後日談2
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薄ボンヤリした空が望月の顔の向こうに見える。アマネを見下ろす彼は相変わらず優しい月の様な目の色をしていて、アマネと目が合うと更にニコリと微笑んだ。
「砂の上に寝転がってると、後で大変だよ?」
「……綾時、さん」
「うん。なに?」
「綾時さん」
もう一度名前を呼んで起き上がれば、望月が手を伸ばしてきてアマネの頬に付いた砂を払い落とす。冷たい手だ。
「さっき拾ってた破片がやっと集め終わったんだ。だから来てみたらアマネ君寝てるんだもの」
「……寝てはいませんでした」
「そう?」
言い返しても望月は気にした様子もなく笑っている。あんな別れ方をしたというのに、再会してもアマネは忘れていたから彼の名前すらさっきは呼べなかったというのに。
望月へ腕を伸ばして抱きつけばしゃがんでいただけだった望月がバランスを崩して尻餅を突く。それから苦笑しつつアマネの背中へと腕を回してきた。エレボスが恐る恐るといった様子で傍に来て、そんなアマネと望月を覗き込んでくる。
アマネは彼を『殺そう』とした。結果がそうならなかったとしても、そうしようとした事実は消えない。
「綾時さん」
「なに?」
「ごめんなさい。俺は結局、何も」
結局何も成すことなど出来なかった。望月を助けることも有里を助けることも出来ず無様に生き延びて、生き延びた残滓なんかでは有里を助けるどころか手を伸ばすことも出来ない。
アマネの差し出した代償は有里が差し出した代償へ比べれば、この砂漠の砂の一粒よりもちっぽけなモノだったのだろう。本当はもう、この時の狭間で何度繰り返しても、彼女を助けられないとも気付いている。
滑稽で、無様で、もう何も出来そうにない。
「――それで、アマネ君は諦めるの?」
望月の声は落ち着いていた。まるでアマネがなんと答えるのかも分かりきっているようなそれは、普段であればアマネもきっとすぐに答えられただろう。でももう無理だった。
折れた心は戻らない。止まった心臓は動かない。吐き出された言葉はかえらない。
だから言えない。言いたくなかった。
言葉にすればきっと、自分がどうするかも分かってしまっていたからだ。
「ぅ、うぅ……」
鼻を啜って望月の服をきつく握りしめる。何も言わないまま望月がアマネの頭を撫でてくるのを何も考えたくないまま甘受した。
いっその事声を上げて泣いてしまっても良かったかも知れない。望月もエレボスも、アマネが泣いたところで今更咎めることは無かっただろうから。
それでも声を押し殺したのは声を出してしまった途端、自分が今以上に情けないみじめな存在になり果てることが分かっていたからだ。
こんなに情けなくてみじめなものを生かす為に、『兄』も彼女も大いなる封印になったなんて、そんな風にだけは考えたくなかった。
「砂の上に寝転がってると、後で大変だよ?」
「……綾時、さん」
「うん。なに?」
「綾時さん」
もう一度名前を呼んで起き上がれば、望月が手を伸ばしてきてアマネの頬に付いた砂を払い落とす。冷たい手だ。
「さっき拾ってた破片がやっと集め終わったんだ。だから来てみたらアマネ君寝てるんだもの」
「……寝てはいませんでした」
「そう?」
言い返しても望月は気にした様子もなく笑っている。あんな別れ方をしたというのに、再会してもアマネは忘れていたから彼の名前すらさっきは呼べなかったというのに。
望月へ腕を伸ばして抱きつけばしゃがんでいただけだった望月がバランスを崩して尻餅を突く。それから苦笑しつつアマネの背中へと腕を回してきた。エレボスが恐る恐るといった様子で傍に来て、そんなアマネと望月を覗き込んでくる。
アマネは彼を『殺そう』とした。結果がそうならなかったとしても、そうしようとした事実は消えない。
「綾時さん」
「なに?」
「ごめんなさい。俺は結局、何も」
結局何も成すことなど出来なかった。望月を助けることも有里を助けることも出来ず無様に生き延びて、生き延びた残滓なんかでは有里を助けるどころか手を伸ばすことも出来ない。
アマネの差し出した代償は有里が差し出した代償へ比べれば、この砂漠の砂の一粒よりもちっぽけなモノだったのだろう。本当はもう、この時の狭間で何度繰り返しても、彼女を助けられないとも気付いている。
滑稽で、無様で、もう何も出来そうにない。
「――それで、アマネ君は諦めるの?」
望月の声は落ち着いていた。まるでアマネがなんと答えるのかも分かりきっているようなそれは、普段であればアマネもきっとすぐに答えられただろう。でももう無理だった。
折れた心は戻らない。止まった心臓は動かない。吐き出された言葉はかえらない。
だから言えない。言いたくなかった。
言葉にすればきっと、自分がどうするかも分かってしまっていたからだ。
「ぅ、うぅ……」
鼻を啜って望月の服をきつく握りしめる。何も言わないまま望月がアマネの頭を撫でてくるのを何も考えたくないまま甘受した。
いっその事声を上げて泣いてしまっても良かったかも知れない。望月もエレボスも、アマネが泣いたところで今更咎めることは無かっただろうから。
それでも声を押し殺したのは声を出してしまった途端、自分が今以上に情けないみじめな存在になり果てることが分かっていたからだ。
こんなに情けなくてみじめなものを生かす為に、『兄』も彼女も大いなる封印になったなんて、そんな風にだけは考えたくなかった。