後日談2
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唐突にラウンジの床へと空いた穴。それは穴というより隠されていた蓋が開けられたような状態だった。穴の先には下へ続く階段があり、覗き込めば春の気候である日本とではあり得ないような砂漠が広がっている。
「この建物って、地下に砂漠があるんだ?」
「んなワケねーだろ!」
白蘭と名乗った青年の声に伊織が思わずと言った様子で言い返す。点けっぱなしだったテレビから『三月三十一日をお知らせします』という声が響いた。
驚きと動揺から立ち直った桐条が、それでも困惑を隠しきれないままエントランスへ立ち尽くしていた白蘭へと話しかける。
「すまないが、こちらも取り込んでいるのでまた日を改めて貰っても……」
「ちょっと待ってよ。まだ『終わってなかった』の?」
「終わって?」
聞き返した桐条など意に介した様子もなく、白蘭が慌てて提げていた鞄の中からノートを取り出した。何度も書き込まれたり広げられたりしているらしい使い古されたノートである。
それへ真剣に目を通していた白蘭はやがて何を見つけたのか目を見開いて、困り果てた様子でノートを閉じた。まるで『こんなことは想定外だ』とばかりの雰囲気だが、そんなのは前触れもなくラウンジの床に穴が空いてしまった寮生達だって同じだ。
「困ったな。日付が変わってからでないとダメだとか分かんないよねフツー」
「君は何を言って」
「『影時間』だっけ? それとは違うらしいけど時間が進まないって変なの」
「は? ――おい!」
ノートを鞄へ仕舞いながら、さも当然の様に床へ空いた穴へと入ろうとする白蘭を桐条が止めた。
「なに?」
「まさかこの中へ行くつもりか!? いや、そもそも何故君が『影時間』のことを知っている?」
影時間は有里がニュクスに打ち勝ったのであろうあの日から失われている。それ以前に適正の無い者には関知すら出来なかった時間だ。そんな時間の存在を知り、更には桐条財閥が研究や調査の末に付けた名称でもあるそれを知っているというのは、桐条財閥かSEESか、ストレガへでも関わっていなければおかしい話でもあった。
一気に警戒すべきだと判断されるに値する言動をとった青年は、足を止めて桐条達を見回す。何かを考えているようなその視線は、アイギスで止まって笑みの形に細められた。
見覚えが無いはずなのに既視感を覚える紫の瞳。
「……そうだね。ボクはこの『原因』を知ってるよ。このままじゃ『君達』が危ないコトもね」
「原因?」
訝しむ山岸達を無視して、白蘭が地下世界へ繋がる階段を見下ろす。
点けたままのテレビが“昨日も聞いたような”ニュースを繰り返していた。
「この建物って、地下に砂漠があるんだ?」
「んなワケねーだろ!」
白蘭と名乗った青年の声に伊織が思わずと言った様子で言い返す。点けっぱなしだったテレビから『三月三十一日をお知らせします』という声が響いた。
驚きと動揺から立ち直った桐条が、それでも困惑を隠しきれないままエントランスへ立ち尽くしていた白蘭へと話しかける。
「すまないが、こちらも取り込んでいるのでまた日を改めて貰っても……」
「ちょっと待ってよ。まだ『終わってなかった』の?」
「終わって?」
聞き返した桐条など意に介した様子もなく、白蘭が慌てて提げていた鞄の中からノートを取り出した。何度も書き込まれたり広げられたりしているらしい使い古されたノートである。
それへ真剣に目を通していた白蘭はやがて何を見つけたのか目を見開いて、困り果てた様子でノートを閉じた。まるで『こんなことは想定外だ』とばかりの雰囲気だが、そんなのは前触れもなくラウンジの床に穴が空いてしまった寮生達だって同じだ。
「困ったな。日付が変わってからでないとダメだとか分かんないよねフツー」
「君は何を言って」
「『影時間』だっけ? それとは違うらしいけど時間が進まないって変なの」
「は? ――おい!」
ノートを鞄へ仕舞いながら、さも当然の様に床へ空いた穴へと入ろうとする白蘭を桐条が止めた。
「なに?」
「まさかこの中へ行くつもりか!? いや、そもそも何故君が『影時間』のことを知っている?」
影時間は有里がニュクスに打ち勝ったのであろうあの日から失われている。それ以前に適正の無い者には関知すら出来なかった時間だ。そんな時間の存在を知り、更には桐条財閥が研究や調査の末に付けた名称でもあるそれを知っているというのは、桐条財閥かSEESか、ストレガへでも関わっていなければおかしい話でもあった。
一気に警戒すべきだと判断されるに値する言動をとった青年は、足を止めて桐条達を見回す。何かを考えているようなその視線は、アイギスで止まって笑みの形に細められた。
見覚えが無いはずなのに既視感を覚える紫の瞳。
「……そうだね。ボクはこの『原因』を知ってるよ。このままじゃ『君達』が危ないコトもね」
「原因?」
訝しむ山岸達を無視して、白蘭が地下世界へ繋がる階段を見下ろす。
点けたままのテレビが“昨日も聞いたような”ニュースを繰り返していた。