ペルソナ4
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何事もない日が続いた。
短期のバイトを入れて、日帰りで親戚の家と両親の墓に顔を見せにも行って。無理矢理忙しい振りをし続けた。学校へ通って授業を受ける、という束縛的な行動がない休日は色々考えてしまって辛い。
稲羽市の今の家に戻ってきても、まだ犯人は捕まっていないらしいとニュースが告げる。そういう不安は残っているが近所は平穏だと思う。有事の前の静けさでなければ。連休明けの試験もそれなりの出来だった。
更に数日、結局イヤホンが満足できず再び電化製品売り場へ向かったついでに、テレビの中へ入って様子を見ておくかと思い至る。マヨナカテレビも見てはいないが、誰かが誘拐されたという噂も聞いていないし、単純に見回りだけだ。
テレビへ飛び込んで鞄から取り出したナイフを身につける。そうしている間に前から走ってきたクマクマ言う奴が、何故か盛大に体当たりをしてきた。
「んだぁ?」
「寂しかったクマよ! センセイたちじゃないけど我慢するクマ! ちょっと付き合うクマ!」
わんわんと泣き喚くクマクマしい彼の頭を、つまり俺は巻き込まれたのかとため息を吐きながら撫でると、安心してか何なのか更に泣き喚く。騒がしいと思った。
「いったい何だぁ?」
「クマ、クマっていうクマ」
「うん」
「でもクマ、ここで自分以外にクマみたいなの見たことないクマ。最近になってセンセイたちやキミが来てクマのこと構ってくれるようになったクマけど、センセイたちはいつもテレビの向こうに帰っちゃうクマね。クマ、皆がいるときは嬉しいクマけど帰った後が寂しいクマ」
その場に座り込んで向かい合う。間接がどうなっているのか良く分からない足で正座したクマという名前らしい彼は、めそめそと語る。
「どうしてクマは一人でここにいるクマか? どうしてクマだけが」
「……考えろぉ。俺にはそれしか言えねぇ」
「考えて分かることクマか? 答えが分かれば寂しくなくなるクマか?」
俺は何も言えなかった。探索しようと思っていた気持ちも萎んで、伸ばした手でクマを抱き締める。クマを宥める為でなく、自分が縋っていた。
二年前の適正があった者しか感じられなかったあの時間帯に、自分のペルソナを相手にみっともなく縋って自身の不安を打ち消していた時の様に。
何かが足りない気持ちは、分かる。
それに気付いてしまった時の衝撃も、その後に訪れる不安も、俺とは違うのだろうけれど、その感覚に同情してやれることは出来た。
失ったものは何なのか。それは自分を構成していた『何』なのか。それが無ければ自分じゃないのか。
では自分とは何か。
こいつはこれからそれに悩むんだろうな、と思ったよりも心地よい毛並みを撫でながら思った。
短期のバイトを入れて、日帰りで親戚の家と両親の墓に顔を見せにも行って。無理矢理忙しい振りをし続けた。学校へ通って授業を受ける、という束縛的な行動がない休日は色々考えてしまって辛い。
稲羽市の今の家に戻ってきても、まだ犯人は捕まっていないらしいとニュースが告げる。そういう不安は残っているが近所は平穏だと思う。有事の前の静けさでなければ。連休明けの試験もそれなりの出来だった。
更に数日、結局イヤホンが満足できず再び電化製品売り場へ向かったついでに、テレビの中へ入って様子を見ておくかと思い至る。マヨナカテレビも見てはいないが、誰かが誘拐されたという噂も聞いていないし、単純に見回りだけだ。
テレビへ飛び込んで鞄から取り出したナイフを身につける。そうしている間に前から走ってきたクマクマ言う奴が、何故か盛大に体当たりをしてきた。
「んだぁ?」
「寂しかったクマよ! センセイたちじゃないけど我慢するクマ! ちょっと付き合うクマ!」
わんわんと泣き喚くクマクマしい彼の頭を、つまり俺は巻き込まれたのかとため息を吐きながら撫でると、安心してか何なのか更に泣き喚く。騒がしいと思った。
「いったい何だぁ?」
「クマ、クマっていうクマ」
「うん」
「でもクマ、ここで自分以外にクマみたいなの見たことないクマ。最近になってセンセイたちやキミが来てクマのこと構ってくれるようになったクマけど、センセイたちはいつもテレビの向こうに帰っちゃうクマね。クマ、皆がいるときは嬉しいクマけど帰った後が寂しいクマ」
その場に座り込んで向かい合う。間接がどうなっているのか良く分からない足で正座したクマという名前らしい彼は、めそめそと語る。
「どうしてクマは一人でここにいるクマか? どうしてクマだけが」
「……考えろぉ。俺にはそれしか言えねぇ」
「考えて分かることクマか? 答えが分かれば寂しくなくなるクマか?」
俺は何も言えなかった。探索しようと思っていた気持ちも萎んで、伸ばした手でクマを抱き締める。クマを宥める為でなく、自分が縋っていた。
二年前の適正があった者しか感じられなかったあの時間帯に、自分のペルソナを相手にみっともなく縋って自身の不安を打ち消していた時の様に。
何かが足りない気持ちは、分かる。
それに気付いてしまった時の衝撃も、その後に訪れる不安も、俺とは違うのだろうけれど、その感覚に同情してやれることは出来た。
失ったものは何なのか。それは自分を構成していた『何』なのか。それが無ければ自分じゃないのか。
では自分とは何か。
こいつはこれからそれに悩むんだろうな、と思ったよりも心地よい毛並みを撫でながら思った。