後日談2
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ラウンジへ戻ってくるとラウンジの半分がまるで廃墟のように倒壊していた。瓦礫は無く、破片は崩れたことで出来た穴へと落ちていく。
「時の狭間の崩壊が進んでますね」
「ここも元から安全な場所ではなかったと言うことか」
「外は平気なのか?」
真田と桐条へ訪ねられてメティスが頷く。寮の崩壊はそうしている間にも緩やかに進んでいて、くずくずと床や壁が消えた向こうは何もない空間が広がっているのが見えた。
アマネが一度目に経験した時の狭間の事は、この頃になると実のところ殆ど覚えていない。あの時アマネが覚えているのはメティスが泣いていたことと、アマネのシャドウだったシルビが悲しそうな顔をしていたことだけである。周りを見る余裕が無かったと言っても過言ではない。
時は止まらないものだ。明日は訪れる。たとえどんなに過去を想ったとしても。
「アマネチャン」
「……大丈夫」
隣にいた白蘭が小声で名前を呼ぶのにそう返す。実際、もう『大丈夫』であることに違いはなかった。
彼女は“助ける必要がない”。兄さんは“まだ”助けられない。けれども、ほんの少しだけであってもアマネはちゃんと前へ進められている。
天田とコロマルがエントランスへと走っていく。それを追いかけるように荒垣や真田、桐条や望月もアマネを追い抜かしていった。
皆の後ろ姿を眺めていたアマネのフードの中から、エレボスが出たがって暴れるのに白蘭が手を伸ばしてエレボスを床へと降ろす。エレボスはそのまま時の狭間へ続く階段の傍へ立ち止まっていたメティスへと近付いていった。
しゃがんだメティスがエレボスを撫でる。何か言いたげな顔をしてアマネを見た白蘭をエントランスへ向けて押しやり、アマネはメティスへと歩み寄った。
「――メティス」
「もう、貴方にこの場所はいりません。貴方にはちゃんと貴方を受け入れてくれる人達が居ることを忘れないでください。貴方を引き留める糸はもう細くない」
エレボスを撫でながらメティスが言う。
「少なくとも、私はずっと貴方と姉さんのことを想ってます。貴方の『命の答え』って、そういうことですよ」
「命の答え……」
メティスが顔を上げて微笑んだ。背後から白蘭がアマネを呼ぶ声がする。
振り返れば開け放たれて白い光の漏れる扉の前から白蘭達がアマネを待っていた。エレボスを拾おうと視線を戻すと、エレボスはメティスから何かを受け取って飲み込んだところだったようで。
何を渡したのかと訪ねる前にメティスがエレボスを抱いて立ち上がり、アマネへ向けて差し出してくる。アマネは何も言えないままエレボスを受け取った。
メティスが笑みを深くする。それをギリギリまで見ていたくて何度も振り返りながら、白蘭達がいる扉へと向かう。抱いたエレボスがアマネの肩越しに手を振っている。
『――……アマネ。大好きだよ』
最期に聞いた、あの人の言葉が。
「時の狭間の崩壊が進んでますね」
「ここも元から安全な場所ではなかったと言うことか」
「外は平気なのか?」
真田と桐条へ訪ねられてメティスが頷く。寮の崩壊はそうしている間にも緩やかに進んでいて、くずくずと床や壁が消えた向こうは何もない空間が広がっているのが見えた。
アマネが一度目に経験した時の狭間の事は、この頃になると実のところ殆ど覚えていない。あの時アマネが覚えているのはメティスが泣いていたことと、アマネのシャドウだったシルビが悲しそうな顔をしていたことだけである。周りを見る余裕が無かったと言っても過言ではない。
時は止まらないものだ。明日は訪れる。たとえどんなに過去を想ったとしても。
「アマネチャン」
「……大丈夫」
隣にいた白蘭が小声で名前を呼ぶのにそう返す。実際、もう『大丈夫』であることに違いはなかった。
彼女は“助ける必要がない”。兄さんは“まだ”助けられない。けれども、ほんの少しだけであってもアマネはちゃんと前へ進められている。
天田とコロマルがエントランスへと走っていく。それを追いかけるように荒垣や真田、桐条や望月もアマネを追い抜かしていった。
皆の後ろ姿を眺めていたアマネのフードの中から、エレボスが出たがって暴れるのに白蘭が手を伸ばしてエレボスを床へと降ろす。エレボスはそのまま時の狭間へ続く階段の傍へ立ち止まっていたメティスへと近付いていった。
しゃがんだメティスがエレボスを撫でる。何か言いたげな顔をしてアマネを見た白蘭をエントランスへ向けて押しやり、アマネはメティスへと歩み寄った。
「――メティス」
「もう、貴方にこの場所はいりません。貴方にはちゃんと貴方を受け入れてくれる人達が居ることを忘れないでください。貴方を引き留める糸はもう細くない」
エレボスを撫でながらメティスが言う。
「少なくとも、私はずっと貴方と姉さんのことを想ってます。貴方の『命の答え』って、そういうことですよ」
「命の答え……」
メティスが顔を上げて微笑んだ。背後から白蘭がアマネを呼ぶ声がする。
振り返れば開け放たれて白い光の漏れる扉の前から白蘭達がアマネを待っていた。エレボスを拾おうと視線を戻すと、エレボスはメティスから何かを受け取って飲み込んだところだったようで。
何を渡したのかと訪ねる前にメティスがエレボスを抱いて立ち上がり、アマネへ向けて差し出してくる。アマネは何も言えないままエレボスを受け取った。
メティスが笑みを深くする。それをギリギリまで見ていたくて何度も振り返りながら、白蘭達がいる扉へと向かう。抱いたエレボスがアマネの肩越しに手を振っている。
『――……アマネ。大好きだよ』
最期に聞いた、あの人の言葉が。