ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
青一色の部屋でたゆたう紅茶からの湯気を、アマネは背もたれに身体を預けてぼんやりと眺める。
「……だから試験中に呼ぶなって」
「どうにもタイミングが掴めませんな」
試験用紙は全部埋めた後だったので構わないが、相変わらず試験中にアマネを呼んだイゴールは組んだ手の上からアマネを見た。その目はいつもと変わらないはずなのに、アマネの精神状態のせいか睨まれているようにも思える。
望月が現れていなくなって、ずっとアマネの精神は不安定だ。問題が佳境に向かってきたことを示しているのかも知れないが、問題を解決する根本的な解答は何一つ見つかっていない。
「ここに来て自分のやりてぇことが分からなくなってきたよ」
「左様で」
「……なぁイゴール。君から見て俺はどうだぁ?」
イゴールの視線がアマネからテーブルの上の紅茶へと移動する。
「どう、とは難しいご質問ですな」
「疲れてるって言われた」
「そうですな。憔悴しておられるかと」
「同じじゃねぇかよぉ」
ちょっと目を離した隙に紅茶の隣へお茶菓子が出ていた。イゴールの脇へ控えているテオドアを見れば目が合って控えめに微笑まれる。気を使って出してくれたところ悪いが、現実では試験中なので食べる訳にはいかない。
「少し休まれますか?」
「嫌だ」
訊かれて即答した。
「疲れてるってのも認めるよ。俺は今行き詰まってる。でもイゴール。それと俺が諦めるのは違う」
「その努力を誰にも認められずとも?」
「俺の努力は俺だけが知っていればいい。知らないことは時に幸せだぁ」
「ですが、『無知は時に罪』でもありましょう」
「そうだなぁ」
「……少し休まれますか?」
イゴールは笑わない。アマネも笑わなかった。
顔を上げると解答欄が全て埋められた試験用紙。時計を確認すればその前に確認した時から五分と経っていない。教壇の椅子へ座っていた試験監視の教師がこちらを見たが、すぐに興味を無くしたように目を逸らす。
周りの生徒の気が散らない様に深く息を吐いた。イゴールの言葉の真意を考える。
無知は罪だが知らなくて良いことだってあるのは確かだ。知らないからこそ成立することも世の中にはある。ではアマネの場合、何を知らずに生きていけるのか。
現状でもうアマネは色々と知ってしまっていた。イゴールはその事を知っている。
アマネの努力をイゴールは知っているのだ。それを努力と取るかわがままと取るかは別として。
「……気遣われたのか」
イゴールは『休むか』とは訊いてきたが、『諦めるか』とは言わなかった。
「……だから試験中に呼ぶなって」
「どうにもタイミングが掴めませんな」
試験用紙は全部埋めた後だったので構わないが、相変わらず試験中にアマネを呼んだイゴールは組んだ手の上からアマネを見た。その目はいつもと変わらないはずなのに、アマネの精神状態のせいか睨まれているようにも思える。
望月が現れていなくなって、ずっとアマネの精神は不安定だ。問題が佳境に向かってきたことを示しているのかも知れないが、問題を解決する根本的な解答は何一つ見つかっていない。
「ここに来て自分のやりてぇことが分からなくなってきたよ」
「左様で」
「……なぁイゴール。君から見て俺はどうだぁ?」
イゴールの視線がアマネからテーブルの上の紅茶へと移動する。
「どう、とは難しいご質問ですな」
「疲れてるって言われた」
「そうですな。憔悴しておられるかと」
「同じじゃねぇかよぉ」
ちょっと目を離した隙に紅茶の隣へお茶菓子が出ていた。イゴールの脇へ控えているテオドアを見れば目が合って控えめに微笑まれる。気を使って出してくれたところ悪いが、現実では試験中なので食べる訳にはいかない。
「少し休まれますか?」
「嫌だ」
訊かれて即答した。
「疲れてるってのも認めるよ。俺は今行き詰まってる。でもイゴール。それと俺が諦めるのは違う」
「その努力を誰にも認められずとも?」
「俺の努力は俺だけが知っていればいい。知らないことは時に幸せだぁ」
「ですが、『無知は時に罪』でもありましょう」
「そうだなぁ」
「……少し休まれますか?」
イゴールは笑わない。アマネも笑わなかった。
顔を上げると解答欄が全て埋められた試験用紙。時計を確認すればその前に確認した時から五分と経っていない。教壇の椅子へ座っていた試験監視の教師がこちらを見たが、すぐに興味を無くしたように目を逸らす。
周りの生徒の気が散らない様に深く息を吐いた。イゴールの言葉の真意を考える。
無知は罪だが知らなくて良いことだってあるのは確かだ。知らないからこそ成立することも世の中にはある。ではアマネの場合、何を知らずに生きていけるのか。
現状でもうアマネは色々と知ってしまっていた。イゴールはその事を知っている。
アマネの努力をイゴールは知っているのだ。それを努力と取るかわがままと取るかは別として。
「……気遣われたのか」
イゴールは『休むか』とは訊いてきたが、『諦めるか』とは言わなかった。