後日談2
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『俺の懺悔を、聞いてもらえますか』
過去の真田と彼が分寮のラウンジのソファへ向かい合って座っている。時計の針は深夜を差していて、彼の前のテーブルにはマグカップ。
『俺の目の前で、荒垣さんは死んだんです』
彼の言葉に荒垣と真田が身動ぎした。
『天田を庇ってタカヤに撃たれて、俺も貴方も誰も間に合わなくて、俺は立ち尽くしてあの人を見ているしか出来なかったんです。ただ死んで欲しくないと喚いているだけで、荒垣さんが死ぬのを見ているだけでした』
それはアイギス達が見た過去と合っていない。
天田が破片を受け取った過去の記憶を見た時、彼は必死になって誰よりも真っ先に荒垣の延命の為に動いていた。むしろ立ち尽くしていたのはアイギス達のほうで、死んで欲しくないと喚いていたのもアイギス達だ。
『桐条先輩のお父さんも、俺は助けられなかったんです。意識不明の重体なんかじゃなくて、幾月と相打ちで、幾月にとどめを刺したのは俺でしたけど、ご当主も俺は助けられませんでした。貴方も皆も俺を責める人はいなかったけれども、それを知っていたくせに結局二人とも、俺はやっぱり助けられませんでした』
ラウンジの時計だけが音を立てている。
『俺はまだ諦めません。頑張ります。諦められる訳がねぇ。でも、だから……真田先輩達には、知って欲しくないんです』
『……分かった』
『真田先輩は、やっぱり優しい方ですね』
『いきなりなんだ?』
『最初に助けてくれたのは兄さんだけど、傍にいたのは真田先輩だったんですよ。監視も兼ねていたのでしょうけど。……思えば、兄さんの次に一番貴方が俺の事を考えてくれましたね』
そう言って微笑んだ彼が振り向き、今の真田へ向かって何かを放り投げつけた。真田が落とすことなくそれを受け取った次の瞬間には、アイギス達は時の狭間の砂漠へと戻ってきている。
受け取った白い破片を観察した真田は、何かを考えている様子で荒垣と白蘭へ向き直った。
「……オレが、最初だったのか?」
「らしいな。少なくともオレが知る限りじゃそうだ」
「ノートにはそう書いてあるね」
「そのノートに書いてあるのは、……“いつ”の事だ?」
白蘭へと歩み寄った真田が白蘭の提げていた鞄を見つめる。
その中には今までの話を統合すれば、彼が書き記したものであり、この一年の事が書いてあるノートが。
「アイツと話した後、それからあの日だ。オレはアイツの話を聞いておかしいと思った。アイツはどうも二つの未来を同時に話している気がしてな。一つはシンジが“生きていて”、有里が“女”で、オレ達がニュクスを倒すことを選んだ未来だ。もう一つは――シンジが“死んでいる”未来」
死んだ未来と死んでいない未来。
「アイツは幾月さんを撃つ前に、『やり直したって』と言っていただろう。幾月さんはそれを聞いて『時を操る神器を手に入れたのか』と聞いていた。アイツは否定していたが、その後ニュクスを倒しに行く途中で有里が言っていただろう。アイツの兄が『有里 湊』という名前で、『自分と同じように“死”を封印された』と」
「それが、何だと言いたい?」
「一度はそんなことはあり得ないと考えた。だがあの日、有里からアイツの兄の名前を聞いて考え直した」
真田が白蘭を見つめる。
「アイツは、“どこ”から来たんだ?」
「……今の時間軸から言えば、“二年後の未来”」
岳羽と伊織が息を飲んでいた。山岸は声が出ない様に両手で口を押さえていて、天田も目を見開いている。
落ち着いているのは荒垣くらいだ。アイギスも声を出さないだけで十分混乱していた。
「もっと正確に言えば、平行世界の二年後の未来かな。有里サンが有里“クン”で、そこの荒垣サンも桐条のご当主も亡くなられて、有里クンが“死んでしまった”世界の」
「へいこう、せかい?」
「パラレルワールドって言った方がわかる?」
「まっ、待てまてまて。つまり? アイツは時をかける少女的な?」
「少女ではないよ」
突っ込むべきはそこではない。
白蘭の話を真実だとして受け入れるのならば、彼は平行世界の二年後の未来からここへ訪れ、アイギス達を助ける為に奔走したことになる。既に起きた結果としてアイギス達を助けたことは確定しているとしても、二年後の未来、しかも平行世界から、という部分はにわかには受けれられなかった。
それはアイギスだけではなく、当然桐条達もだ。
「どうして、いや、何故彼にだけそんなことが起こった? そもそも平行世界というのは存在するのか?」
「平行世界の存在についてここで話し合うつもりはないかな。そーいう事って多分適正のない一般人にペルソナとシャドウの事を説明するのと同じくらい時間が掛かると思うよ。でも、どうしてアマネチャン『だけ』にそんな事が起こったのかは、教えることは出来る」
白蘭がそう言い切った背後で、音もなく立っていた扉の一つが勢いよく開いた。音に驚いて振り返ったアイギス達の視線の先で、扉を開けたのだろう青年が息を切らしてやはり驚いたようにアイギス達を見返している。
彼の後ろからはアイギスと同じアンドロイドの少女が彼を追いかけるように走ってきて、呆然としているアイギス達の姿に困惑した様子で足を止めた。彼の結わえられていた長髪が揺れる。
