ペルソナ3
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……綾時、さん」
思わず呟いた名前を、望月の顔をした『ソレ』は否定して肯定する。滅びを伝える役目を担っていた彼はもうニュクスへ取り込まれ、ニュクスと区別すらつかない存在になったという。
それはもう、助け出すとか、これからも一緒に居るとか、そんな問題以前の話だ。ニュクスを倒したところで取り込まれている『彼』を救える可能性は低い。万が一彼を助けられたとしても彼の中へニュクスは残るのだろう。
助けたいと思っていても、甘く見すぎていたのかもしれない。
全ての命に約束されているもの。ニュクスとは、今の望月とはそういう存在だ。
流石のアマネだって、『大いなる全知の亜種』だって、『死』を救う方法なんて知らない。イゴールに言われた言葉が頭の片隅で繰り返される。彼はこの事を暗示していたのか。
仲間達が怖くとも戦うしかないと決意を口にする中で、見下ろすニュクス・アバターと目が合った気がした。漆黒よりも深淵よりも深い闇の色をしている目には、それでも望月の瞳を思い出す。
枯れかけた喉を鳴らして、叫ぶ。
「一秒でも一瞬でも長く生きる事が、俺の覚悟ですっ!」
ニュクス・アバターの黒い翼がはためいた。僅かにのけぞるように空を見上げたニュクス・アバターへ武器を構えた時、山岸が叫ぶ。
昇ってきた階段から、呼び集められたかのように何かを求めるように集まってくるシャドウの群れ。
逃げる道を消されて、ジンの手榴弾を一つくらい残しておけば良かったと思いながら、アマネはニュクス・アバターへ背を向ける。
「アマネ!」
「片付けたら加勢しますからぁ!」
有里の声へそう返して、階段を上がって来ようとするシャドウの群れへと駆け出した。隣を並走するようにコロマルが駆けてくる。
ニュクス・アバターは有里達へ任せることにした。本当は戦いたかったがシャドウの群れを放置も出来ない。履いてきた硬い靴底でシャドウを一匹踏み潰し消滅させる。
アマネの覚悟は『一秒でも長く、最初に死んだ“シルビ”よりも生きる事』だ。だからまだ、こんなところで終わるわけにはいかない。
一緒に『生きたい』と思ったのだから、尚更。
切り伏せたシャドウが硬く、ナイフへ皹が入る。舌打ちしてシャドウを蹴り飛ばし、予備として足首に隠し持っていたナイフを取り出して構えた。普段とは違い最終決戦なので備えておいたものだったが、まさかただのシャドウに対して取り出すことになるとは。
後ろでは有里達がニュクス・アバターと戦っている。苦戦しているようだがまだ加勢にはいけない。
「うわっ!」
「天田ぁ!」
シャドウにやられてよろけた天田の元へと駆け寄る。その手から槍を借りてシャドウを突き刺し、違うシャドウへとぶつけて消滅させた。
「キリが無ぇなぁ。ジンの手榴弾が欲しいよホント」
「そういうアマネさんは、まだ余裕そうですね」
「化け物の集団との戦いには慣れてんだぁ。でもそろそろ厳しいけどなぁ」
コロマルがペルソナを召喚している。空は月が嫌と言うほど明るい。いっそ月へまで飛んでいけそうだ。
強い衝撃波が後ろから迫ってきて、天田と一緒に思わず有里達を振り返る。ニュクス・アバターが黒い翼を動かした事による衝撃波だったようで、山岸が何かを叫んでいた。
力になれるかどうかは分からずとも、今すぐ加勢に行けたらともどかしく思う。こんなシャドウの群れなど気にせず、望月の顔をしたあのニュクス・アバターを一度でも殴りつける事が出来たら。
左手で指を鳴らす。取り出した召喚器の銃身をその指先へ灯る炎でなぞり、願いを掛ける様に額へと押し当て眼を閉じた。
「アマネさん⁉ 今の炎は?」
「死にたくねぇっていう、覚悟だよ……――コロマルゥ!」
眼を開いて叫び銃をシャドウの群れへと向ける。コロマルがこちらの意を汲んでシャドウの群れから退いたのを確認し引き金を引いた。
本来では有り得ない、銃口からほとばしる火柱。
火炎放射器の様に周囲のシャドウへと襲い掛かっていく炎に天田が叫ぶが気にしてはいられない。
やがてガス欠のように炎が消えて、アマネは酷い疲労感に膝を突いた。
「あー……やっぱ腕輪無ぇと無理だぁ。イブリスも居ねぇしなぁ」
かつて暗殺部隊の頭領だった男。その男を真似してやってみたはいいが、死ぬ気の炎は威力も気力も足りない。むしろよく出来たほうだろう。
驚いている天田の肩を借りて立ち上がり、召喚器をしまってナイフを構えた。あれはもう使えない。使えたところで輪ゴム程度の威力の弾を一発、作れるかどうかだ。
元々アマネは幻覚が得意でもないし、他の者達に比べたら炎の使用頻度も低かった。死ぬ気の炎とも密接に関わる、トゥリニセッテの一つだとしても個の威力は関係ない。
ふと身体が温かく活力が溢れた感覚に隣を見れば、天田が召喚器を額へ押し付けていた。ペルソナの能力で回復してくれたらしい。
「なんかもうよく分かりませんけど、アマネさんばかり働かせませんよ」
