五部
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ネアポリスから高速艇で三十分。ソレントの南西へ位置するカプリ島は古代ギリシャ人が美しいと絶賛した島でもある。
その北の港の高台にある公衆トイレの前で、トムはカモフラージュ代わりのガイドブック片手に黄昏ていた。海を眺めているだけでも十分美しいので見飽きないのだが、海は父の知人で海洋冒険家である承太郎が脳裏へちらついて仕方がない。
今のトムはカプリ島へ来た観光客の振りをした見張りだ。その見張り内容は怪しい人物を見張っていてくれというもの。そして実際に怪しい人物を見つけたら囮になってくれというものだった。
このトムを囮に使うなんてブチャラティも怖いもの知らずだと思ったが、存外楽しそうだったので引き受けたのだ。それにカプリ島もなかなかの観光し甲斐がある。
トムのいる高台からは港の様子がよく見えた。遠くから港へ向かってくる船や、そこから飛び降りた人影。双眼鏡を取り出して眺めればそれは魚へ引っ張られた二人組だと分かる。その片方がジョルノであることもだ。
「あーあー、ナギニが濡れたらどうしてくれるんだ。ナギニの鱗は繊細なんだ」
ナギニは匣生物なので匣へ戻れば元通りになるのだが、だからといって傷ついていい道理はない。利口なので余り濡れないか船のほうへ隠れているだろうと思って双眼鏡で船を伺えば、甲板へいるブチャラティがナギニを乗せた手を掲げていた。
ライトを取り出して合図を送る。ブチャラティの傍にいる男が不思議そうにブチャラティへ話しかけていた。どうやらナギニはジョルノと一緒に海へ降りはしなかったらしい。
公衆トイレから少し離れた場所へ移動し、そこにあったベンチへ座って買っておいた昼食を広げる。イタリア人の悪いところは生活習慣には従順なくせにルーズなところだろう。お昼やシエスタの時間になると店を閉めてまで休む。
港の方から銃声が聞こえる。だがトムには関係ない。
「シチリアも綺麗だけど、この島もなかなかだね。せっかくだし徐倫の為に写真も撮っておくか」
観光客が写真を撮っていることは別に珍しくないし、カメラの一つでも持っていた方がより観光客らしく見えるだろう。
港の方では急激に走り出すトラックの姿。その後一隻のヨットが港へと入ってくる。彼等がここへ来るまでには昼食を食べ終わる筈だ。
それにしても。
「ジョルノには顔を見られてるのに、僕に見張りをさせるって変だよね」
呟いてホットドックをかじる。ブチャラティはトムがカプリ島へ来ていることを知っているが、ジョルノは知らないのだ。
その北の港の高台にある公衆トイレの前で、トムはカモフラージュ代わりのガイドブック片手に黄昏ていた。海を眺めているだけでも十分美しいので見飽きないのだが、海は父の知人で海洋冒険家である承太郎が脳裏へちらついて仕方がない。
今のトムはカプリ島へ来た観光客の振りをした見張りだ。その見張り内容は怪しい人物を見張っていてくれというもの。そして実際に怪しい人物を見つけたら囮になってくれというものだった。
このトムを囮に使うなんてブチャラティも怖いもの知らずだと思ったが、存外楽しそうだったので引き受けたのだ。それにカプリ島もなかなかの観光し甲斐がある。
トムのいる高台からは港の様子がよく見えた。遠くから港へ向かってくる船や、そこから飛び降りた人影。双眼鏡を取り出して眺めればそれは魚へ引っ張られた二人組だと分かる。その片方がジョルノであることもだ。
「あーあー、ナギニが濡れたらどうしてくれるんだ。ナギニの鱗は繊細なんだ」
ナギニは匣生物なので匣へ戻れば元通りになるのだが、だからといって傷ついていい道理はない。利口なので余り濡れないか船のほうへ隠れているだろうと思って双眼鏡で船を伺えば、甲板へいるブチャラティがナギニを乗せた手を掲げていた。
ライトを取り出して合図を送る。ブチャラティの傍にいる男が不思議そうにブチャラティへ話しかけていた。どうやらナギニはジョルノと一緒に海へ降りはしなかったらしい。
公衆トイレから少し離れた場所へ移動し、そこにあったベンチへ座って買っておいた昼食を広げる。イタリア人の悪いところは生活習慣には従順なくせにルーズなところだろう。お昼やシエスタの時間になると店を閉めてまで休む。
港の方から銃声が聞こえる。だがトムには関係ない。
「シチリアも綺麗だけど、この島もなかなかだね。せっかくだし徐倫の為に写真も撮っておくか」
観光客が写真を撮っていることは別に珍しくないし、カメラの一つでも持っていた方がより観光客らしく見えるだろう。
港の方では急激に走り出すトラックの姿。その後一隻のヨットが港へと入ってくる。彼等がここへ来るまでには昼食を食べ終わる筈だ。
それにしても。
「ジョルノには顔を見られてるのに、僕に見張りをさせるって変だよね」
呟いてホットドックをかじる。ブチャラティはトムがカプリ島へ来ていることを知っているが、ジョルノは知らないのだ。