後日談
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『弟を庇って死んだ時の話をしましょう』
いつの間にか寝ていたのか気絶したのか、眼を覚ますとメティスが顔を覗き込んでいた。ラウンジが崩壊しかけていて、あの男達は少し離れたところで何かを話し合っている。内容までは聞こえない。
何故か膝枕をされていた。これじゃまるで『約束の日』の『あの人』と同じじゃないかと思う。
俺が眼を覚ました事に気付いたメティスが俺の頭を撫でていた手を止めた。それから戸惑いと遠慮と、ぎこちなさと僅かな心配の混ざった眼で覗き込んでくる。
「痛いところは無いですか?」
「……君に優しくされる理由が分からない」
「姉さんたちに頼まれたから」
「ああ……」
壊そうとした相手を気遣うなんてオヤサシイ人達だと考えて、それは違うのかと思いなおした。彼らにとって俺はまだ仲間だと言えるのだろう。俺はそんな事などもうだいぶ忘れていた気がするけれど。
絆の力で生み出されたあの人の最後の力。たった一人の命と引き換えの、たった一人の命で賄えてしまう力。
それならば俺であったって良かったはずだ。
「ダメ」
手を掴まれて見上げれば、メティスが俺を見つめていた。泣きそうな表情に彼女もアイギスと同じく涙を流せるのだろうかと不思議に思ったが、涙が零れ落ちてくる事はない。
「……何が、駄目なんだぁ?」
「分からないけど、きっと姉さんも他の皆もそう言うと思ったの。だめ。それはだめ」
理由も主語も告げずに駄目だと繰り返す少女に手を強く握られる。
泣かれるとどうしていいのか分からなくて困るのだが、彼女は俺のそんな事情など知らない。知られていたところで、泣くのは我慢できないものだ。
だって俺自身泣いたじゃないか。
紅い少女は困り果てたように俺を見下ろしている。今にも泣きそうな少女に今まで出会った様々な少女達を思い出してみるも、彼女を泣かせない方法は分からない。
頭を撫でようとしても寝転がっている今は手が届かず、仕方無しに少女の頬へと触れた。『人工物』でありながらきめ細やかな肌だ。
「泣く必要は無ぇよ」
「泣いてません」
「じゃあ、泣きそうになるのはやめてくれぇ。でねぇと俺が泣く」
膝枕をされているなど恥ずかしいなとメティスの膝から頭を上げて、ソファへ座りなおそうと立ち上がりかけたところで俺がおきていることに気付いた天田と桐条がタックルしてきた。
正確にはタックルではなく飛びついてきた、が正しいのだろうが、天田の頭突きが鳩尾へ入った時点でタックルが正しい。
「ぐふっ……」
横へメティスが座っていたから、倒れるにしてもその方向へ行かないようにしなければと必死で、結局支えきれずにソファへ沈む。天田はともかく桐条まで飛びついてくるようなことがあったのかと思っていると、二人が涙目だったことに気付いた。
俺の服や腕にしがみついたまま顔を上げる二人。
「斑鳩! お前は、お前はっ……」
「なんで、なんであなたは!」
「……とりあえず、退いてください」
いつの間にか寝ていたのか気絶したのか、眼を覚ますとメティスが顔を覗き込んでいた。ラウンジが崩壊しかけていて、あの男達は少し離れたところで何かを話し合っている。内容までは聞こえない。
何故か膝枕をされていた。これじゃまるで『約束の日』の『あの人』と同じじゃないかと思う。
俺が眼を覚ました事に気付いたメティスが俺の頭を撫でていた手を止めた。それから戸惑いと遠慮と、ぎこちなさと僅かな心配の混ざった眼で覗き込んでくる。
「痛いところは無いですか?」
「……君に優しくされる理由が分からない」
「姉さんたちに頼まれたから」
「ああ……」
壊そうとした相手を気遣うなんてオヤサシイ人達だと考えて、それは違うのかと思いなおした。彼らにとって俺はまだ仲間だと言えるのだろう。俺はそんな事などもうだいぶ忘れていた気がするけれど。
絆の力で生み出されたあの人の最後の力。たった一人の命と引き換えの、たった一人の命で賄えてしまう力。
それならば俺であったって良かったはずだ。
「ダメ」
手を掴まれて見上げれば、メティスが俺を見つめていた。泣きそうな表情に彼女もアイギスと同じく涙を流せるのだろうかと不思議に思ったが、涙が零れ落ちてくる事はない。
「……何が、駄目なんだぁ?」
「分からないけど、きっと姉さんも他の皆もそう言うと思ったの。だめ。それはだめ」
理由も主語も告げずに駄目だと繰り返す少女に手を強く握られる。
泣かれるとどうしていいのか分からなくて困るのだが、彼女は俺のそんな事情など知らない。知られていたところで、泣くのは我慢できないものだ。
だって俺自身泣いたじゃないか。
紅い少女は困り果てたように俺を見下ろしている。今にも泣きそうな少女に今まで出会った様々な少女達を思い出してみるも、彼女を泣かせない方法は分からない。
頭を撫でようとしても寝転がっている今は手が届かず、仕方無しに少女の頬へと触れた。『人工物』でありながらきめ細やかな肌だ。
「泣く必要は無ぇよ」
「泣いてません」
「じゃあ、泣きそうになるのはやめてくれぇ。でねぇと俺が泣く」
膝枕をされているなど恥ずかしいなとメティスの膝から頭を上げて、ソファへ座りなおそうと立ち上がりかけたところで俺がおきていることに気付いた天田と桐条がタックルしてきた。
正確にはタックルではなく飛びついてきた、が正しいのだろうが、天田の頭突きが鳩尾へ入った時点でタックルが正しい。
「ぐふっ……」
横へメティスが座っていたから、倒れるにしてもその方向へ行かないようにしなければと必死で、結局支えきれずにソファへ沈む。天田はともかく桐条まで飛びついてくるようなことがあったのかと思っていると、二人が涙目だったことに気付いた。
俺の服や腕にしがみついたまま顔を上げる二人。
「斑鳩! お前は、お前はっ……」
「なんで、なんであなたは!」
「……とりあえず、退いてください」