後日談2
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『アマネ』は強かった。ニュクスアバターなんて目ではないくらいに強くて、けれども彼ではニュクスの封印になれなかったことに、アイギスは個の力とは何だろうと思う。
彼女が導き出した命の答え。アマネの『兄』が導き出した命の答え。その結果がニュクスを“守る”為の封印だとして、では彼がその答えを得た故に悲しむことになった『アマネ』の命の答えは、また別のものなのだろう。
アイギスがいつか得るだろう“命の答え”は、有里とも『アマネ』とも違う気がした。人の命の答えがそれぞれ違うとして、『アマネ』の命の答えは『何』なのか。
アイギスは『アマネ』を助けたい。助けたくてここへまで来た。けれどもそれは一度忘れてしまった彼のことを思い出したからだ。
白蘭に教えてもらっただけの時点では、彼の事を助けようとは思っていなかったし考えもしなかった。
けれど彼は違う。彼にとって『二度目』の今のアイギス達は本来、彼とは何の関係もなかった。同じ見た目と同じ思考を持っているだけの別人とも言えただろう。
それでも彼はアイギス達の為に奔走した。奔走し続けている。そこまで必死になれるのはどうしてか、なんて理由は白蘭が教えてくれた。
彼の『命の答え』を、アイギスはもう分かっている気がする。
「――っ!」
鍔競り合いに押し負けた荒垣がよろけるのに、アマネが前のめって足を踏み出す。その隙を狙ってコロマルが切りかかろうとするが、アマネは僅かに足へ力を込めてその場で飛び上がった。
同時に床へ大剣を突き刺し、それを支えに飛び上がったアマネがその大剣から手を離しながら柄を蹴って宙返りをしつつ距離を取る。武器が手元になくなったというのに、アマネは臆することなくアイギス達を見つめていた。
そのアマネへ向けて、アイギスは銃口でもある指先をまっすぐに伸ばす。
メティスが泣いている。望月がそんなメティスの腕を掴んで飛び込んでいかないように抑えてくれていた。白蘭がアマネへと距離を詰めて手刀を叩き込もうとするのに、アマネは顔色一つ変えずにそれを捌く。
白蘭の蹴りがアマネの腹へと決まった。カクン、と力の抜けた膝にけれどもアマネは地面へ手を突いて白蘭の足を蹴り払って立ち上がり、尻餅を突いた白蘭へ向けて踵落としを落とそうと。
した瞬間にアイギスは引き金を引いた。アマネが、アイギスを見て僅かに笑った。
「――だめぇえええええ!」
メティスが叫ぶ。
目を開いたアマネとアイギスの間にエレボスが割り込んだ。
飛び込んだエレボスのわき腹にアイギスの放った銃弾が直撃し、エレボスの身体が僅かに衝撃で跳ねる。それからそのまま地面へ落ちたエレボスに、呆然と堕ちる様を眺めていたアマネが駆け寄った。
「この馬鹿っ! お前が出てくる必要は無かっただろぉ!」
撃たれた衝撃にか痙攣を起こしているエレボスを抱き上げアマネが叫ぶ。呼びかけられてもエレボスはぐたりとしていて動く様子はなく、アイギス達が思わず駆け寄ってもアマネはアイギス達に意識を向けることなくエレボスへと呼びかけ続けていた。
なんだか不思議な光景のようにも思えたのは、エレボスがアマネのシャドウで、シャドウが本来は無意識に抑圧された精神の具現化したもので、本来受け入れ難いモノである筈のそれを、アマネがこんなにも必死に大切にしているからか。
このエレボスはアマネの抑圧された『何か』で、アマネ本人はそのエレボスの正体を知らない。だからエレボスが彼を助けたことは信じられなかった。
エレボスが、シャドウが死なせまいとした。抑圧された無意識であっても彼もアマネの心の一つだから。
だとすれば、アマネは。
「――アマネチャン」
落ち着き払った声で白蘭がアマネへと呼びかける。肩をびくつかせたアマネがエレボスから白蘭へと顔を向けた。
「落ち着いて。この子は大丈夫だから」
「だ、いじょうぶって、なんでっ」
「何でアイギスチャンの弾、避けようとしなかったの」
「それは、死のうと思って……だって、俺は死ななきゃ、消えなきゃ駄目で」
「じゃあアマネチャンを助けたこの子は、『何』?」
エレボスを抱きしめるアマネの手に自分のそれを重ねて、白蘭がまっすぐにアマネを見つめる。
彼にとって『エレボス』は何なのか。
アイギス達は既にメティスから聞いて知っているそれはけれども、アマネ自身は聞いていない。望月も気付いているそれをけれども、アマネへ告げてはいなかった。
アマネだけが正体に気付いていない。
「……コイツは、エレボスは『死への渇望』」
「違うよ。この子はアマネチャンのシャドウだよ。アマネチャンの『気持ち』だ」
「ならやっぱり違わねぇ。俺は『死にたい』『死ななくちゃいけない』だって――」
「もう死んでるから、とでも言うつもり?」
白蘭の口調がキツくなる。
「だったらどうしてキミはボクの目の前にいるの。ボクを救った大好きな人は、そう簡単に死のうなんて考える人じゃなかった。ボクに世界を教えたキミは最期の血の一滴までも誰かの為に使う人だ。こんな――自殺なんて考えるバカじゃない!」
アマネの紫色の瞳は白蘭を見つめたままだったけれど、その目の縁に涙が溢れていくのに、アイギスは自分も何かに気付けた気がした。
