ペルソナ3
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斑鳩アマネ。十六歳。
棺だらけの街でいきなり走り出したモノレールを眺めながら、少しだけ明日からの生活が不安になった。
義務教育最後の年。早くに両親を亡くし親戚の家で世話になっていたのを、面倒を見てくれていた親戚の家の娘が思春期に入る頃だったことを機に一人暮らしを始めるつもりで遠くの学校を選んだ。もっと正直に言うならその娘、アマネからすれば従妹にあたる彼女が苦手だったのもある。
だというのに入学式数日前のアパートへ引越し予定日。その親戚一家が事故に巻き込まれ全員重体で入院となってしまった。
結果、看病や事故の処理に翻弄されアマネの高校デビューは華々しく散った。
別にそれは構わないのだが、一度も学校へ行かないまま四月が終わってしまったのは流石に少しやばいのではないかと思う。
ゴールデンウィークに退院した親戚一家に感謝されつつ新しい住処であるアパートへ越してからも学校への手続きやその他諸々を整理したり片付けたり、気付けばゴールデンウィークが終わってから始めての休日。
学校が始まればもっと忙しいだろうと改めて親戚の家へ顔出しに行くと帰りが遅くなってしまった。終電間際の電車に乗って新しい住処がある巌戸台へ戻り、未だ慣れない街並みを視界に入れながら駅から出たところで、世界が変わる。
唐突に訪れた世界が反転したかのような感覚に、次の一歩を踏み出す前に辺りを見回せば深夜にも関わらず騒がしかった駅前が静かになっていた。
その辺を歩いていたはずの人の姿は無くなり、代わりに赤い棺の形をしたオブジェの様なものが静かに存在を主張している。地面や壁を血の様な赤色が滴るように濡れているのも、先程までは無かったものだ。
どうしたものかと考えていたアマネは、背後から感じた気配に振り返る。そこには無骨な仮面を付けた黒い物体が“居て”アマネを見つめていた。
「……あー、マジでかぁ」
一番近くにいた黒いモノを蹴り飛ばすと、面白いほどに跳んでいって消滅する。
少し可愛いと思ったが、だからといって大人しく襲われてやる訳にもいかない。
何の変哲も無い運動靴でも普通に物理攻撃が効くことを結果的に確かめて、とりあえずこの場から離れることを優先する。高い場所へ行けば少しは違うだろうかと走り出した視界の端で、人が走ってくるのが見えた気がした。
電気が通っていないのか開かない自動ドアやただの階段と化したエスカレーターを駆け上ると追い駆けて来ていた黒い物体は段差を登ってはこられない様子で、振り返った先からこちらを見ている。いや、見ているように見えた。
飲食店らしいそこの調理場へ入り込むとそこにも無骨な棺が立っている。まるで人の代わりをしているかのようなそれに、思わず蹴り飛ばそうとしてしまった足を引く。
置かれていた包丁を見つけて咄嗟にベルトへ挟んだ。使い慣れた獲物に近い形であるそれを手に入れ深く息を吐けば、思っていたより動揺していたらしい。
窓の向こうの、線路の半端な場所で止まっていた電車が走り出すのが見えた。
棺だらけの街でいきなり走り出したモノレールを眺めながら、少しだけ明日からの生活が不安になった。
義務教育最後の年。早くに両親を亡くし親戚の家で世話になっていたのを、面倒を見てくれていた親戚の家の娘が思春期に入る頃だったことを機に一人暮らしを始めるつもりで遠くの学校を選んだ。もっと正直に言うならその娘、アマネからすれば従妹にあたる彼女が苦手だったのもある。
だというのに入学式数日前のアパートへ引越し予定日。その親戚一家が事故に巻き込まれ全員重体で入院となってしまった。
結果、看病や事故の処理に翻弄されアマネの高校デビューは華々しく散った。
別にそれは構わないのだが、一度も学校へ行かないまま四月が終わってしまったのは流石に少しやばいのではないかと思う。
ゴールデンウィークに退院した親戚一家に感謝されつつ新しい住処であるアパートへ越してからも学校への手続きやその他諸々を整理したり片付けたり、気付けばゴールデンウィークが終わってから始めての休日。
学校が始まればもっと忙しいだろうと改めて親戚の家へ顔出しに行くと帰りが遅くなってしまった。終電間際の電車に乗って新しい住処がある巌戸台へ戻り、未だ慣れない街並みを視界に入れながら駅から出たところで、世界が変わる。
唐突に訪れた世界が反転したかのような感覚に、次の一歩を踏み出す前に辺りを見回せば深夜にも関わらず騒がしかった駅前が静かになっていた。
その辺を歩いていたはずの人の姿は無くなり、代わりに赤い棺の形をしたオブジェの様なものが静かに存在を主張している。地面や壁を血の様な赤色が滴るように濡れているのも、先程までは無かったものだ。
どうしたものかと考えていたアマネは、背後から感じた気配に振り返る。そこには無骨な仮面を付けた黒い物体が“居て”アマネを見つめていた。
「……あー、マジでかぁ」
一番近くにいた黒いモノを蹴り飛ばすと、面白いほどに跳んでいって消滅する。
少し可愛いと思ったが、だからといって大人しく襲われてやる訳にもいかない。
何の変哲も無い運動靴でも普通に物理攻撃が効くことを結果的に確かめて、とりあえずこの場から離れることを優先する。高い場所へ行けば少しは違うだろうかと走り出した視界の端で、人が走ってくるのが見えた気がした。
電気が通っていないのか開かない自動ドアやただの階段と化したエスカレーターを駆け上ると追い駆けて来ていた黒い物体は段差を登ってはこられない様子で、振り返った先からこちらを見ている。いや、見ているように見えた。
飲食店らしいそこの調理場へ入り込むとそこにも無骨な棺が立っている。まるで人の代わりをしているかのようなそれに、思わず蹴り飛ばそうとしてしまった足を引く。
置かれていた包丁を見つけて咄嗟にベルトへ挟んだ。使い慣れた獲物に近い形であるそれを手に入れ深く息を吐けば、思っていたより動揺していたらしい。
窓の向こうの、線路の半端な場所で止まっていた電車が走り出すのが見えた。