは隠していたナギニをチャクラムへ変化させて薙ぎ払った。
遠心力をも利用して振り払ったそれを飛ばす。見当違いな方角へ飛んでいったそれに男が僅かに視線で追いかけるが、すぐに勝ち誇ったようにトムへと向き直った。
その男を見つめたままトムは右腕を掲げる。ジョルノが岸へ到達した。
見当違いな方向へ飛んでいったチャクラムが戻ってくる。ジョルノが凍らされていたらしい腕を叩きつけて血を噴出させた。
戻ってきたチャクラムがトムの掲げた腕を切断する。
痛い。