後日談2
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『っ、誰だ貴様は!?』
八月の満月の夜。旧陸軍の地下施設。そこへ閉じこめられているSEESの面々の前に現れ、扉を開けてくれた仮面にパーカー姿の人物が人差し指と親指を立てた手で自身のこめかみを撃つ仕草をする。そうして『過去のアイギス達』へ背中を向けて走ってきた人物が、しゃがんでコロマルを撫でた。
その手つきは偶々出会った犬を撫でるよりももっと優しく、コロマルが思わずと言ったように目を細めている。猫であったなら喉を鳴らしていそうな程気持ち良さげなコロマルにしかし、パーカーの人物は立ち上がるとアイギス達の間をすり抜けて消えてしまった。
誰一人としてその人物を呼び止めることも、その腕や肩を掴んで引き留める事も出来ず、気付けば潜った筈の扉が消えた時の狭間へと立っている。
誰も何も言わなかった。
それもそうだ。アイギス達が覚えていたあの場面は、桐条が影時間終了後に後通信機が使えるようになってから外へ救援を求めたことになっていたのである。
だが実際は、あの人物がストレガの塞いだ扉を開けてくれたのだろう。何も言わず、請われた訳でも無いというのに。
「……今のも、『アマネ』か?」
「ああ。そうだ」
「あんな奴、覚えてねーよ……」
「だから言ったでしょ。キミ達は忘れてる」
白蘭が肩を竦める。
「でも、これじゃまるでニュクスを倒した後みたい……記憶が改竄されてる?」
「ボクはニュクスとか影時間は知らないけど、影時間の間に起こった事って、影時間が終わったら多少不条理でも社会的に説明がつく事へ書き換えられるんでしょ? ならキミ達にもそれが行われただけじゃない?」
「だけじゃないって、どうして! アタシ達は別に助けてなんて言ってないじゃない!」
他人事のような言い方をした白蘭へ怒鳴る岳羽に、けれども白蘭は声を荒げたりはしなかった。
「じゃあ、アマネチャンのやったことは『ありがた迷惑』だった?」
「それは、違うけど……」
今の状態では、まだ『アマネ』という人物が何をしたかったのか分からない。荒垣は『自分の知っている未来よりマシな未来を進ませる為に試行錯誤していた』と言ったが、その『自分の知っている未来』とは何のことかもアイギス達には分からなかった。
けれども、『彼』はアイギス達の味方だったのではとは、思う。
「ともかく、どうやらこの時の狭間は、我々が『彼』を思い出さなければ消えないということだろうな」
ため息を吐いた桐条が話題を変えるように呟いた。
「何故思い出さなければならないのかは分からないが、今は進むしかない」
「……そうですね」
コロマルが何かに気付いて自分の足許を見やる。白い陶器の破片の様な物を見つけて前足で突っついているのに、気付いた荒垣がそれを拾ってやっていた。
八月の満月の夜。旧陸軍の地下施設。そこへ閉じこめられているSEESの面々の前に現れ、扉を開けてくれた仮面にパーカー姿の人物が人差し指と親指を立てた手で自身のこめかみを撃つ仕草をする。そうして『過去のアイギス達』へ背中を向けて走ってきた人物が、しゃがんでコロマルを撫でた。
その手つきは偶々出会った犬を撫でるよりももっと優しく、コロマルが思わずと言ったように目を細めている。猫であったなら喉を鳴らしていそうな程気持ち良さげなコロマルにしかし、パーカーの人物は立ち上がるとアイギス達の間をすり抜けて消えてしまった。
誰一人としてその人物を呼び止めることも、その腕や肩を掴んで引き留める事も出来ず、気付けば潜った筈の扉が消えた時の狭間へと立っている。
誰も何も言わなかった。
それもそうだ。アイギス達が覚えていたあの場面は、桐条が影時間終了後に後通信機が使えるようになってから外へ救援を求めたことになっていたのである。
だが実際は、あの人物がストレガの塞いだ扉を開けてくれたのだろう。何も言わず、請われた訳でも無いというのに。
「……今のも、『アマネ』か?」
「ああ。そうだ」
「あんな奴、覚えてねーよ……」
「だから言ったでしょ。キミ達は忘れてる」
白蘭が肩を竦める。
「でも、これじゃまるでニュクスを倒した後みたい……記憶が改竄されてる?」
「ボクはニュクスとか影時間は知らないけど、影時間の間に起こった事って、影時間が終わったら多少不条理でも社会的に説明がつく事へ書き換えられるんでしょ? ならキミ達にもそれが行われただけじゃない?」
「だけじゃないって、どうして! アタシ達は別に助けてなんて言ってないじゃない!」
他人事のような言い方をした白蘭へ怒鳴る岳羽に、けれども白蘭は声を荒げたりはしなかった。
「じゃあ、アマネチャンのやったことは『ありがた迷惑』だった?」
「それは、違うけど……」
今の状態では、まだ『アマネ』という人物が何をしたかったのか分からない。荒垣は『自分の知っている未来よりマシな未来を進ませる為に試行錯誤していた』と言ったが、その『自分の知っている未来』とは何のことかもアイギス達には分からなかった。
けれども、『彼』はアイギス達の味方だったのではとは、思う。
「ともかく、どうやらこの時の狭間は、我々が『彼』を思い出さなければ消えないということだろうな」
ため息を吐いた桐条が話題を変えるように呟いた。
「何故思い出さなければならないのかは分からないが、今は進むしかない」
「……そうですね」
コロマルが何かに気付いて自分の足許を見やる。白い陶器の破片の様な物を見つけて前足で突っついているのに、気付いた荒垣がそれを拾ってやっていた。