ペルソナ3
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誰も居ない寮で、二人で一緒に作った料理を二人だけで食べる。アマネは油断すればまたすぐに泣いてしまいそうで、どうにか意識を逸らそうとしても難しい。
酷く疲れている様子の有里は向かいの席で、以前と比べれば不安になるほど少ない量をことさらゆっくりと食べている。作っている最中も何度も手を休めていた。
その理由もアマネは分かっていて、だから心配の言葉はかけない。かけられない。
「……俺が『死んだ』後、弟がどんな悲しみ方をしたのかとかを、俺は今まで探ろうと思ったことはありませんでした」
「アマネ?」
「最期に『笑え』って言ったって、ココディーロは俺が死んだ後やっぱり泣いてくれただろうし、俺は結局弟を泣かせている訳で、それについてはどうしようもない馬鹿な兄だったと思っているんですけれど」
眼を伏せて『自分の最期』を思い出す。
「それでも俺は、あの時自分しか出来なかった事をやったと思ってます。……湊さんのやったことは、貴方にしか出来ねぇ事だったんですか?」
有里は微笑んだ。
「うん」
それが、有里自身が甘やかしていると分かっているアマネにさえも否定させない返事だったから、アマネは言葉が見つからずに奥歯をかみ締めた。
約束の日に、約束の場所で。
今はもうたったそれだけの為にアマネの目の前へ居る彼に、それ以上何も言えやしない。恨む事もねたむ事も怒鳴る事も怒る事もすがる事も。
言えることがあるとすれば、一人だけいく彼に餞別の言葉を向けるくらいか。けれどもそれを言ってしまうには、アマネは自分の無力さが許せなかった。
「……俺も」
「だめ」
アマネの言葉を遮って否定した有里に顔を上げる。
「だめ。これはオレの権利。アマネにも譲ってあげない」
そう言って微笑む有里に、アマネはやはり何も言えなかった。
せっかく二人で作った夕食はどれも涙のせいで全く味が分からない。有里は何度も美味しいと言っていたけれど、きっと実際にとても美味しいのだろうけれど、アマネにはその感想が言えなかった。
もう二度と有里とこうして料理を作る事も、有里の料理を食べる事も『出来ない』というのに。
手の進まないアマネをとうとう見かねてか、有里が席を立って近付いてくる。自分はこんなにも『子供』だったなんて知らなかった。
「アマネは早く大人になり過ぎたんだ」
「……どういう意味ですか、それ」
「オレ、アマネの兄さんになれて良かった」
そう言って頭を撫でる手を払い避ける事なんて出来ない。思えば最初に撫でられた時から、そんなことをした覚えも無かった。
嫌だなんて思った事も無い。アマネだって有里を好きだったから。
だからそんなの、出来る訳がなかった。
酷く疲れている様子の有里は向かいの席で、以前と比べれば不安になるほど少ない量をことさらゆっくりと食べている。作っている最中も何度も手を休めていた。
その理由もアマネは分かっていて、だから心配の言葉はかけない。かけられない。
「……俺が『死んだ』後、弟がどんな悲しみ方をしたのかとかを、俺は今まで探ろうと思ったことはありませんでした」
「アマネ?」
「最期に『笑え』って言ったって、ココディーロは俺が死んだ後やっぱり泣いてくれただろうし、俺は結局弟を泣かせている訳で、それについてはどうしようもない馬鹿な兄だったと思っているんですけれど」
眼を伏せて『自分の最期』を思い出す。
「それでも俺は、あの時自分しか出来なかった事をやったと思ってます。……湊さんのやったことは、貴方にしか出来ねぇ事だったんですか?」
有里は微笑んだ。
「うん」
それが、有里自身が甘やかしていると分かっているアマネにさえも否定させない返事だったから、アマネは言葉が見つからずに奥歯をかみ締めた。
約束の日に、約束の場所で。
今はもうたったそれだけの為にアマネの目の前へ居る彼に、それ以上何も言えやしない。恨む事もねたむ事も怒鳴る事も怒る事もすがる事も。
言えることがあるとすれば、一人だけいく彼に餞別の言葉を向けるくらいか。けれどもそれを言ってしまうには、アマネは自分の無力さが許せなかった。
「……俺も」
「だめ」
アマネの言葉を遮って否定した有里に顔を上げる。
「だめ。これはオレの権利。アマネにも譲ってあげない」
そう言って微笑む有里に、アマネはやはり何も言えなかった。
せっかく二人で作った夕食はどれも涙のせいで全く味が分からない。有里は何度も美味しいと言っていたけれど、きっと実際にとても美味しいのだろうけれど、アマネにはその感想が言えなかった。
もう二度と有里とこうして料理を作る事も、有里の料理を食べる事も『出来ない』というのに。
手の進まないアマネをとうとう見かねてか、有里が席を立って近付いてくる。自分はこんなにも『子供』だったなんて知らなかった。
「アマネは早く大人になり過ぎたんだ」
「……どういう意味ですか、それ」
「オレ、アマネの兄さんになれて良かった」
そう言って頭を撫でる手を払い避ける事なんて出来ない。思えば最初に撫でられた時から、そんなことをした覚えも無かった。
嫌だなんて思った事も無い。アマネだって有里を好きだったから。
だからそんなの、出来る訳がなかった。