後日談2
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「私が知っている貴方の名前は『▲▲▲』です」
「え? 悪ぃもう一回」
「『▲▲▲』です」
「……もう一回」
もう一度繰り返されても、何故か自分の名前のところだけ聞こえない。困ったものだと思ったが、自分よりも黒い少女の方が困り果てていた。
少女は自分を見つめたままどうすればいいのか分からないといった風情である。もし自分を待っていてくれたのだとすればそれは嬉しいが、しかしその理由も意味も分からなかった。
「とりあえず君の名前を教えてくれねぇ?」
「はい。私は『****』です。『###』に頼まれてきました」
「――うん。ごめん。分かんねぇやぁ」
ものの見事に名称が聞き取れない。とりあえず誰かへ頼まれて彼女がここへ来たらしいことだけを理解する。肩の上では謎の生き物改めエレボスが人の気も知らないで呑気に収まりのいい姿勢を探していた。
どうして謎の生き物のエレボス以外の、全ての名称が聞き取れないのか。他の部分はちゃんと聞こえているから耳がおかしくなった訳ではないようだが、それにしたって少女の名前まで分からないのは困る。
いや、本当は『分かっているのに自分が認識しようとしていない』のだろうか。記憶が無いのとそれが関わっているかすら不明だ。
分からないと言われてやはり戸惑っている少女に、こうして立ち尽くしていても仕方ないだろうと肩をすくめる。
「まぁとりあえず、一人と一匹で居るよりは心強いなぁ。頼まれて来たってんなら俺がやらなけりゃなんねぇことも知ってんだろぉ?」
「それは……その」
言いよどむ少女へ首を傾げれば、少女は申し訳なさそうに俯いた。どうやら頼まれた事を忘れてしまったのかもしれない。
頼まれて来たのに肝心なその内容を忘れてしまうというのもおかしな話だ。
「ごめんなさい……」
「まぁ何とかなんだろぉ。大丈夫大丈夫――痛てて、エレボス引っかくんじゃねぇよ」
何が不満だったのか顔を引っかいてくるエレボスに手を伸ばしてその頭を撫でた。このどちらが正しい頭なのか分からない生き物は撫でられたことで一応溜飲を下げたらしい。
少女が警戒しながらエレボスを見ている。
「んだぁ?」
「その――エレボスが怖くないんですか?」
「慣れたら愛嬌があって可愛くねぇ? 手触りもいいしぃ」
褒められたのが分かったのかエレボスが肩の上で胸を張った。そのまま転がり落ちそうになるのを慌てて受け止めてやる。落ちそうになったことに驚いたのかエレボスが硬直していた。
よしよしと撫でてやればその硬直も次第にゆるんでくる。そうして完全に平静を取り戻したらしいのを見計らって、少女へと声を掛けた。
「んじゃベアトリーチェ。案内よろしくぅ」
「ベアトリーチェ?」
「? 案内役の少女って言ったらベアトリーチェだろぉ?」
「え? 悪ぃもう一回」
「『▲▲▲』です」
「……もう一回」
もう一度繰り返されても、何故か自分の名前のところだけ聞こえない。困ったものだと思ったが、自分よりも黒い少女の方が困り果てていた。
少女は自分を見つめたままどうすればいいのか分からないといった風情である。もし自分を待っていてくれたのだとすればそれは嬉しいが、しかしその理由も意味も分からなかった。
「とりあえず君の名前を教えてくれねぇ?」
「はい。私は『****』です。『###』に頼まれてきました」
「――うん。ごめん。分かんねぇやぁ」
ものの見事に名称が聞き取れない。とりあえず誰かへ頼まれて彼女がここへ来たらしいことだけを理解する。肩の上では謎の生き物改めエレボスが人の気も知らないで呑気に収まりのいい姿勢を探していた。
どうして謎の生き物のエレボス以外の、全ての名称が聞き取れないのか。他の部分はちゃんと聞こえているから耳がおかしくなった訳ではないようだが、それにしたって少女の名前まで分からないのは困る。
いや、本当は『分かっているのに自分が認識しようとしていない』のだろうか。記憶が無いのとそれが関わっているかすら不明だ。
分からないと言われてやはり戸惑っている少女に、こうして立ち尽くしていても仕方ないだろうと肩をすくめる。
「まぁとりあえず、一人と一匹で居るよりは心強いなぁ。頼まれて来たってんなら俺がやらなけりゃなんねぇことも知ってんだろぉ?」
「それは……その」
言いよどむ少女へ首を傾げれば、少女は申し訳なさそうに俯いた。どうやら頼まれた事を忘れてしまったのかもしれない。
頼まれて来たのに肝心なその内容を忘れてしまうというのもおかしな話だ。
「ごめんなさい……」
「まぁ何とかなんだろぉ。大丈夫大丈夫――痛てて、エレボス引っかくんじゃねぇよ」
何が不満だったのか顔を引っかいてくるエレボスに手を伸ばしてその頭を撫でた。このどちらが正しい頭なのか分からない生き物は撫でられたことで一応溜飲を下げたらしい。
少女が警戒しながらエレボスを見ている。
「んだぁ?」
「その――エレボスが怖くないんですか?」
「慣れたら愛嬌があって可愛くねぇ? 手触りもいいしぃ」
褒められたのが分かったのかエレボスが肩の上で胸を張った。そのまま転がり落ちそうになるのを慌てて受け止めてやる。落ちそうになったことに驚いたのかエレボスが硬直していた。
よしよしと撫でてやればその硬直も次第にゆるんでくる。そうして完全に平静を取り戻したらしいのを見計らって、少女へと声を掛けた。
「んじゃベアトリーチェ。案内よろしくぅ」
「ベアトリーチェ?」
「? 案内役の少女って言ったらベアトリーチェだろぉ?」