ペルソナ3
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学校を休んで、美鶴の代わりに真田が手配してくれた病院へ肩の傷の診察へ行った。
銃弾は貫通しており傷口も綺麗なので比較的早く治るらしい。頭は倒れた際に固いものに打ち付けたらしく血が出ていなくとも傷が出来ていたようだが、一晩経っても吐き気などが無いのでこちらも異常無し。
医師にどうして銃創なんて怪我をしたのかと不思議そうに尋ねられても沈黙で押し通し、輸血と点滴を数時間掛けて受けて病院を出ると、学校へ行くにも微妙な時間だった。そもそも制服は昨夜の騒ぎで着られたものではなくなっており、今も私服である。
気絶する前に持っていたナイフと召喚器は壊されていたが、鞄は校門のところへ放置されていたのを昨夜の帰り際に回収していた。その中にあった財布の中身を確かめてから、アマネは鞄を担ぎ直して商店街へと歩き出す。
ワックで遅い昼食を取っていると、真田からメールが来た。
動かさないようにと三角巾で釣られた右腕を鬱陶しく思いながら確認すれば、全員で話したいらしく夜には作戦室へ集まってくれという一斉送信だ。
読み終えると同時に再びメールの着信が来た。真田と有里から、二人とも怪我の様子はどうだという内容に、アマネは大丈夫だとそれぞれへ返す。
寮へ帰れば、小学生という事で部活も無く帰りの早い天田が既に帰ってきていた。丸くなっていたコロマルが起きて出迎えの様にアマネの足元へまとわり付き、一度撫でてやると満足して天田のほうへと向かう。
「お、お帰りなさいアマネさん。……その、怪我は」
「綺麗に貫通してるから摘出手術も必要無ぇよ。傷跡も綺麗なモンだから、比較的すぐに治るって」
「そうですか……良かった」
ソファの上で両膝を抱える天田は明らかに胸を撫で下ろす。そのすぐ脇でコロマルが天田へと鼻先を押し付けた。
寿司屋の腕前はタマゴで分かるとか、どんなに可愛げのない事を言っていても彼はまだ子供だ。それを思い出して、アマネは天田から目を逸らした。
幾月にとどめを差したのがアマネだと、天田だって分かっている筈である。
「……夜まで部屋に居るから」
「あ! っと。アマネさん!」
だからあまり近付きたくないだろうと気を利かせたつもりが、当の本人である天田へ呼び止められて失敗に終わった。振り返れば天田はソファから足を下ろして立ち上がりかけながら、アマネをまっすぐに見つめている。
「アマネさん、その、……その、今日の夕食、肉じゃが食べたいです」
「ん、大丈夫材料はある」
本当に言いたいだろう事は言えなかった天田に、アマネは気付かなかったフリをして階段を上がった。
夜になって、作戦室へ向かったアマネが扉を開けると先に来ていた寮生達が一斉に振り返った。
流石にそこまで明確に注目されるとは思っていなかったので思わずたじろいでしまったが、すぐに逸らされた視線にアマネは後ろ手でドアを閉める。協調性が無いなと思いながらも、ソファへ集まる面々から距離を置くように壁へと寄り掛かった。
美鶴とアイギスの姿は無く、どんよりとした沈黙が流れている。
「理事長の部屋のもの、全部持って行かれちゃいましたね」
「まあ、当然だろうな」
「アイギスも居ないし……」
「ハァ……正直もう、何が何だか」
「新聞やニュースは、もう盛んに騒いでますね。『桐条グループ総帥、急死』……病死って事になってましたけど」
「ああ。いつも、事実とは違う」
「……ええ」
真田と天田が思い出したのは、荒垣のことだろう。
「桐条先輩、さすがに居ないっスね」
「一人娘だからな……葬儀から後継問題まで全てで矢面に立たされる。向こう一週間くらいは強行軍だな」
「なんか、それキツそう。大丈夫かな」
「オレらこれから、どうしたらいんスかね……。つか、チドリとか、どうなるんスか?」
「どうもこうも、一切通達なしだ。それどころじゃないんだろう。本音は恐らく、グループの内部でもどうしたらいいか分からないんだ」
「アイギス、大丈夫だといいな」
「んだよ……どんな事言って来んのかと思えば、放置かよ。いいのか、大人がそんなんで?」
「美鶴が宗家に行ってるからな。その影響もあるかも知れない」
「そっか……。けど、これからどうします? 影時間を消すどころか手がかりもゼロ。それらしい敵ももう居ないし」
「あの人の言ってた『滅び』って、何の事だったんだろう……もし僕らが、あのまま生贄になってたら、何が起きたんでしょうか?」
「分からない事だらけね……」
分からない事、やらなければいけない事が多すぎるのは誰だって同じだ。この場で口数が多いのもその不安を押し隠そうとする無意識の表れでもあるしだろうし、喋っていなければやっていられないというのもある。
けれどもアマネ達には、やらなければならない事が今はハッキリしていない。桐条グループの混乱の引き金になったアマネ達が、今最も放置されているというのも笑える話だった。
「でもま、悩んでても始まんないっしょ? 状況とか、今は分かんねえんだし」
「そうだな。ただ、一つ確かな事がある。タルタロスはまだあって、あそこにはまだシャドウが居るんだ。何が起きてもいいように、力は鍛えておく必要がある」
「はい」
「ワン!」
「それじゃ、今夜は解散だ。ゆっくり休めよ……眠れなくてもな」
結局この場でアマネが何かを追究されることはなく、真田の号令で解散となる。
