後日談2
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それは三月五日。卒業式の日だった。
式典の最中に今までのことを思い出した真田達が、約束の場所であった屋上へ向かうと有里はアイギスの膝を枕に寝そべっていた。思い出したのだと、自分達は勝ったのだと興奮覚めやらぬ勢いで二人へ駆け寄っていった先の有里は、いくら呼び掛けても目を覚ますことは無かった。
つかの間の状況不理解はすぐに困惑へ変わり、焦燥に変わって何度も呼び掛けるが眼を覚ますことはなく。
慌てて呼ばれた救急車で病院へ運ばれ、様々な検査を桐条が金に暇をつけることなく行なっても、眼を覚ますことはなかった。社会的な説明は『植物状態』
けれども『一月三十一日』の事を思い出した者達にとっては、そうではないと気付ける。
彼女は、その命を代償にニュクスを『倒した』のではないかと。
誰もがその考えに到達して、けれども納得は出来なかった。何故彼女だけがと何度も考えて、もう二度と目を覚まさないのではないかと、言いようのない喪失感で誰もが口を閉ざしていた。
答えの出ないまま、彼女が目覚めることもないままに迎えた『三月三十一日』
SEESという活動をする必要が無くなった故に、解体の決まった巌戸台分寮には既に数人の寮生が居なくなっていた。大学進学へ向けて自活の為のアパートへ出て行った者。普通の生徒が利用している寮へと移動した者。
再び自宅から通うことになった伊織や山岸、もう学校へ通うことはなくなったアイギス。それに分寮の代表者でもある桐条が残ってはいたが、活動が活発だった頃の騒がしさは無かった。
ラウンジという同じ空間にいても、重苦しい程に沈んだ雰囲気に会話のきっかけさえ始まらない。それでも部屋に一人でいるよりはマシだと考えていたのだろう。
明日には寮生全員がここを出て行き、解体が決まっていた巌戸分寮の日付も変わろうかという深夜。
「コンバンハ。巌戸台分寮ってここ?」
訪れたのは、白い髪と紫の眼をした、何処か既視感を覚える青年だった。
もう一度言うが日付も変わろうかという深夜のことである。普通であればそんな時間に人を訪ねるなんて事はしないだろう。だが世間的には学生であれば春休みに入っている時期で、事情があれば多少の深夜徘徊はおかしくないのかも知れない。
そう思ったのは一年前、『彼女』が来たのも影時間が起こる直前だったからだ。
「そうだが、……君は?」
一人掛けソファに座っていた桐条が立ち上がって対応する。
誰も見た覚えのない、なのに何処か見覚えのある笑い方をする彼は眼を細めて微笑んだ。
「ボクは白蘭。『アマネチャン』を連れ戻しに来た、『アマネチャン』の『鏡』だ」
「『アマネ』……?」
柱時計が零時を示した。
何かの始まりを表すようにグラリと世界が揺れる。全員が思わずふらつく程の衝撃の直後、唐突にラウンジの床の一部が扉の様に開かれた。
式典の最中に今までのことを思い出した真田達が、約束の場所であった屋上へ向かうと有里はアイギスの膝を枕に寝そべっていた。思い出したのだと、自分達は勝ったのだと興奮覚めやらぬ勢いで二人へ駆け寄っていった先の有里は、いくら呼び掛けても目を覚ますことは無かった。
つかの間の状況不理解はすぐに困惑へ変わり、焦燥に変わって何度も呼び掛けるが眼を覚ますことはなく。
慌てて呼ばれた救急車で病院へ運ばれ、様々な検査を桐条が金に暇をつけることなく行なっても、眼を覚ますことはなかった。社会的な説明は『植物状態』
けれども『一月三十一日』の事を思い出した者達にとっては、そうではないと気付ける。
彼女は、その命を代償にニュクスを『倒した』のではないかと。
誰もがその考えに到達して、けれども納得は出来なかった。何故彼女だけがと何度も考えて、もう二度と目を覚まさないのではないかと、言いようのない喪失感で誰もが口を閉ざしていた。
答えの出ないまま、彼女が目覚めることもないままに迎えた『三月三十一日』
SEESという活動をする必要が無くなった故に、解体の決まった巌戸台分寮には既に数人の寮生が居なくなっていた。大学進学へ向けて自活の為のアパートへ出て行った者。普通の生徒が利用している寮へと移動した者。
再び自宅から通うことになった伊織や山岸、もう学校へ通うことはなくなったアイギス。それに分寮の代表者でもある桐条が残ってはいたが、活動が活発だった頃の騒がしさは無かった。
ラウンジという同じ空間にいても、重苦しい程に沈んだ雰囲気に会話のきっかけさえ始まらない。それでも部屋に一人でいるよりはマシだと考えていたのだろう。
明日には寮生全員がここを出て行き、解体が決まっていた巌戸分寮の日付も変わろうかという深夜。
「コンバンハ。巌戸台分寮ってここ?」
訪れたのは、白い髪と紫の眼をした、何処か既視感を覚える青年だった。
もう一度言うが日付も変わろうかという深夜のことである。普通であればそんな時間に人を訪ねるなんて事はしないだろう。だが世間的には学生であれば春休みに入っている時期で、事情があれば多少の深夜徘徊はおかしくないのかも知れない。
そう思ったのは一年前、『彼女』が来たのも影時間が起こる直前だったからだ。
「そうだが、……君は?」
一人掛けソファに座っていた桐条が立ち上がって対応する。
誰も見た覚えのない、なのに何処か見覚えのある笑い方をする彼は眼を細めて微笑んだ。
「ボクは白蘭。『アマネチャン』を連れ戻しに来た、『アマネチャン』の『鏡』だ」
「『アマネ』……?」
柱時計が零時を示した。
何かの始まりを表すようにグラリと世界が揺れる。全員が思わずふらつく程の衝撃の直後、唐突にラウンジの床の一部が扉の様に開かれた。