ペルソナ3
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残るところあと二日、二十九日の夜。
今夜はタルタロスへ行かずにコロマルの散歩へ行くと言う有里へ誘われてアマネは寮を出た。アマネだけではなく寮生全員が一緒に来ていて、そういえば全員で散歩へ行くのはこれが初めてかもしれない。
散歩コースである長嶋神社へ行くまではリードを着けているコロマルの、そのリードの先を握った有里が少し笑っていることに気付いて声を掛ける。
「どうしました?」
「なんか、楽しくて」
それは全員で夜の散歩へ来られた事に対してなのか、それとも理由無くなのか。
神社へ着くと伊織が真っ先に遊具のジャングルジムへと走っていった。呆れたように岳羽が息を吐いて、美鶴と一緒にベンチへと向かっていく。真田は天田と一緒に滑り台へと向かって行っていた。
コロマルからリードを外した山岸が気になるのかジャングルジムへと近付いていくのに、アマネも一緒に行ってみる。実のところ、今までアマネにジャングルジムで遊んだ経験は無かった。
「これって、どうやって遊ぶモノなのかずっと気になってたんですよね」
潜ったり登ったりして遊んでいる伊織を眺めながら呟けば、山岸が見上げてくる。
「遊んだこと無いの?」
「近くに無かったんですよ。あっても見つけたのはそれなりに成長してからだったんでぇ」
「じゃあ遊んでみりゃいいじゃん。ほら風花も!」
伊織に誘われて、遊び方も分からないままとりあえず外側から登ってみた。山岸は内側へ入ってそこから登り始める。アマネが頂上へ到達した頃には山岸がジャングルジムの中で詰まっていた。
頂上に座ってそれを見下ろし、それから神社の境内を見回せば有里と目が合ったので手を振る。有里の傍ではアイギスが何故かコロマルに頭へ前脚を置かれていた。
何故か滑り台の上で服を脱ごうとしている真田を天田が慌てて止めている。滑り台はああやって遊ぶのかと思いつつ、アマネは空を見上げた。
少し雲が掛かっている冬の空気に、夜空が広がっている。明後日には満月だろう月のせいで星は殆ど見えないが、月のお陰で明るい。寝転がって眺められたら最高だろう。
これが、自分の見納めになってしまわないように。
これを、誰かの見納めにしてしまわないように。
「斑鳩、一度降りて来い。競争しよう」
滑り台からこちらへ来たらしい真田に呼ばれてジャングルジムを降りる。天田によって救出された山岸が審判で、誰が一番早く頂上へ辿り着けるからしい。
外側を登っていけばいいのではなく、内側に入らないと駄目だと前置きされて、色んな遊び方があるのだなと思う。アマネの最初の人生ではこんな遊具無かったし、二度目では山岸へ言った通りに近くに無くて、三度目も四度目も無かった。
体力と身長の問題か、一位は真田でアマネは二番目。三番目に天田で最下位は伊織だ。罰ゲームで一位だった真田にジュースを奢れと言われて落ち込んでいる。
それを見ていた岳羽達と同じく笑いながら、アマネはもう少し遊びたかったなと思った。
次の日。目を覚まして、起きて来る皆の朝食を作ってからアマネは自室へ戻った。今日は皆それぞれの行っておきたい場所へ行くようで、バタバタと寮を出て行くのが窺える。
アマネには行きたい場所なんて無かったから、少し考えてから荒垣の部屋へと侵入した。真田や天田が居れば何か言ってきたかもしれないが、二人が出かけたのを確認してから侵入するという徹底振りで。
相変わらず定期的に掃除しているので埃もあまり無い部屋で、遠慮なくベッドへ横たわる。それから美鶴から貰った音楽プレーヤーを起動し、荒垣のメモを取り出した。
耳に響く有里から貰った曲。
「……『最期の時まで』」
最期の時まで、諦めない。
何を。
生きる事を?
ニュクスと戦うことを?
望月を探す事を?
