ペルソナP3P
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決断を任された有里と望月が有里の部屋へ向かうのを見送って暫く、時計の秒針が時を刻む音だけが響くラウンジは少し息苦しかった。
勝手にアマネがそう思っていただけかも知れない。ここで有里達の選択によって、アマネがここまでしてきた事が水の泡になるかどうかの瀬戸際でもあったからだ。
もし有里達が望月を殺して全てを忘れることを選んでいたら、アマネが荒垣を助け桐条当主を助け、この場にいる意味も無くなってしまう。
二年後に八十稲羽市で起こる騒動についても、そこへ至ることなく世界が消滅する。そうなってしまったらアマネをここへ『跳ばした』アレはどうするつもりなのか。
万が一再びやり直しを強いられたら、それはそれでアマネはやるのだろう。ただいつまで折れずにいられるのかは分からない。
今だってもう、アマネは何度も辛いと思っているのだ。
窓の外で雪が降り始め地面を白く染め始めた頃、有里と望月がラウンジへと降りてきた。ホッとした様子で駆け寄っていく寮生達に、アマネも安堵しつつも駆け寄れはしない。
「ニュクスを止めるのは不可能なことなのに、ね」
ニュクスへ立ち向かうことを選んだ彼女達の出鼻を挫くようにそう言って、望月が悲しげにアマネを見る。
「同意を求められても、俺は何も言えませんよ」
「うん。君はそうだろうね。……ごめんね」
「謝らないでください。貴方に謝られたくてここにいる訳じゃありません」
同意を求められても、『一度目』を経験してニュクスがどれだけ強大であるのかを知っていても、やっぱりそれには同意できない。同意してしまえば意味がなかった。
同意してしまえばそれは諦めたのと同義だ。
改めてソファへ座ったSEESメンバーへ望月がニュクスへ出会う方法を教える。
一月三十一日のタルタロス。その屋上。そのチャンスをアマネはずっと待っていた。
「アマネ君」
「何ですか」
呼ばれて望月を見れば望月は真っ直ぐにアマネを見つめている。
「苺のショートケーキ、美味しかったよ。『前』のカップケーキも美味しかったけど、ケーキも美味しかった」
「それは、良かったです」
「僕があげたお土産。ずっと持っててくれたね」
「一度壊れてしまったんですけどね」
「でも直して付けてるんでしょ。人に贈り物したのも、アマネ君が初めてだったんだ」
「……二つに増えてしまいましたね」
「アマネ君が何をしようとしてるのか僕には分からないけど、あんまり無理、しないでね」
「無理だなんて」
「君が無茶をすれば、きっと湊君も悲しむから」
「っ……、俺は、諦めたくないだけです」
「うん」
望月が微笑む。その悲しげな笑みはきっとアマネのせいなのだろう。アマネが何をやろうとしているのか分からないなんて嘘だ。
「綾時さんこそ、諦めないでくださいよ。有里さんとか伊織先輩とか、『また』泣かせるつもりですか?」
「……うん」
その返事がどちらの意味なのか分からなかった。ソファから立ち上がった望月が玄関へ向かう。
「よいお年を。……って言うんだよね。年の瀬はさ」
アマネは一緒に出ていこうと考えていたくせに、一歩も動くことが出来なかった。
勝手にアマネがそう思っていただけかも知れない。ここで有里達の選択によって、アマネがここまでしてきた事が水の泡になるかどうかの瀬戸際でもあったからだ。
もし有里達が望月を殺して全てを忘れることを選んでいたら、アマネが荒垣を助け桐条当主を助け、この場にいる意味も無くなってしまう。
二年後に八十稲羽市で起こる騒動についても、そこへ至ることなく世界が消滅する。そうなってしまったらアマネをここへ『跳ばした』アレはどうするつもりなのか。
万が一再びやり直しを強いられたら、それはそれでアマネはやるのだろう。ただいつまで折れずにいられるのかは分からない。
今だってもう、アマネは何度も辛いと思っているのだ。
窓の外で雪が降り始め地面を白く染め始めた頃、有里と望月がラウンジへと降りてきた。ホッとした様子で駆け寄っていく寮生達に、アマネも安堵しつつも駆け寄れはしない。
「ニュクスを止めるのは不可能なことなのに、ね」
ニュクスへ立ち向かうことを選んだ彼女達の出鼻を挫くようにそう言って、望月が悲しげにアマネを見る。
「同意を求められても、俺は何も言えませんよ」
「うん。君はそうだろうね。……ごめんね」
「謝らないでください。貴方に謝られたくてここにいる訳じゃありません」
同意を求められても、『一度目』を経験してニュクスがどれだけ強大であるのかを知っていても、やっぱりそれには同意できない。同意してしまえば意味がなかった。
同意してしまえばそれは諦めたのと同義だ。
改めてソファへ座ったSEESメンバーへ望月がニュクスへ出会う方法を教える。
一月三十一日のタルタロス。その屋上。そのチャンスをアマネはずっと待っていた。
「アマネ君」
「何ですか」
呼ばれて望月を見れば望月は真っ直ぐにアマネを見つめている。
「苺のショートケーキ、美味しかったよ。『前』のカップケーキも美味しかったけど、ケーキも美味しかった」
「それは、良かったです」
「僕があげたお土産。ずっと持っててくれたね」
「一度壊れてしまったんですけどね」
「でも直して付けてるんでしょ。人に贈り物したのも、アマネ君が初めてだったんだ」
「……二つに増えてしまいましたね」
「アマネ君が何をしようとしてるのか僕には分からないけど、あんまり無理、しないでね」
「無理だなんて」
「君が無茶をすれば、きっと湊君も悲しむから」
「っ……、俺は、諦めたくないだけです」
「うん」
望月が微笑む。その悲しげな笑みはきっとアマネのせいなのだろう。アマネが何をやろうとしているのか分からないなんて嘘だ。
「綾時さんこそ、諦めないでくださいよ。有里さんとか伊織先輩とか、『また』泣かせるつもりですか?」
「……うん」
その返事がどちらの意味なのか分からなかった。ソファから立ち上がった望月が玄関へ向かう。
「よいお年を。……って言うんだよね。年の瀬はさ」
アマネは一緒に出ていこうと考えていたくせに、一歩も動くことが出来なかった。