ペルソナ3
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「せっかくなので先輩達がいると出来ねぇ事をしようと思います!」
「例えば?」
「泡風呂」
ラウンジに居た天田の前で、入浴剤を掲げてそう宣言し浴場へ向かって走り出す。
後ろから天田が追いかけてくるが、高校生と小学生の脚力の差は当然越えられるものではなく、天田がアマネの背中へタックルしてきた時には既に湯船へ入浴剤が投下済みだった。
「ああー……」
「本当はもっと小さい湯船でやるべきだと思うけど、デカイ湯船でやるからこそと俺は思うんだぁ」
湯が張られていくのにしたがって盛り上がる泡。匂いはあまりしないものを選んだので、アマネと天田を追いかけてきたらしいコロマルでも平気そうだった。
湯船の縁へしゃがんだ天田が、手を伸ばして出来たばかりの泡を掬っている。アマネの暴挙を止める為に追いかけてきたはずだが、既に投下されてしまった後だからか天田は諦めたらしい。手に付いた泡を払って立ち上がり、仕方がないなと言わんばかりに溜め息を吐いてアマネを振り返った。
「これ別に皆さんがいても出来るんじゃないですか?」
「真田先輩は怒りそうだし、男が泡風呂に入ってる情景がそもそもムサイ」
「ボクたちも男ですよ」
「じゃあ天田は泡風呂体験しねぇ?」
「……入りますけど」
恥ずかしげにそう言った天田の頭を撫でる。実のところ一日だけなら良いと真田に許可は取ってあった。その代わり後始末をしっかりすることとも言われているが、その辺はアマネのことなのでぬかりは無い。
むしろ大掃除前のお遊びだ。
京風の味付けにした夕食を二人でとって、いつもより早めの時間に風呂場へ向かう。大浴場なので普段も一緒のタイミングで入浴することだってあるし、同性なので恥ずかしいとも思わない。
ついでなので、普段は女子寮生に洗ってもらっているコロマルも同じタイミングで洗ってしまう。自分で身体を震わせて全身の水気を払い、脱衣場へと出て行くコロマルを見送ってアマネも湯船へ入れば、泡で遊んでいた天田がそろそろと近付いてきた。
「あの、傷見せてもらってもいいですか?」
「ん? どうぞぉ」
風呂へ入る為に包帯も外している肩の銃痕。子供に見せるにはグロテスクかも知れないが、本人が見たがったのでその意思を尊重する。
「うわっ……痛そう」
「触ってもいいぜぇ。もう痛みはねぇし」
「……まだ柔らかいんですね」
指先でペタペタと触る感触がこそばゆい。
天田も目の前で荒垣が撃たれるところを見たのだ。アマネの銃痕にも少なからず思うところがあるのだろう。
けれども天田はそれを口にしない。きっと今後も一生口にすることはないとアマネは思う。
「……風呂出たら先輩からメール来てっかなぁ」
「どうでしょう。寮のことなんて忘れてるかもですよ」
天田の言う通りなのか、夜になってもアマネの携帯には誰からも連絡は来ていなかった。それだけ京都旅行が楽しいのだろう。
便りが無いのは良い便りとも言うし、アマネからわざわざ連絡するような報告も無かった。
金曜日になって、京都から二三年が帰ってくる。何事も無く無事に帰ってこられたようだが、どうも女性陣の男性陣へ対する視線がキツイ。
「……何があったと思う?」
「……大体予想は付きますよね」
天田と一緒になって少し呆れた。
旅行帰りで洗濯物が多いのだからと、荷解きをしていた真田と伊織に夜のうちに洗濯してしまうように言ってラウンジへ向かうと、有里が天田へ土産らしい箱を渡している。箱は生八つ橋のものらしい。
「アマネさん、ご馳走になりましょうよ」
「あー、じゃあ日本茶淹れてくるぜぇ」
