ペルソナP3P
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腕も足も、指先一つも動かない。『死ぬ』時ってこんな感じだっただろうかとぼんやり思う。そう思うだけでも精一杯で、すぐにその考えも霧散した。
何も考えられない。なのに酷く辛くて悲しかった。
酷く辛くて悲しい。なのにどうすることも出来る気がしなかった。
誰に謝ればいいのかも分からない。『命の答え』なんてまだいらない。それを見出すにはアマネはまだ何も知らないのだから。
何も知らないからこんなに悲しいのかと思った。そんな考えもすぐに霧散した。
アマネが感じていた最悪は、誰のモノでもない未来だ。だから彼女達にとっては『今』が最悪だろう。
比較対象もなく、それ以外を知らない。だから最悪だと認識する。
本当はそれが嫌だった。アマネ以外の誰もが『湊さん』を覚えていない。
覚えていないのは、知らないのは存在していないのと同じだ。
あの人が存在した証が、この世界のどこへ残っているのかとしたら、それはアマネの中だけ。
あの人を呼ぶ声も出ない。
死ぬのは怖くない。けれどもおいていかないでほしい。おいていかれるくらいならと、考えて。
倒れているアマネを、誰かが抱き起こす。抱き締められた気がした。
『――……だめ』
痛む全身に歯を食いしばって力を込めて、身体を起こす。空からの全てを押し潰さんばかりの激しい重力にあらがって、足を前へと踏み出した。
息もまともに吸えない程の波動を何度も受けて、倒れていた桐条や岳羽、真田の間を這うよりも遅い速度で進んでいく。全身を引きずる様に向かった先で、ゆっくりと起きあがり空のニュクスを見上げている有里の腕を掴んだ。
振り返った有里と目が合う。視界が広がっているから、被っていた仮面はいつの間にか割れていたようだ。
全身へ掛かる圧に傷口から血が流れる。ニュクス・アバターへ一人で挑むのは流石に無謀すぎたらしい。倒れたことで意識を失い、鎖の障害が消えて有里達が来てしまったのだろう。そうして彼女達がニュクス・アバターを倒して、ニュクスが降りてきた。
『一度目』のあの時、自分はここでただ泣いただけだった。『おいていかないで』とわがままを告げてあの人を困らせて。
あの時から相変わらず、自分は弱くて無力で馬鹿だ。
でも、死んだり代わりに犠牲になったりは出来ない。それをやったら優しい『あの子』が悲しむ。
あの子だけではない。アマネと関わった全員がそう考えてくれるのなら。
奇跡は起きない。それはもう奇跡ではない。全ての事象が『命の答え』の下で奇跡ではなくなった。
アマネは渾身の力を振り絞って笑う。
「一緒に、いきます」
『おいていかないで』というわがままでもなく、『連れていって』という懇願でもなく。一緒に『いく』という決断だ。
ニュクスの光が強くなる。
ずっと考えていた。代わりにはなれない。自分では『大いなる封印』にはなれない。
でもその“役目”は湊さんで“なければならない”ことはないと、この世界が証明した。『彼』は『彼女』だった。その相違点がアマネの勝機の一つだ。
極端な話、誰でもいいのだろう。その“役目”を担えば。
ならば自分が、『彼女』が外せないのなら『彼女』と自分が。
一人では死んでしまった『彼』の役目を、二人で担えば或いは。
空へ向けて伸ばした指の先、眩んだ光の中で青い蝶が。
何も考えられない。なのに酷く辛くて悲しかった。
酷く辛くて悲しい。なのにどうすることも出来る気がしなかった。
誰に謝ればいいのかも分からない。『命の答え』なんてまだいらない。それを見出すにはアマネはまだ何も知らないのだから。
何も知らないからこんなに悲しいのかと思った。そんな考えもすぐに霧散した。
アマネが感じていた最悪は、誰のモノでもない未来だ。だから彼女達にとっては『今』が最悪だろう。
比較対象もなく、それ以外を知らない。だから最悪だと認識する。
本当はそれが嫌だった。アマネ以外の誰もが『湊さん』を覚えていない。
覚えていないのは、知らないのは存在していないのと同じだ。
あの人が存在した証が、この世界のどこへ残っているのかとしたら、それはアマネの中だけ。
あの人を呼ぶ声も出ない。
死ぬのは怖くない。けれどもおいていかないでほしい。おいていかれるくらいならと、考えて。
倒れているアマネを、誰かが抱き起こす。抱き締められた気がした。
『――……だめ』
痛む全身に歯を食いしばって力を込めて、身体を起こす。空からの全てを押し潰さんばかりの激しい重力にあらがって、足を前へと踏み出した。
息もまともに吸えない程の波動を何度も受けて、倒れていた桐条や岳羽、真田の間を這うよりも遅い速度で進んでいく。全身を引きずる様に向かった先で、ゆっくりと起きあがり空のニュクスを見上げている有里の腕を掴んだ。
振り返った有里と目が合う。視界が広がっているから、被っていた仮面はいつの間にか割れていたようだ。
全身へ掛かる圧に傷口から血が流れる。ニュクス・アバターへ一人で挑むのは流石に無謀すぎたらしい。倒れたことで意識を失い、鎖の障害が消えて有里達が来てしまったのだろう。そうして彼女達がニュクス・アバターを倒して、ニュクスが降りてきた。
『一度目』のあの時、自分はここでただ泣いただけだった。『おいていかないで』とわがままを告げてあの人を困らせて。
あの時から相変わらず、自分は弱くて無力で馬鹿だ。
でも、死んだり代わりに犠牲になったりは出来ない。それをやったら優しい『あの子』が悲しむ。
あの子だけではない。アマネと関わった全員がそう考えてくれるのなら。
奇跡は起きない。それはもう奇跡ではない。全ての事象が『命の答え』の下で奇跡ではなくなった。
アマネは渾身の力を振り絞って笑う。
「一緒に、いきます」
『おいていかないで』というわがままでもなく、『連れていって』という懇願でもなく。一緒に『いく』という決断だ。
ニュクスの光が強くなる。
ずっと考えていた。代わりにはなれない。自分では『大いなる封印』にはなれない。
でもその“役目”は湊さんで“なければならない”ことはないと、この世界が証明した。『彼』は『彼女』だった。その相違点がアマネの勝機の一つだ。
極端な話、誰でもいいのだろう。その“役目”を担えば。
ならば自分が、『彼女』が外せないのなら『彼女』と自分が。
一人では死んでしまった『彼』の役目を、二人で担えば或いは。
空へ向けて伸ばした指の先、眩んだ光の中で青い蝶が。