「……ありがとう。でももう出来ねぇよアレ」
思わず呟いた名前を、望月の顔をした『ソレ』は否定して肯定する。滅びを伝える役目を担っていた彼はもうニュクスへ取り込まれ、ニュクスと区別すらつかない存在になったという。
それはもう、助け出すとか、これからも一緒に居るとか、そんな問題以前の話だ。ニュクスを倒したところで取り込まれている『彼』を救える可能性は低い。万が一彼を助けられたとしても彼の中へニュクスは残るのだろう。
助けたいと思っていても、甘く見すぎていたのかもしれない。
全ての命に約束されているもの。ニュクスとは、今の望月とはそういう存在だ。
流石のアマネだって、『大いなる全知の亜種』だって、『死』を救う方法なんて知らない。イゴールに言われた言葉が頭の片隅で繰り返される。彼はこの事を暗示していたのか。
仲間達が怖くとも戦うしかないと決意を口にする中で、見下ろすニュクス・アバターと目が合った気がした。漆黒よりも深淵よりも深い闇の色をしている目には、それでも望月の瞳を思い出す。
枯れかけた喉を鳴らして、叫ぶ。
「一秒でも一瞬でも長く生きる事が、俺の覚悟ですっ!」
ニュクス・アバターの黒い翼がはためいた。僅かにのけぞるように空を見上げたニュクス・アバターへ武器を構えた時、山岸が叫ぶ。
昇ってきた階段から、呼び集められたかのように何かを求めるように集まってくるシャドウの群れ。
逃げる道を消されて、ジンの手榴弾を一つくらい残しておけば良かったと思いながら、アマネはニュクス・アバターへ背を向ける。
「アマネ!」
「片付けたら加勢しますからぁ!」
有里の声へそう返して、階段を上がって来ようとするシャドウの群れへと駆け出した。隣を並走するようにコロマルが駆けてくる。
ニュクス・アバターは有里達へ任せることにした。本当は戦いたかったがシャドウの群れを放置も出来ない。履いてきた硬い靴底でシャドウを一匹踏み潰し消滅させる。
アマネの覚悟は『一秒でも長く、最初に死んだ“シルビ”よりも生きる事』だ。だからまだ、こんなところで終わるわけにはいかない。
一緒に『生きたい』と思ったのだから、尚更。
切り伏せたシャドウが硬く、ナイフへ皹が入る。舌打ちしてシャドウを蹴り飛ばし、予備として足首に隠し持っていたナイフを取り出して構えた。普段とは違い最終決戦なので備えておいたものだったが、まさかただのシャドウに対して取り出すことになるとは。
後ろでは有里達がニュクス・アバターと戦っている。苦戦しているようだがまだ加勢にはいけない。
「うわっ!」
「天田ぁ!」
シャドウにやられてよろけた天田の元へと駆け寄る。その手から槍を借りてシャドウを突き刺し、違うシャドウへとぶつけて消滅させた。
「キリが無ぇなぁ。ジンの手榴弾が欲しいよホント」
「そういうアマネさんは、まだ余裕そうですね」
「化け物の集団との戦いには慣れてんだぁ。でもそろそろ厳しいけどなぁ」
コロマルがペルソナを召喚している。空は月が嫌と言うほど明るい。いっそ月へまで飛んでいけそうだ。
強い衝撃波が後ろから迫ってきて、天田と一緒に思わず有里達を振り返る。ニュクス・アバターが黒い翼を動かした事による衝撃波だったようで、山岸が何かを叫んでいた。
力になれるかどうかは分からずとも、今すぐ加勢に行けたらともどかしく思う。こんなシャドウの群れなど気にせず、望月の顔をしたあのニュクス・アバターを一度でも殴りつける事が出来たら。
左手で指を鳴らす。取り出した召喚器の銃身をその指先へ灯る炎でなぞり、願いを掛ける様に額へと押し当て眼を閉じた。
「アマネさん⁉ 今の炎は?」
「死にたくねぇっていう、覚悟だよ……――コロマルゥ!」
眼を開いて叫び銃をシャドウの群れへと向ける。コロマルがこちらの意を汲んでシャドウの群れから退いたのを確認し引き金を引いた。
本来では有り得ない、銃口からほとばしる火柱。
火炎放射器の様に周囲のシャドウへと襲い掛かっていく炎に天田が叫ぶが気にしてはいられない。
やがてガス欠のように炎が消えて、アマネは酷い疲労感に膝を突いた。
「あー……やっぱ腕輪無ぇと無理だぁ。イブリスも居ねぇしなぁ」
かつて暗殺部隊の頭領だった男。その男を真似してやってみたはいいが、死ぬ気の炎は威力も気力も足りない。むしろよく出来たほうだろう。
驚いている天田の肩を借りて立ち上がり、召喚器をしまってナイフを構えた。あれはもう使えない。使えたところで輪ゴム程度の威力の弾を一発、作れるかどうかだ。
元々アマネは幻覚が得意でもないし、他の者達に比べたら炎の使用頻度も低かった。死ぬ気の炎とも密接に関わる、トゥリニセッテの一つだとしても個の威力は関係ない。
ふと身体が温かく活力が溢れた感覚に隣を見れば、天田が召喚器を額へ押し付けていた。ペルソナの能力で回復してくれたらしい。
「なんかもうよく分かりませんけど、アマネさんばかり働かせませんよ」
「……ありがとう。でももう出来ねぇよアレ」