早速食べるつもりらしい天田にそう言ってキッチンへ向かおうとすると、有里に腕を掴まれた。
「はい」
「……個別だったんですか?」
「うん。アマネにはこれ」
渡されたのは小袋へ入っている金平糖だ。着色料で色付けされただけだろうそれも『お土産』として貰えば嬉しいもので、素直にお礼を言えば微笑んで頭を撫でられた。
コロマルには京都限定らしいドッグフードを買ってきたらしく、それをコロマルへ渡して有里は片付けに戻るのか階段を上がっていく。入れ替わりにやっぱり土産物らしい箱を抱えて山岸が降りてくるのを見てから、アマネはキッチンへ向かった。
追加でもお茶を淹れられる様にしておいて、天田と山岸、それから自分の分のお茶を用意してラウンジへ戻る。
案の定というべきか、生八つ橋の他に清水寺のイラストが描かれたパッケージの箱が増えていた。中身は饅頭のようだ。
「山岸先輩からもですか? 合同で一つでも良かったでしょうに」
「何かどれも美味しそうだったし、どうせならと思って。ゆかりちゃんも買ってたから後で持ってくるかも。……それ、有里君から?」
アマネの金平糖に向けられた視線は、何処か楽しげで。
「有里君ね、アマネ君のお土産はどれにするが凄い悩んでたんだよ。一度決めても他のお店で良いものがあると立ち止まって悩んでたくらい」
「それは……」
そこまで悩んでもらわずともと思わなくも無かったが、多分有里としてはアマネがガッカリするような土産は嫌だと考えたのだろう訳で。
思わず金平糖を見て無言になるアマネに、山岸は今度こそ声を出して笑った。天田まで少しニヤニヤしているし、修学旅行から戻ってきて全員揃ったばかりだというのに災難である。
気まずいといえば気まずいが、それよりもなんというか、正直気恥ずかしいのだ。
「斑鳩、天田。私からの土産なんだが……何かあったのか?」
ラウンジに来た美鶴がビニール袋を持って三人に近付いてくる。その場の雰囲気へ首を傾げる桐条には悪いが、アマネはキッチンへ逃げる事にした。
「例えば?」
「泡風呂」
ラウンジに居た天田の前で、入浴剤を掲げてそう宣言し浴場へ向かって走り出す。
後ろから天田が追いかけてくるが、高校生と小学生の脚力の差は当然越えられるものではなく、天田がアマネの背中へタックルしてきた時には既に湯船へ入浴剤が投下済みだった。
「ああー……」
「本当はもっと小さい湯船でやるべきだと思うけど、デカイ湯船でやるからこそと俺は思うんだぁ」
湯が張られていくのにしたがって盛り上がる泡。匂いはあまりしないものを選んだので、アマネと天田を追いかけてきたらしいコロマルでも平気そうだった。
湯船の縁へしゃがんだ天田が、手を伸ばして出来たばかりの泡を掬っている。アマネの暴挙を止める為に追いかけてきたはずだが、既に投下されてしまった後だからか天田は諦めたらしい。手に付いた泡を払って立ち上がり、仕方がないなと言わんばかりに溜め息を吐いてアマネを振り返った。
「これ別に皆さんがいても出来るんじゃないですか?」
「真田先輩は怒りそうだし、男が泡風呂に入ってる情景がそもそもムサイ」
「ボクたちも男ですよ」
「じゃあ天田は泡風呂体験しねぇ?」
「……入りますけど」
恥ずかしげにそう言った天田の頭を撫でる。実のところ一日だけなら良いと真田に許可は取ってあった。その代わり後始末をしっかりすることとも言われているが、その辺はアマネのことなのでぬかりは無い。
むしろ大掃除前のお遊びだ。
京風の味付けにした夕食を二人でとって、いつもより早めの時間に風呂場へ向かう。大浴場なので普段も一緒のタイミングで入浴することだってあるし、同性なので恥ずかしいとも思わない。
