後日談
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その鍵で扉を開ければ、ニュクスと対峙した『あの日』か、何も変わらない『明日』へ行く事が出来るという。正確にはその鍵ではなくそれぞれが持つ鍵を集めたものが、なのだそうだが。
受け取ろうと手を伸ばしたら男が遊ぶように手を引いた。見上げれば男は真っ直ぐに俺を見つめている。
「渡す前に聞いておく。答え次第では、貴方は……いや、答えを言ってごらん」
他の寮生たちが持っていた鍵は、既にアイギスの持つ鍵と一つになっているらしかった。俺の鍵は俺がずっと寝ていたから男が『預かってきた』らしい。時の狭間の原因は倒してきたから、このラウンジもそのうち崩壊してしまう。
だからこの場所へ留まる事は出来ない。そんな状況で目の前に置かれた選択肢。
「――……過去に戻って、あの人に代わって俺が封印する」
手の平に置いていた鍵を握り締め、男がその手を振り上げる。殴るのかと真田や山岸が慌てて止めようとしていたが、男は結局振り上げた手を力なく降ろして俯いた。
それを見てどうしてか、『嗚呼また間違えたんだ』と思いはしても、その『また』ということの前回がいつの事か思い出せない。
何も忘れてない筈だ。忘れたら駄目だと、忘れたらお終いだと何度も繰り返してきたのだから。
なのに俺そっくりの男が酷く泣きそうになっているのを見ると、俺が悪いのだと分かってしまう。
「……なんで……。……『オレ達』が言って欲しかったのは、そんな言葉じゃないよ」
握り締められた鍵。
『あの人』に似た口調。
「どうして言ってくれないのかと、いつも思っていたんだ」
『親友』に似た口調。
「……犠牲って言葉が、嫌いなんじゃねぇ。あんたは、『兄貴』は――」
『弟』と『俺』に似た口調。
男の目から涙が零れる事はない。だが泣きそうな顔のまま男は握っていた鍵をアイギスへと差し出した。驚きと戸惑いを浮かべるアイギスに男は笑いかける。
「こいつはここじゃ全部を受け入れられない。だから『オレ達』の代わりに、外へと押し出してやってくれないか? メティスを見てきた君ならきっとそれが出来るから」
「おい……待て」
「『命の答え』は、一つじゃない」
「待て!」
手の平へ乗せられていた鍵は、吸い込まれるようにアイギスの持つ鍵と一体化した。それを見守るように見つめていた男は、深く息を吐き出すと歩き出す。
止めようとする桐条達の声を無視して、ポロニアンモールへ繋がっているらしい扉へと手を掛け、最後に一度振り返った。
「『オレ達』はずっと待ってる」
閉まる扉。メティスが追いかけさせまいと俺の手を掴んでいた。
「……イブリス」
受け取ろうと手を伸ばしたら男が遊ぶように手を引いた。見上げれば男は真っ直ぐに俺を見つめている。
「渡す前に聞いておく。答え次第では、貴方は……いや、答えを言ってごらん」
他の寮生たちが持っていた鍵は、既にアイギスの持つ鍵と一つになっているらしかった。俺の鍵は俺がずっと寝ていたから男が『預かってきた』らしい。時の狭間の原因は倒してきたから、このラウンジもそのうち崩壊してしまう。
だからこの場所へ留まる事は出来ない。そんな状況で目の前に置かれた選択肢。
「――……過去に戻って、あの人に代わって俺が封印する」
手の平に置いていた鍵を握り締め、男がその手を振り上げる。殴るのかと真田や山岸が慌てて止めようとしていたが、男は結局振り上げた手を力なく降ろして俯いた。
それを見てどうしてか、『嗚呼また間違えたんだ』と思いはしても、その『また』ということの前回がいつの事か思い出せない。
何も忘れてない筈だ。忘れたら駄目だと、忘れたらお終いだと何度も繰り返してきたのだから。
なのに俺そっくりの男が酷く泣きそうになっているのを見ると、俺が悪いのだと分かってしまう。
「……なんで……。……『オレ達』が言って欲しかったのは、そんな言葉じゃないよ」
握り締められた鍵。
『あの人』に似た口調。
「どうして言ってくれないのかと、いつも思っていたんだ」
『親友』に似た口調。
「……犠牲って言葉が、嫌いなんじゃねぇ。あんたは、『兄貴』は――」
『弟』と『俺』に似た口調。
男の目から涙が零れる事はない。だが泣きそうな顔のまま男は握っていた鍵をアイギスへと差し出した。驚きと戸惑いを浮かべるアイギスに男は笑いかける。
「こいつはここじゃ全部を受け入れられない。だから『オレ達』の代わりに、外へと押し出してやってくれないか? メティスを見てきた君ならきっとそれが出来るから」
「おい……待て」
「『命の答え』は、一つじゃない」
「待て!」
手の平へ乗せられていた鍵は、吸い込まれるようにアイギスの持つ鍵と一体化した。それを見守るように見つめていた男は、深く息を吐き出すと歩き出す。
止めようとする桐条達の声を無視して、ポロニアンモールへ繋がっているらしい扉へと手を掛け、最後に一度振り返った。
「『オレ達』はずっと待ってる」
閉まる扉。メティスが追いかけさせまいと俺の手を掴んでいた。
「……イブリス」