『彼』だった。
過去の真田と彼が分寮のラウンジのソファへ向かい合って座っている。時計の針は深夜を差していて、彼の前のテーブルにはマグカップ。
『俺の目の前で、荒垣さんは死んだんです』
彼の言葉に荒垣と真田が身動ぎした。
『天田を庇ってタカヤに撃たれて、俺も貴方も誰も間に合わなくて、俺は立ち尽くしてあの人を見ているしか出来なかったんです。ただ死んで欲しくないと喚いているだけで、荒垣さんが死ぬのを見ているだけでした』
それはアイギス達が見た過去と合っていない。
天田が破片を受け取った過去の記憶を見た時、彼は必死になって誰よりも真っ先に荒垣の延命の為に動いていた。むしろ立ち尽くしていたのはアイギス達のほうで、死んで欲しくないと喚いていたのもアイギス達だ。
『桐条先輩のお父さんも、俺は助けられなかったんです。意識不明の重体なんかじゃなくて、幾月と相打ちで、幾月にとどめを刺したのは俺でしたけど、ご当主も俺は助けられませんでした。貴方も皆も俺を責める人はいなかったけれども、それを知っていたくせに結局二人とも、俺はやっぱり助けられませんでした』
ラウンジの時計だけが音を立てている。
『俺はまだ諦めません。頑張ります。諦められる訳がねぇ。でも、だから……真田先輩達には、知って欲しくないんです』
『……分かった』
『真田先輩は、やっぱり優しい方ですね』
『いきなりなんだ?』
『最初に助けてくれたのは兄さんだけど、傍にいたのは真田先輩だったんですよ。監視も兼ねていたのでしょうけど。……思えば、兄さんの次に一番貴方が俺の事を考えてくれましたね』
そう言って微笑んだ彼が振り向き、今の真田へ向かって何かを放り投げつけた。真田が落とすことなくそれを受け取った次の瞬間には、アイギス達は時の狭間の砂漠へと戻ってきている。
受け取った白い破片を観察した真田は、何かを考えている様子で荒垣と白蘭へ向き直った。
「……オレが、最初だったのか?」
「らしいな。少なくともオレが知る限りじゃそうだ」
「ノートにはそう書いてあるね」
「そのノートに書いてあるのは、……“いつ”の事だ?」
白蘭へと歩み寄った真田が白蘭の提げていた鞄を見つめる。
その中には今までの話を統合すれば、彼が書き記したものであり、この一年の事が書いてあるノートが。
「アイツと話した後、それからあの日だ。オレはアイツの話を聞いておかしいと思った。アイツはどうも二つの未来を同時に話している気がしてな。一つはシンジが“生きていて”、有里が“女”で、オレ達がニュクスを倒すことを選んだ未来だ。もう一つは――シンジが“死んでいる”未来」
死んだ未来と死んでいない未来。
「アイツは幾月さんを撃つ前に、『やり直したって』と言っていただろう。幾月さんはそれを聞いて『時を操る神器を手に入れたのか』と聞いていた。アイツは否定していたが、その後ニュクスを倒しに行く途中で有里が言っていただろう。アイツの兄が『有里 湊』という名前で、『自分と同じように“死”を封印された』と」
「それが、何だと言いたい?」
「一度はそんなことはあり得ないと考えた。だがあの日、有里からアイツの兄の名前を聞いて考え直した」
真田が白蘭を見つめる。
「アイツは、“どこ”から来たんだ?」
「……今の時間軸から言えば、“二年後の未来”」
岳羽と伊織が息を飲んでいた。山岸は声が出ない様に両手で口を押さえていて、天田も目を見開いている。
落ち着いているのは荒垣くらいだ。アイギスも声を出さないだけで十分混乱していた。
「もっと正確に言えば、平行世界の二年後の未来かな。有里サンが有里“クン”で、そこの荒垣サンも桐条のご当主も亡くなられて、有里クンが“死んでしまった”世界の」
「へいこう、せかい?」
「パラレルワールドって言った方がわかる?」
「まっ、待てまてまて。つまり? アイツは時をかける少女的な?」
「少女ではないよ」
突っ込むべきはそこではない。
白蘭の話を真実だとして受け入れるのならば、彼は平行世界の二年後の未来からここへ訪れ、アイギス達を助ける為に奔走したことになる。既に起きた結果としてアイギス達を助けたことは確定しているとしても、二年後の未来、しかも平行世界から、という部分はにわかには受けれられなかった。
それはアイギスだけではなく、当然桐条達もだ。
「どうして、いや、何故彼にだけそんなことが起こった? そもそも平行世界というのは存在するのか?」
「平行世界の存在についてここで話し合うつもりはないかな。そーいう事って多分適正のない一般人にペルソナとシャドウの事を説明するのと同じくらい時間が掛かると思うよ。でも、どうしてアマネチャン『だけ』にそんな事が起こったのかは、教えることは出来る」
白蘭がそう言い切った背後で、音もなく立っていた扉の一つが勢いよく開いた。音に驚いて振り返ったアイギス達の視線の先で、扉を開けたのだろう青年が息を切らしてやはり驚いたようにアイギス達を見返している。
彼の後ろからはアイギスと同じアンドロイドの少女が彼を追いかけるように走ってきて、呆然としているアイギス達の姿に困惑した様子で足を止めた。彼の結わえられていた長髪が揺れる。
『彼』だった。