ついでなので、普段は女子寮生に洗ってもらっているコロマルも同じタイミングで洗ってしまう。自分で身体を震わせて全身の水気を払い、脱衣場へと出て行くコロマルを見送ってアマネも湯船へ入れば、泡で遊んでいた天田がそろそろと近付いてきた。
「あの、傷見せてもらってもいいですか?」
「ん? どうぞぉ」
風呂へ入る為に包帯も外している肩の銃痕。子供に見せるにはグロテスクかも知れないが、本人が見たがったのでその意思を尊重する。
「うわっ……痛そう」
「触ってもいいぜぇ。もう痛みはねぇし」
「……まだ柔らかいんですね」
指先でペタペタと触る感触がこそばゆい。
天田も目の前で荒垣が撃たれるところを見たのだ。アマネの銃痕にも少なからず思うところがあるのだろう。
けれども天田はそれを口にしない。きっと今後も一生口にすることはないとアマネは思う。
「……風呂出たら先輩からメール来てっかなぁ」
「どうでしょう。寮のことなんて忘れてるかもですよ」
天田の言う通りなのか、夜になってもアマネの携帯には誰からも連絡は来ていなかった。それだけ京都旅行が楽しいのだろう。
便りが無いのは良い便りとも言うし、アマネからわざわざ連絡するような報告も無かった。
金曜日になって、京都から二三年が帰ってくる。何事も無く無事に帰ってこられたようだが、どうも女性陣の男性陣へ対する視線がキツイ。
「……何があったと思う?」
「……大体予想は付きますよね」
天田と一緒になって少し呆れた。
旅行帰りで洗濯物が多いのだからと、荷解きをしていた真田と伊織に夜のうちに洗濯してしまうように言ってラウンジへ向かうと、有里が天田へ土産らしい箱を渡している。箱は生八つ橋のものらしい。
「アマネさん、ご馳走になりましょうよ」
「あー、じゃあ日本茶淹れてくるぜぇ」
早速食べるつもりらしい天田にそう言ってキッチンへ向かおうとすると、有里に腕を掴まれた。
「はい」
「……個別だったんですか?」
「うん。アマネにはこれ」
渡されたのは小袋へ入っている金平糖だ。着色料で色付けされただけだろうそれも『お土産』として貰えば嬉しいもので、素直にお礼を言えば微笑んで頭を撫でられた。
コロマルには京都限定らしいドッグフードを買ってきたらしく、それをコロマルへ渡して有里は片付けに戻るのか階段を上がっていく。入れ替わりにやっぱり土産物らしい箱を抱えて山岸が降りてくるのを見てから、アマネはキッチンへ向かった。
追加でもお茶を淹れられる様にしておいて、天田と山岸、それから自分の分のお茶を用意してラウンジへ戻る。
案の定というべきか、生八つ橋の他に清水寺のイラストが描かれたパッケージの箱が増えていた。中身は饅頭のようだ。
「山岸先輩からもですか? 合同で一つでも良かったでしょうに」
「何かどれも美味しそうだったし、どうせならと思って。ゆかりちゃんも買ってたから後で持ってくるかも。……それ、有里君から?」
アマネの金平糖に向けられた視線は、何処か楽しげで。
「有里君ね、アマネ君のお土産はどれにするが凄い悩んでたんだよ。一度決めても他のお店で良いものがあると立ち止まって悩んでたくらい」
「それは……」
そこまで悩んでもらわずともと思わなくも無かったが、多分有里としてはアマネがガッカリするような土産は嫌だと考えたのだろう訳で。
思わず金平糖を見て無言になるアマネに、山岸は今度こそ声を出して笑った。天田まで少しニヤニヤしているし、修学旅行から戻ってきて全員揃ったばかりだというのに災難である。
気まずいといえば気まずいが、それよりもなんというか、正直気恥ずかしいのだ。
「斑鳩、天田。私からの土産なんだが……何かあったのか?」
ラウンジに来た美鶴がビニール袋を持って三人に近付いてくる。その場の雰囲気へ首を傾げる桐条には悪いが、アマネはキッチンへ逃げる事にした。