ペルソナ3
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佐藤との試験前勉強をパスさせてもらい、二年の教室に行って尋ねると今日は学校に望月は来ていなかったらしい。クラスメイトである二年生達は、風邪を引いたのだろうとか登校中に可愛い女の子を見つけてそのまま追いかけて行ったのだろうとか適当なことを言っていた。
一度寮に帰って鞄を置き、私服に着替えてからもう一度町へ出る。望月の住んでいる場所を知っているわけではないので、彼が居そうな場所を予想しては探してみた。
クラブも路地裏も探したものの、闇雲過ぎて望月の姿が見つかる気はしない。
気付けば空に月が浮いている。ふと立ち止まって見上げた先にある月は、満月になる直前の、殆ど丸に近いソレだった。
月明かりに照らされて海が濃紺色に煌めいている。
「もう夜も遅いよ。アマネくん」
声がして振り返った先に、黄色いマフラーがいつもの通り揺れていた。
貴方を探していたんですと、声を掛けることは叶わない。ただ望月は少し離れた場所から泣きそうな顔をしてアマネを見ていた。
「……綾時さん」
辛うじて出た声で望月のことを呼んでも、それが届いたようには思えない。いつものそれと比べれば自分でもおかしく思えるほど小さな声。
腹に力を込める様に息を吸って、アマネは望月を見た。
「今日、学校休んだそうですね。風邪でも引いたんですか?」
「……ううん。風邪は引かないよ」
「寒くないですか?」
「寒くないよ」
「……学校、どうして休んだんですか?」
「順平とか、心配してくれてた?」
「俺は心配しました。寒くないんですか?」
「寒くないよ。アマネ君は寒い?」
「俺はホッカイロも持ってますから。綾時さん、本当に寒くないんですか?」
「うん……寒くない」
「なんで……あんたの息は白くねぇんだよ」
綾時はうっすらと微笑む。アマネは耐え切れなくなって足を踏み出した。
「駄目だよ。来ないで」
厳しい口調。アマネの足を止めるには弱いものだったが、アマネは近付くのを止める。
「今日はもう、帰りなよ。皆が心配するから」
遠くで車のクラクションが響くのが聞こえた。波の音。
脇の車道を車が通り、そのライトで眼が眩んで視界が一瞬利かなくなる。瞬きをして見た先にはもう、望月はいなかった。
ああそういうことかと、アマネは冷たい空気に冷やされた頭で考える。ただその先のことを考えるのは嫌になって、ポケットに入れてきたホッカイロを握り締めて歩き出した。
頭上では満月になる前の月が浮いている。けれどもそれを見上げる気にはもうなれない。
今夜は久しぶりに、イブリスを召喚しようと思った。
一度寮に帰って鞄を置き、私服に着替えてからもう一度町へ出る。望月の住んでいる場所を知っているわけではないので、彼が居そうな場所を予想しては探してみた。
クラブも路地裏も探したものの、闇雲過ぎて望月の姿が見つかる気はしない。
気付けば空に月が浮いている。ふと立ち止まって見上げた先にある月は、満月になる直前の、殆ど丸に近いソレだった。
月明かりに照らされて海が濃紺色に煌めいている。
「もう夜も遅いよ。アマネくん」
声がして振り返った先に、黄色いマフラーがいつもの通り揺れていた。
貴方を探していたんですと、声を掛けることは叶わない。ただ望月は少し離れた場所から泣きそうな顔をしてアマネを見ていた。
「……綾時さん」
辛うじて出た声で望月のことを呼んでも、それが届いたようには思えない。いつものそれと比べれば自分でもおかしく思えるほど小さな声。
腹に力を込める様に息を吸って、アマネは望月を見た。
「今日、学校休んだそうですね。風邪でも引いたんですか?」
「……ううん。風邪は引かないよ」
「寒くないですか?」
「寒くないよ」
「……学校、どうして休んだんですか?」
「順平とか、心配してくれてた?」
「俺は心配しました。寒くないんですか?」
「寒くないよ。アマネ君は寒い?」
「俺はホッカイロも持ってますから。綾時さん、本当に寒くないんですか?」
「うん……寒くない」
「なんで……あんたの息は白くねぇんだよ」
綾時はうっすらと微笑む。アマネは耐え切れなくなって足を踏み出した。
「駄目だよ。来ないで」
厳しい口調。アマネの足を止めるには弱いものだったが、アマネは近付くのを止める。
「今日はもう、帰りなよ。皆が心配するから」
遠くで車のクラクションが響くのが聞こえた。波の音。
脇の車道を車が通り、そのライトで眼が眩んで視界が一瞬利かなくなる。瞬きをして見た先にはもう、望月はいなかった。
ああそういうことかと、アマネは冷たい空気に冷やされた頭で考える。ただその先のことを考えるのは嫌になって、ポケットに入れてきたホッカイロを握り締めて歩き出した。
頭上では満月になる前の月が浮いている。けれどもそれを見上げる気にはもうなれない。
今夜は久しぶりに、イブリスを召喚しようと思った。