ペルソナ3
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目を覚ましても、左手首に懐かしい感触があるわけも無く、ただ漠然とした日常が始まっている。
いつものように学校へ行き、いつものように授業を受けて、いつものように佐藤と話して。
いつものように買い物をして寮へ帰ろうとして、アマネはポロニアンモールにあるベルベットルームのことを思い出した。
そういえば最近は殆ど行っていない。たまに作ったお菓子や料理は持っていっても、話はあまりしていなかったと思い出す。
アマネの足は、無意識にその扉を潜っていた。
「ようこそ、ベルベットルームへ」
相変わらずのイゴールとエリザベスの姿。まるで時間さえ止まっているかのような空間だが、実際はどうなっているのか。
イゴールの向かいの椅子へ腰を降ろせば、何処からとも無く紅茶が差し出される。
「……綾時さんがさ、『死の宣告者』なんだとぉ」
「それはそれは、恐れ多き事でございますな」
「その話を聞いてる時に、あの人、『君たちは』って言ったんだぁ。そんな言い方じゃ、あの場に居た全員が該当する訳でもねぇのかなぁって思った」
昨夜、望月が与えた選択肢の一つ。望月を殺して得る記憶の忘却と僅かに伸びるだろう猶予の話をしていた時、望月は『君たちは苦しまずに済む』と言った。
その君たち『は』とは、どういうことなのか。
「……俺も、忘れられねぇんじゃねぇの?」
イゴールが目を細める。
「あの人が俺と親しくしてくれたのは、俺も『母なるものに関わる存在だった』かららしい。となると俺に思い当たる事ってのは『亜種』のことしかねぇんだぁ。……もし俺の考えが合ってるなら、綾時さんが『人間寄り』のシャドウなら、俺は『シャドウ寄り』の人間なのかぁ?」
「……はてさて、私にはお答え辛い質問でございます」
鼻へカップをぶつけないように、器用に紅茶を飲んだイゴールは言葉を続けた。
「ですが、貴方は私の客人と同じく、特別な存在である事には相違ありませんでしょう」
「……前に、アンタはヒトよりシャドウやペルソナに近けぇのかと尋ねた事がある。アンタは『そうでもあり、そうではなくもある』と答えた」
「左様でございます」
「じゃあアンタは、俺と綾時さん、どっちに近けぇんだぁ?」
飲み干した紅茶のカップをソーサーへ戻して尋ねる。イゴールは笑みを浮かべるだけで答えなかった。
アマネは溜め息を一つ吐いて背凭れに体重を預け、足を組む。数秒目を逸らしただけだったと思うのに、カップの中には再び琥珀色の液体が注がれていた。
「……俺はさぁ」
「なんでしょう」
「『犠牲』って言葉が嫌いで、誰かを犠牲にするくらいなら俺がなるといつも思ってる」
「左様でございますか」
いつものように学校へ行き、いつものように授業を受けて、いつものように佐藤と話して。
いつものように買い物をして寮へ帰ろうとして、アマネはポロニアンモールにあるベルベットルームのことを思い出した。
そういえば最近は殆ど行っていない。たまに作ったお菓子や料理は持っていっても、話はあまりしていなかったと思い出す。
アマネの足は、無意識にその扉を潜っていた。
「ようこそ、ベルベットルームへ」
相変わらずのイゴールとエリザベスの姿。まるで時間さえ止まっているかのような空間だが、実際はどうなっているのか。
イゴールの向かいの椅子へ腰を降ろせば、何処からとも無く紅茶が差し出される。
「……綾時さんがさ、『死の宣告者』なんだとぉ」
「それはそれは、恐れ多き事でございますな」
「その話を聞いてる時に、あの人、『君たちは』って言ったんだぁ。そんな言い方じゃ、あの場に居た全員が該当する訳でもねぇのかなぁって思った」
昨夜、望月が与えた選択肢の一つ。望月を殺して得る記憶の忘却と僅かに伸びるだろう猶予の話をしていた時、望月は『君たちは苦しまずに済む』と言った。
その君たち『は』とは、どういうことなのか。
「……俺も、忘れられねぇんじゃねぇの?」
イゴールが目を細める。
「あの人が俺と親しくしてくれたのは、俺も『母なるものに関わる存在だった』かららしい。となると俺に思い当たる事ってのは『亜種』のことしかねぇんだぁ。……もし俺の考えが合ってるなら、綾時さんが『人間寄り』のシャドウなら、俺は『シャドウ寄り』の人間なのかぁ?」
「……はてさて、私にはお答え辛い質問でございます」
鼻へカップをぶつけないように、器用に紅茶を飲んだイゴールは言葉を続けた。
「ですが、貴方は私の客人と同じく、特別な存在である事には相違ありませんでしょう」
「……前に、アンタはヒトよりシャドウやペルソナに近けぇのかと尋ねた事がある。アンタは『そうでもあり、そうではなくもある』と答えた」
「左様でございます」
「じゃあアンタは、俺と綾時さん、どっちに近けぇんだぁ?」
飲み干した紅茶のカップをソーサーへ戻して尋ねる。イゴールは笑みを浮かべるだけで答えなかった。
アマネは溜め息を一つ吐いて背凭れに体重を預け、足を組む。数秒目を逸らしただけだったと思うのに、カップの中には再び琥珀色の液体が注がれていた。
「……俺はさぁ」
「なんでしょう」
「『犠牲』って言葉が嫌いで、誰かを犠牲にするくらいなら俺がなるといつも思ってる」
「左様でございますか」