後日談
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メンバー視点
「――メティス」
三月三十一日。止まってしまった時計と床下から現れた謎の少女。時の狭間というものへ巻き込まれてしまったのだと、謎の少女ことメティスが説明している時に聞こえた声へ伊織達は声の聞こえた階段のほうを振り返った。
そこから階段を降りてきているのは、『彼』が死んだあの日からずっと無気力状態に陥って部屋へ引きこもりがちだった斑鳩で、こんな状況とはいえ部屋から出てきた事へ山岸が安堵の息を吐く。だが斑鳩はそれが自分へ向けられたものだと理解していないように、メティスと名乗ったアイギスの妹だという少女へ手を差し出した。
「メティス。一人で突っ走んじゃねぇよ」
「シルビ!」
斑鳩のことを『シルビ』と呼んでメティスが駆け寄り、その胸へと飛びつく。たたらを踏むようによろけた斑鳩はしかし、転ぶことなくメティスを抱きしめてその頭を撫でていた。
まるで以前からの知り合いであるように。
だが桐条がアイギスの妹型であるというメティスを知らないのだから、斑鳩だって知らないはずだ。一体どうなっているのかと尋ねようとして、誰からとも無くその『シルビ』という男と自分達の知っている『斑鳩』との違いに気付く。
メティスを抱きしめたまま顔を上げ伊織達を見回すその眼は、この一年で見慣れた珍しい紫色ではなく、ほの暗い金色をしていた。
「……お前は、誰だ」
桐条の問いに男は微笑む。
「シルビ。フルネームはシルビ・テトラ・グラマトだけれど、殆どの人が『シルビ』と呼びます。君達も『シルビ』と呼ぶといい」
「……シルビ?」
「君達の知る『斑鳩 アマネ』にとって、忘れてはいけない名前だな。便宜上そう名乗らせてもらうが、構わないよね?」
統一されない口調。それに僅かに嫌悪感を覚える。金色の目をした男はそんな伊織達を眺めてニヤリと笑い、メティスを離してアイギスへと近付いてきた。
戸惑うアイギスの前に立ち、マジマジと観察していく。
「ふむ。君は『似ている』な。だから『あの子』は……どうも確立しにくいですねえ。困ったな。これじゃ『もう一人』どころか『もう十人』だ。まぁ、男には七人の敵がいるとも言うしいいかぁ。どう思われるかな、オ嬢サン」
途中からは独り言のように呟いていたかと思うと、唐突に話をアイギスへ振った。名前ではなく『お嬢さん』と他人のように問い掛ける男に、真田が肩を怒らせて前へ出る。
「いい加減にしろ斑鳩!今はふざけている場合じゃないんだぞ!」
「――微塵たりともふざけた覚えは無いさ『青年』。だがそうだな……『いい加減にしろ斑鳩』というのは大いに賛同出来ます」
「な、にを……」
男は笑う。斑鳩の顔で斑鳩よりも歪に。
「あの馬鹿は――何処にいる?」
「――メティス」
三月三十一日。止まってしまった時計と床下から現れた謎の少女。時の狭間というものへ巻き込まれてしまったのだと、謎の少女ことメティスが説明している時に聞こえた声へ伊織達は声の聞こえた階段のほうを振り返った。
そこから階段を降りてきているのは、『彼』が死んだあの日からずっと無気力状態に陥って部屋へ引きこもりがちだった斑鳩で、こんな状況とはいえ部屋から出てきた事へ山岸が安堵の息を吐く。だが斑鳩はそれが自分へ向けられたものだと理解していないように、メティスと名乗ったアイギスの妹だという少女へ手を差し出した。
「メティス。一人で突っ走んじゃねぇよ」
「シルビ!」
斑鳩のことを『シルビ』と呼んでメティスが駆け寄り、その胸へと飛びつく。たたらを踏むようによろけた斑鳩はしかし、転ぶことなくメティスを抱きしめてその頭を撫でていた。
まるで以前からの知り合いであるように。
だが桐条がアイギスの妹型であるというメティスを知らないのだから、斑鳩だって知らないはずだ。一体どうなっているのかと尋ねようとして、誰からとも無くその『シルビ』という男と自分達の知っている『斑鳩』との違いに気付く。
メティスを抱きしめたまま顔を上げ伊織達を見回すその眼は、この一年で見慣れた珍しい紫色ではなく、ほの暗い金色をしていた。
「……お前は、誰だ」
桐条の問いに男は微笑む。
「シルビ。フルネームはシルビ・テトラ・グラマトだけれど、殆どの人が『シルビ』と呼びます。君達も『シルビ』と呼ぶといい」
「……シルビ?」
「君達の知る『斑鳩 アマネ』にとって、忘れてはいけない名前だな。便宜上そう名乗らせてもらうが、構わないよね?」
統一されない口調。それに僅かに嫌悪感を覚える。金色の目をした男はそんな伊織達を眺めてニヤリと笑い、メティスを離してアイギスへと近付いてきた。
戸惑うアイギスの前に立ち、マジマジと観察していく。
「ふむ。君は『似ている』な。だから『あの子』は……どうも確立しにくいですねえ。困ったな。これじゃ『もう一人』どころか『もう十人』だ。まぁ、男には七人の敵がいるとも言うしいいかぁ。どう思われるかな、オ嬢サン」
途中からは独り言のように呟いていたかと思うと、唐突に話をアイギスへ振った。名前ではなく『お嬢さん』と他人のように問い掛ける男に、真田が肩を怒らせて前へ出る。
「いい加減にしろ斑鳩!今はふざけている場合じゃないんだぞ!」
「――微塵たりともふざけた覚えは無いさ『青年』。だがそうだな……『いい加減にしろ斑鳩』というのは大いに賛同出来ます」
「な、にを……」
男は笑う。斑鳩の顔で斑鳩よりも歪に。
「あの馬鹿は――何処にいる?」