そのどれもが正しいようで、どれもが間違っている気がするのは未だにイゴールへ言われた言葉が引っかかっているからだろう。彼も好き勝手言いやがってと少し的外れな事を思った。
頑張るしかないのだ。頑張って考えて、頑張って考えて、結論が出てもまだその先を考えて、そうしていかないと自分は生きていけないと思う。生まれた意味は無くても生きた意味や生きる意味は考えなければならないし、それを決めるのは自分以外の何者でもないのだから。
左手を上へ伸ばして指を鳴らす。腕輪の無い今は灯すのが精一杯な、橙色の死ぬ気の炎を指先へ灯し、それを手の平で包み込むように握り締める。
「俺の『覚悟』は、一秒でも長く生きる事」
もう一度指を鳴らし、今度は黒い炎を灯した。
「俺の『決意』は、――……決意、は」
チリチリと燃えていた黒い炎が消える。そのまま腕を下ろしてアマネは目を閉じた。英歌詞の歌が延々とリピートされている。
決意は、今は何も思いつかない。
寝るなら自室に戻ったほうがいいのに、と思いながらも、アマネはそのまま目を閉じた。
今夜はタルタロスへ行かずにコロマルの散歩へ行くと言う有里へ誘われてアマネは寮を出た。アマネだけではなく寮生全員が一緒に来ていて、そういえば全員で散歩へ行くのはこれが初めてかもしれない。
散歩コースである長嶋神社へ行くまではリードを着けているコロマルの、そのリードの先を握った有里が少し笑っていることに気付いて声を掛ける。
「どうしました?」
「なんか、楽しくて」
それは全員で夜の散歩へ来られた事に対してなのか、それとも理由無くなのか。
神社へ着くと伊織が真っ先に遊具のジャングルジムへと走っていった。呆れたように岳羽が息を吐いて、美鶴と一緒にベンチへと向かっていく。真田は天田と一緒に滑り台へと向かって行っていた。
コロマルからリードを外した山岸が気になるのかジャングルジムへと近付いていくのに、アマネも一緒に行ってみる。実のところ、今までアマネにジャングルジムで遊んだ経験は無かった。
「これって、どうやって遊ぶモノなのかずっと気になってたんですよね」
潜ったり登ったりして遊んでいる伊織を眺めながら呟けば、山岸が見上げてくる。
「遊んだこと無いの?」
「近くに無かったんですよ。あっても見つけたのはそれなりに成長してからだったんでぇ」
「じゃあ遊んでみりゃいいじゃん。ほら風花も!」
伊織に誘われて、遊び方も分からないままとりあえず外側から登ってみた。山岸は内側へ入ってそこから登り始める。アマネが頂上へ到達した頃には山岸がジャングルジムの中で詰まっていた。
頂上に座ってそれを見下ろし、それから神社の境内を見回せば有里と目が合ったので手を振る。有里の傍ではアイギスが何故かコロマルに頭へ前脚を置かれていた。
何故か滑り台の上で服を脱ごうとしている真田を天田が慌てて止めている。滑り台はああやって遊ぶのかと思いつつ、アマネは空を見上げた。
少し雲が掛かっている冬の空気に、夜空が広がっている。明後日には満月だろう月のせいで星は殆ど見えないが、月のお陰で明るい。寝転がって眺められたら最高だろう。
これが、自分の見納めになってしまわないように。
これを、誰かの見納めにしてしまわないように。
「斑鳩、一度降りて来い。競争しよう」
滑り台からこちらへ来たらしい真田に呼ばれてジャングルジムを降りる。天田によって救出された山岸が審判で、誰が一番早く頂上へ辿り着けるからしい。
外側を登っていけばいいのではなく、内側に入らないと駄目だと前置きされて、色んな遊び方があるのだなと思う。アマネの最初の人生ではこんな遊具無かったし、二度目では山岸へ言った通りに近くに無くて、三度目も四度目も無かった。
体力と身長の問題か、一位は真田でアマネは二番目。三番目に天田で最下位は伊織だ。罰ゲームで一位だった真田にジュースを奢れと言われて落ち込んでいる。
それを見ていた岳羽達と同じく笑いながら、アマネはもう少し遊びたかったなと思った。
次の日。目を覚まして、起きて来る皆の朝食を作ってからアマネは自室へ戻った。今日は皆それぞれの行っておきたい場所へ行くようで、バタバタと寮を出て行くのが窺える。
アマネには行きたい場所なんて無かったから、少し考えてから荒垣の部屋へと侵入した。真田や天田が居れば何か言ってきたかもしれないが、二人が出かけたのを確認してから侵入するという徹底振りで。
相変わらず定期的に掃除しているので埃もあまり無い部屋で、遠慮なくベッドへ横たわる。それから美鶴から貰った音楽プレーヤーを起動し、荒垣のメモを取り出した。
耳に響く有里から貰った曲。
「……『最期の時まで』」
最期の時まで、諦めない。
何を。
生きる事を?
ニュクスと戦うことを?
望月を探す事を?
そのどれもが正しいようで、どれもが間違っている気がするのは未だにイゴールへ言われた言葉が引っかかっているからだろう。彼も好き勝手言いやがってと少し的外れな事を思った。
頑張るしかないのだ。頑張って考えて、頑張って考えて、結論が出てもまだその先を考えて、そうしていかないと自分は生きていけないと思う。生まれた意味は無くても生きた意味や生きる意味は考えなければならないし、それを決めるのは自分以外の何者でもないのだから。
左手を上へ伸ばして指を鳴らす。腕輪の無い今は灯すのが精一杯な、橙色の死ぬ気の炎を指先へ灯し、それを手の平で包み込むように握り締める。
「俺の『覚悟』は、一秒でも長く生きる事」
もう一度指を鳴らし、今度は黒い炎を灯した。
「俺の『決意』は、――……決意、は」
チリチリと燃えていた黒い炎が消える。そのまま腕を下ろしてアマネは目を閉じた。英歌詞の歌が延々とリピートされている。
決意は、今は何も思いつかない。
寝るなら自室に戻ったほうがいいのに、と思いながらも、アマネはそのまま目を閉じた。