後日談
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「……本当ですか、アマネさん」
アイギスの声。岳羽も喘ぐように胸元を押さえていて、伊織や天田だって驚いている。
「だから?」
またミシ、ときしむグラス。
黒い少女は俺を見て戸惑いを浮かべている。
「その方法は止めておけ」
男が全てを知っている風に忠告した。俺とそっくりな顔をしておいて親友や友人達と似た口調をしておいて、苛々する。
その顔で、口調で俺を窘めないでほしい。俺は間違っていないはずなんだ。
「その『方法』じゃ駄目なんだよ。その『方法』だけは、誰も救えないんだ」
「あの人は救える」
「救えない。同じ事を繰り返すだけだ」
「同じ事なんて繰り返さねぇ。繰り返させねぇ」
男が悲しげな顔をする。その眼は湊さんに似ていた。
「――……アマネ」
手の中で割れるグラス。
ピリピリと走る痛みを無視して男へ向かって走り出す。膝蹴りを食らわせる勢いで押し倒し、持っていたグラスの破片を男の目へと突き刺そうとして、横からの気配に飛び退けた。
紙一重でやってきた体当たりと同じ方向へ飛ぶ事で衝撃を殺し、床へ着地すると同時にその床を蹴って、立ち上がろうとしていた男ではなく、男を助けようとしたアイギスへとグラスの破片を持った手を振りかぶる。
そんなチャチなものが機械の体をしたアイギスへ効くとは思っていない。だが彼女の眼を壊す事や少なくとも衝撃を与える事は可能だ。本気で壊す気は一応、無い。
ただ少し邪魔だと思った。だから壊れてもらおうと。
「――っダメ!」
アイギスと俺の間へ割り込む黒い影。それがまだ名前も聞いていない黒い少女だと気付いて、その少女の紅い人工的な瞳が泣きそうで。
壊そうという思考とは逆に、手の動きが止まる。
黒い少女と俺の間を遮るようにいつの間にか立ち上がった男の脚が伸びてきて、俺の腹を蹴り飛ばした。反応が遅れて受身も取れず、吹き飛ばされるままに壁へとぶつかった。
まともな呼吸が出来ずに咳き込んでいると男が近付いてきて側頭部を蹴り飛ばされる。倒れたところに靴底で頭を踏みつけられた。
「おいっ!」
「大丈夫だよ青年。オレもコイツもこの程度じゃ死にはせん。それより二人とも、無事かぁ?」
アイギスと黒い少女を案じる男。ふと手を見ると破片で切れた傷から出る血で紅く染まっていた。
さっき見たばかりの少女の瞳を思い出し、視線だけでその少女を見る。
黒い体。アイギスのように機械の乙女。紅い瞳。アイギスの無事を確認してから窺うように俺を見る少女。
「……君、名前は?」
思わず場違いな質問をすれば、少女は戸惑いながらも答えた。
「メティス、です」
ギリシア神話の女神の名前だ。
アイギスの声。岳羽も喘ぐように胸元を押さえていて、伊織や天田だって驚いている。
「だから?」
またミシ、ときしむグラス。
黒い少女は俺を見て戸惑いを浮かべている。
「その方法は止めておけ」
男が全てを知っている風に忠告した。俺とそっくりな顔をしておいて親友や友人達と似た口調をしておいて、苛々する。
その顔で、口調で俺を窘めないでほしい。俺は間違っていないはずなんだ。
「その『方法』じゃ駄目なんだよ。その『方法』だけは、誰も救えないんだ」
「あの人は救える」
「救えない。同じ事を繰り返すだけだ」
「同じ事なんて繰り返さねぇ。繰り返させねぇ」
男が悲しげな顔をする。その眼は湊さんに似ていた。
「――……アマネ」
手の中で割れるグラス。
ピリピリと走る痛みを無視して男へ向かって走り出す。膝蹴りを食らわせる勢いで押し倒し、持っていたグラスの破片を男の目へと突き刺そうとして、横からの気配に飛び退けた。
紙一重でやってきた体当たりと同じ方向へ飛ぶ事で衝撃を殺し、床へ着地すると同時にその床を蹴って、立ち上がろうとしていた男ではなく、男を助けようとしたアイギスへとグラスの破片を持った手を振りかぶる。
そんなチャチなものが機械の体をしたアイギスへ効くとは思っていない。だが彼女の眼を壊す事や少なくとも衝撃を与える事は可能だ。本気で壊す気は一応、無い。
ただ少し邪魔だと思った。だから壊れてもらおうと。
「――っダメ!」
アイギスと俺の間へ割り込む黒い影。それがまだ名前も聞いていない黒い少女だと気付いて、その少女の紅い人工的な瞳が泣きそうで。
壊そうという思考とは逆に、手の動きが止まる。
黒い少女と俺の間を遮るようにいつの間にか立ち上がった男の脚が伸びてきて、俺の腹を蹴り飛ばした。反応が遅れて受身も取れず、吹き飛ばされるままに壁へとぶつかった。
まともな呼吸が出来ずに咳き込んでいると男が近付いてきて側頭部を蹴り飛ばされる。倒れたところに靴底で頭を踏みつけられた。
「おいっ!」
「大丈夫だよ青年。オレもコイツもこの程度じゃ死にはせん。それより二人とも、無事かぁ?」
アイギスと黒い少女を案じる男。ふと手を見ると破片で切れた傷から出る血で紅く染まっていた。
さっき見たばかりの少女の瞳を思い出し、視線だけでその少女を見る。
黒い体。アイギスのように機械の乙女。紅い瞳。アイギスの無事を確認してから窺うように俺を見る少女。
「……君、名前は?」
思わず場違いな質問をすれば、少女は戸惑いながらも答えた。
「メティス、です」
ギリシア神話の女神の名前だ。