ペルソナP3P
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いくら『運命の日』が近かろうと、日常の予定は変わらない。
成人の日という祝日が過ぎ去り、情報メディアでは相変わらず無気力症患者の増減を報道し、最近はそれに『ニュクス教』信徒と思われる者達が起こす暴走行動のニュースが増えたくらいである。
アマネの生活だって基本は変わらなかった。冬休みの明けた学校へ通い、夜はタルタロスを探索して屋上を目指し、時にはマーガレットへ戦闘の勘を取り戻す作業を手伝ってもらう。
たったそれだけの日常の間、出来るだけ巌戸台分寮へは近付かなかった。学校で会っても会釈をするだけ。タルタロスの中でも会話は短いもので、マーガレットが倒せないと相談を受けた時に困ったくらいである。
だから、辰巳記念病院でチドリが目を覚ましたという連絡がきたことには驚いた。有里からであったその連絡に、学校が終わるなり急いで病院へ向かったのはチドリが目覚めたことが信じられなかったからだろう。
アマネは彼女が『一度目』の際、何を理由に生き返ったのか知らない。何もせずとも生き返る運命だったのか、何か他に理由や要因があったのかどうかさえ不明だ。
だが彼女へ生き返って欲しかったから、アマネは有里を経由して奇跡の起こった『一度目』と出来るだけ同じ状況を作り上げたのである。果たしてそれが功を奏したのかも分からなかった。
「――青い人を見たの」
飛び込もうとした病室から声が聞こえる。
「アンタ達と同じ制服を着た、青い人。それが、『忘れたらもったいない』って」
チドリの声だ、と思うと同時にその内容に頭が真っ白になった。それから目から止めどなく涙が溢れてくるのに、アマネは病室を覗く事もせず踵を返す。
嗚咽を堪えながら病院の廊下を歩くアマネを、すれ違う看護師や入院患者が不思議そうに眺めているのも気にしていられなかった。なけなしの理性で人気のない場所へ向かって、駐車場の傍にあったベンチへ座る。
きっとアマネ以外には分からない。伊織でさえチドリが見た臨死体験的な夢だと思うだろう。けれどもアマネには、アマネにだけは分かる。
「……湊さん」
『兄』の名を呼ぶだけでも精一杯だった。
自分のしていることの何かが報われた訳でもない。ただ彼の存在をごく僅かに自分以外の口から聞いただけだ。
それでも。
「――アマネ君?」
有里の声が聞こえて、ゆっくりと顔を上げる。有里は上着や鞄さえ持たずにやってきたのか、顔が寒さで赤くなっていた。
アマネと目を合わせて笑みを浮かべる彼女に、『あの人』の面影を覚える。
成人の日という祝日が過ぎ去り、情報メディアでは相変わらず無気力症患者の増減を報道し、最近はそれに『ニュクス教』信徒と思われる者達が起こす暴走行動のニュースが増えたくらいである。
アマネの生活だって基本は変わらなかった。冬休みの明けた学校へ通い、夜はタルタロスを探索して屋上を目指し、時にはマーガレットへ戦闘の勘を取り戻す作業を手伝ってもらう。
たったそれだけの日常の間、出来るだけ巌戸台分寮へは近付かなかった。学校で会っても会釈をするだけ。タルタロスの中でも会話は短いもので、マーガレットが倒せないと相談を受けた時に困ったくらいである。
だから、辰巳記念病院でチドリが目を覚ましたという連絡がきたことには驚いた。有里からであったその連絡に、学校が終わるなり急いで病院へ向かったのはチドリが目覚めたことが信じられなかったからだろう。
アマネは彼女が『一度目』の際、何を理由に生き返ったのか知らない。何もせずとも生き返る運命だったのか、何か他に理由や要因があったのかどうかさえ不明だ。
だが彼女へ生き返って欲しかったから、アマネは有里を経由して奇跡の起こった『一度目』と出来るだけ同じ状況を作り上げたのである。果たしてそれが功を奏したのかも分からなかった。
「――青い人を見たの」
飛び込もうとした病室から声が聞こえる。
「アンタ達と同じ制服を着た、青い人。それが、『忘れたらもったいない』って」
チドリの声だ、と思うと同時にその内容に頭が真っ白になった。それから目から止めどなく涙が溢れてくるのに、アマネは病室を覗く事もせず踵を返す。
嗚咽を堪えながら病院の廊下を歩くアマネを、すれ違う看護師や入院患者が不思議そうに眺めているのも気にしていられなかった。なけなしの理性で人気のない場所へ向かって、駐車場の傍にあったベンチへ座る。
きっとアマネ以外には分からない。伊織でさえチドリが見た臨死体験的な夢だと思うだろう。けれどもアマネには、アマネにだけは分かる。
「……湊さん」
『兄』の名を呼ぶだけでも精一杯だった。
自分のしていることの何かが報われた訳でもない。ただ彼の存在をごく僅かに自分以外の口から聞いただけだ。
それでも。
「――アマネ君?」
有里の声が聞こえて、ゆっくりと顔を上げる。有里は上着や鞄さえ持たずにやってきたのか、顔が寒さで赤くなっていた。
アマネと目を合わせて笑みを浮かべる彼女に、『あの人』の面影を覚える。