一言も喋らないままにアマネが作戦室を出てようとしたところで、アマネは真田に声を掛けられた。
銃弾は貫通しており傷口も綺麗なので比較的早く治るらしい。頭は倒れた際に固いものに打ち付けたらしく血が出ていなくとも傷が出来ていたようだが、一晩経っても吐き気などが無いのでこちらも異常無し。
医師にどうして銃創なんて怪我をしたのかと不思議そうに尋ねられても沈黙で押し通し、輸血と点滴を数時間掛けて受けて病院を出ると、学校へ行くにも微妙な時間だった。そもそも制服は昨夜の騒ぎで着られたものではなくなっており、今も私服である。
気絶する前に持っていたナイフと召喚器は壊されていたが、鞄は校門のところへ放置されていたのを昨夜の帰り際に回収していた。その中にあった財布の中身を確かめてから、アマネは鞄を担ぎ直して商店街へと歩き出す。
ワックで遅い昼食を取っていると、真田からメールが来た。
動かさないようにと三角巾で釣られた右腕を鬱陶しく思いながら確認すれば、全員で話したいらしく夜には作戦室へ集まってくれという一斉送信だ。
読み終えると同時に再びメールの着信が来た。真田と有里から、二人とも怪我の様子はどうだという内容に、アマネは大丈夫だとそれぞれへ返す。
寮へ帰れば、小学生という事で部活も無く帰りの早い天田が既に帰ってきていた。丸くなっていたコロマルが起きて出迎えの様にアマネの足元へまとわり付き、一度撫でてやると満足して天田のほうへと向かう。
「お、お帰りなさいアマネさん。……その、怪我は」
「綺麗に貫通してるから摘出手術も必要無ぇよ。傷跡も綺麗なモンだから、比較的すぐに治るって」
「そうですか……良かった」
ソファの上で両膝を抱える天田は明らかに胸を撫で下ろす。そのすぐ脇でコロマルが天田へと鼻先を押し付けた。
寿司屋の腕前はタマゴで分かるとか、どんなに可愛げのない事を言っていても彼はまだ子供だ。それを思い出して、アマネは天田から目を逸らした。
幾月にとどめを差したのがアマネだと、天田だって分かっている筈である。
「……夜まで部屋に居るから」
「あ! っと。アマネさん!」
だからあまり近付きたくないだろうと気を利かせたつもりが、当の本人である天田へ呼び止められて失敗に終わった。振り返れば天田はソファから足を下ろして立ち上がりかけながら、アマネをまっすぐに見つめている。
「アマネさん、その、……その、今日の夕食、肉じゃが食べたいです」
「ん、大丈夫材料はある」
本当に言いたいだろう事は言えなかった天田に、アマネは気付かなかったフリをして階段を上がった。
夜になって、作戦室へ向かったアマネが扉を開けると先に来ていた寮生達が一斉に振り返った。
流石にそこまで明確に注目されるとは思っていなかったので思わずたじろいでしまったが、すぐに逸らされた視線にアマネは後ろ手でドアを閉める。協調性が無いなと思いながらも、ソファへ集まる面々から距離を置くように壁へと寄り掛かった。
美鶴とアイギスの姿は無く、どんよりとした沈黙が流れている。
「理事長の部屋のもの、全部持って行かれちゃいましたね」
「まあ、当然だろうな」
「アイギスも居ないし……」
「ハァ……正直もう、何が何だか」
「新聞やニュースは、もう盛んに騒いでますね。『桐条グループ総帥、急死』……病死って事になってましたけど」
「ああ。いつも、事実とは違う」
「……ええ」
真田と天田が思い出したのは、荒垣のことだろう。
「桐条先輩、さすがに居ないっスね」
「一人娘だからな……葬儀から後継問題まで全てで矢面に立たされる。向こう一週間くらいは強行軍だな」
「なんか、それキツそう。大丈夫かな」
「オレらこれから、どうしたらいんスかね……。つか、チドリとか、どうなるんスか?」
「どうもこうも、一切通達なしだ。それどころじゃないんだろう。本音は恐らく、グループの内部でもどうしたらいいか分からないんだ」
「アイギス、大丈夫だといいな」
「んだよ……どんな事言って来んのかと思えば、放置かよ。いいのか、大人がそんなんで?」
「美鶴が宗家に行ってるからな。その影響もあるかも知れない」
「そっか……。けど、これからどうします? 影時間を消すどころか手がかりもゼロ。それらしい敵ももう居ないし」
「あの人の言ってた『滅び』って、何の事だったんだろう……もし僕らが、あのまま生贄になってたら、何が起きたんでしょうか?」
「分からない事だらけね……」
分からない事、やらなければいけない事が多すぎるのは誰だって同じだ。この場で口数が多いのもその不安を押し隠そうとする無意識の表れでもあるしだろうし、喋っていなければやっていられないというのもある。
けれどもアマネ達には、やらなければならない事が今はハッキリしていない。桐条グループの混乱の引き金になったアマネ達が、今最も放置されているというのも笑える話だった。
「でもま、悩んでても始まんないっしょ? 状況とか、今は分かんねえんだし」
「そうだな。ただ、一つ確かな事がある。タルタロスはまだあって、あそこにはまだシャドウが居るんだ。何が起きてもいいように、力は鍛えておく必要がある」
「はい」
「ワン!」
「それじゃ、今夜は解散だ。ゆっくり休めよ……眠れなくてもな」
結局この場でアマネが何かを追究されることはなく、真田の号令で解散となる。
一言も喋らないままにアマネが作戦室を出てようとしたところで、アマネは真田に声を掛けられた。