ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「“人”かどうかってのは違うね。アンタは本当に見た目通りの若い子かい?」
この人は、鋭い。
「……少なくとも戸籍上は佐藤と同じ高校生です」
「留年してるとかって答えを求めてる訳じゃないよ」
「両親がいないという意味では苦労しているかも知れません」
「それは悪いことを聞いたね。でもそれじゃない。もっと大切な人を亡くしたとか、そういう経験があるだろう」
お婆さんが佐藤の分だと思われる湯飲みからお茶を飲む。アマネは湯飲みへ手を伸ばすことも出来ず抱えていたクッションに力を込めた。
「別に責めている訳でも、掘り下げようと思っている訳でも詮索したい訳でもないよ。でもアンタ、うちの孫に近づくようなタイプじゃなさそうだから」
「……そうですね。でも話しかけてきたのは佐藤からです」
ふんと鼻を鳴らしたお婆さんはアマネのことを『孫に害を与える者』だとでも思っているのか。正確なところは分からないがもしそう思われているのなら、アマネは佐藤から離れるべきだろう。
ある意味ではそうした方が名案だとすら思えたのは、この家が思っていた以上に平穏で暖かい家庭だったからかもしれない。佐藤にアマネの抱えている悩みを打ち明けることは無いだろうが、住んでいる環境が違い過ぎるとは思った。
アマネはこれから、消える覚悟で彼女達を。
「アタシの旦那が言っていたことなんだけどね、『美しきものに火種と蝶の息』って俳句がある」
唐突に俳句をそらんじたお婆さんに顔を上げる。凛とした姿勢のままお茶を啜った老婆は、何度も転生したアマネの総合的な年齢に比べれば若いだろうに決してそう思わせることなく口角を上げた。
「灰の下でくすぶる小さな火種も、必死に風へ抵抗してきた蝶もどっちも同じ命さ。全然違うことは決しておかしいことじゃないし、その根底はどれもなにも変わらないものだよ。アンタがどんな人間だろうとうちの孫とそう変わらないことは覚えておきなさい」
「……壮大な話ですね」
「壮大なものかい。命の答えは一つじゃないけど命の重さは何も変わらないって話だよ」
そう言って持っていた湯飲みの中を確認した佐藤のお婆さんは飲み干してしまったよと言いながら立ち上がる。
「まあなんだい。うちの孫をこれからもよろしくって話なんだけどね」
「……振られることが確定してそうですが、一度口説いて良いですか」
「悪いね。アタシは死んだ旦那に操立ててる」
だろうな、と考えたところで部屋の外から足音がしてお菓子を抱えた佐藤が戸を開けて入ってくる。両腕に抱えられたお菓子の中には、ハワイ土産としてポピュラーなマカダミアチョコレートの箱もあった。
「お待たせ! 婆ちゃんチョコ! チョコボール!」
「はいはい。婆ちゃんお前のお茶飲み干しちゃったからまた持ってくるよ。お汁粉も持ってくるから」
マカダミアチョコレートはどうやら、この佐藤家ではチョコボールと呼ばれているらしい。
この人は、鋭い。
「……少なくとも戸籍上は佐藤と同じ高校生です」
「留年してるとかって答えを求めてる訳じゃないよ」
「両親がいないという意味では苦労しているかも知れません」
「それは悪いことを聞いたね。でもそれじゃない。もっと大切な人を亡くしたとか、そういう経験があるだろう」
お婆さんが佐藤の分だと思われる湯飲みからお茶を飲む。アマネは湯飲みへ手を伸ばすことも出来ず抱えていたクッションに力を込めた。
「別に責めている訳でも、掘り下げようと思っている訳でも詮索したい訳でもないよ。でもアンタ、うちの孫に近づくようなタイプじゃなさそうだから」
「……そうですね。でも話しかけてきたのは佐藤からです」
ふんと鼻を鳴らしたお婆さんはアマネのことを『孫に害を与える者』だとでも思っているのか。正確なところは分からないがもしそう思われているのなら、アマネは佐藤から離れるべきだろう。
ある意味ではそうした方が名案だとすら思えたのは、この家が思っていた以上に平穏で暖かい家庭だったからかもしれない。佐藤にアマネの抱えている悩みを打ち明けることは無いだろうが、住んでいる環境が違い過ぎるとは思った。
アマネはこれから、消える覚悟で彼女達を。
「アタシの旦那が言っていたことなんだけどね、『美しきものに火種と蝶の息』って俳句がある」
唐突に俳句をそらんじたお婆さんに顔を上げる。凛とした姿勢のままお茶を啜った老婆は、何度も転生したアマネの総合的な年齢に比べれば若いだろうに決してそう思わせることなく口角を上げた。
「灰の下でくすぶる小さな火種も、必死に風へ抵抗してきた蝶もどっちも同じ命さ。全然違うことは決しておかしいことじゃないし、その根底はどれもなにも変わらないものだよ。アンタがどんな人間だろうとうちの孫とそう変わらないことは覚えておきなさい」
「……壮大な話ですね」
「壮大なものかい。命の答えは一つじゃないけど命の重さは何も変わらないって話だよ」
そう言って持っていた湯飲みの中を確認した佐藤のお婆さんは飲み干してしまったよと言いながら立ち上がる。
「まあなんだい。うちの孫をこれからもよろしくって話なんだけどね」
「……振られることが確定してそうですが、一度口説いて良いですか」
「悪いね。アタシは死んだ旦那に操立ててる」
だろうな、と考えたところで部屋の外から足音がしてお菓子を抱えた佐藤が戸を開けて入ってくる。両腕に抱えられたお菓子の中には、ハワイ土産としてポピュラーなマカダミアチョコレートの箱もあった。
「お待たせ! 婆ちゃんチョコ! チョコボール!」
「はいはい。婆ちゃんお前のお茶飲み干しちゃったからまた持ってくるよ。お汁粉も持ってくるから」
マカダミアチョコレートはどうやら、この佐藤家ではチョコボールと呼ばれているらしい。