それは人であったなら悟ったとでもいうのだろうか。命の答えを見つけだした瞬間というのは、こんな気持ちになるのかも知れないとさえ思えた。
「……じ、さつ?」
彼女が導き出した命の答え。アマネの『兄』が導き出した命の答え。その結果がニュクスを“守る”為の封印だとして、では彼がその答えを得た故に悲しむことになった『アマネ』の命の答えは、また別のものなのだろう。
アイギスがいつか得るだろう“命の答え”は、有里とも『アマネ』とも違う気がした。人の命の答えがそれぞれ違うとして、『アマネ』の命の答えは『何』なのか。
アイギスは『アマネ』を助けたい。助けたくてここへまで来た。けれどもそれは一度忘れてしまった彼のことを思い出したからだ。
白蘭に教えてもらっただけの時点では、彼の事を助けようとは思っていなかったし考えもしなかった。
けれど彼は違う。彼にとって『二度目』の今のアイギス達は本来、彼とは何の関係もなかった。同じ見た目と同じ思考を持っているだけの別人とも言えただろう。
それでも彼はアイギス達の為に奔走した。奔走し続けている。そこまで必死になれるのはどうしてか、なんて理由は白蘭が教えてくれた。
彼の『命の答え』を、アイギスはもう分かっている気がする。
「――っ!」
鍔競り合いに押し負けた荒垣がよろけるのに、アマネが前のめって足を踏み出す。その隙を狙ってコロマルが切りかかろうとするが、アマネは僅かに足へ力を込めてその場で飛び上がった。
同時に床へ大剣を突き刺し、それを支えに飛び上がったアマネがその大剣から手を離しながら柄を蹴って宙返りをしつつ距離を取る。武器が手元になくなったというのに、アマネは臆することなくアイギス達を見つめていた。
そのアマネへ向けて、アイギスは銃口でもある指先をまっすぐに伸ばす。
メティスが泣いている。望月がそんなメティスの腕を掴んで飛び込んでいかないように抑えてくれていた。白蘭がアマネへと距離を詰めて手刀を叩き込もうとするのに、アマネは顔色一つ変えずにそれを捌く。
白蘭の蹴りがアマネの腹へと決まった。カクン、と力の抜けた膝にけれどもアマネは地面へ手を突いて白蘭の足を蹴り払って立ち上がり、尻餅を突いた白蘭へ向けて踵落としを落とそうと。
した瞬間にアイギスは引き金を引いた。アマネが、アイギスを見て僅かに笑った。
「――だめぇえええええ!」
メティスが叫ぶ。
目を開いたアマネとアイギスの間にエレボスが割り込んだ。
飛び込んだエレボスのわき腹にアイギスの放った銃弾が直撃し、エレボスの身体が僅かに衝撃で跳ねる。それからそのまま地面へ落ちたエレボスに、呆然と堕ちる様を眺めていたアマネが駆け寄った。
「この馬鹿っ! お前が出てくる必要は無かっただろぉ!」
撃たれた衝撃にか痙攣を起こしているエレボスを抱き上げアマネが叫ぶ。呼びかけられてもエレボスはぐたりとしていて動く様子はなく、アイギス達が思わず駆け寄ってもアマネはアイギス達に意識を向けることなくエレボスへと呼びかけ続けていた。
なんだか不思議な光景のようにも思えたのは、エレボスがアマネのシャドウで、シャドウが本来は無意識に抑圧された精神の具現化したもので、本来受け入れ難いモノである筈のそれを、アマネがこんなにも必死に大切にしているからか。
このエレボスはアマネの抑圧された『何か』で、アマネ本人はそのエレボスの正体を知らない。だからエレボスが彼を助けたことは信じられなかった。
エレボスが、シャドウが死なせまいとした。抑圧された無意識であっても彼もアマネの心の一つだから。
だとすれば、アマネは。
「――アマネチャン」
落ち着き払った声で白蘭がアマネへと呼びかける。肩をびくつかせたアマネがエレボスから白蘭へと顔を向けた。
「落ち着いて。この子は大丈夫だから」
「だ、いじょうぶって、なんでっ」
「何でアイギスチャンの弾、避けようとしなかったの」
「それは、死のうと思って……だって、俺は死ななきゃ、消えなきゃ駄目で」
「じゃあアマネチャンを助けたこの子は、『何』?」
エレボスを抱きしめるアマネの手に自分のそれを重ねて、白蘭がまっすぐにアマネを見つめる。
彼にとって『エレボス』は何なのか。
アイギス達は既にメティスから聞いて知っているそれはけれども、アマネ自身は聞いていない。望月も気付いているそれをけれども、アマネへ告げてはいなかった。
アマネだけが正体に気付いていない。
「……コイツは、エレボスは『死への渇望』」
「違うよ。この子はアマネチャンのシャドウだよ。アマネチャンの『気持ち』だ」
「ならやっぱり違わねぇ。俺は『死にたい』『死ななくちゃいけない』だって――」
「もう死んでるから、とでも言うつもり?」
白蘭の口調がキツくなる。
「だったらどうしてキミはボクの目の前にいるの。ボクを救った大好きな人は、そう簡単に死のうなんて考える人じゃなかった。ボクに世界を教えたキミは最期の血の一滴までも誰かの為に使う人だ。こんな――自殺なんて考えるバカじゃない!」
アマネの紫色の瞳は白蘭を見つめたままだったけれど、その目の縁に涙が溢れていくのに、アイギスは自分も何かに気付けた気がした。
それは人であったなら悟ったとでもいうのだろうか。命の答えを見つけだした瞬間というのは、こんな気持ちになるのかも知れないとさえ思えた。
「……じ、さつ?」