ペルソナP3P
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途中で回数を数えるのは止め、ひたすら階段を探して昇る作業に没頭した。途中で出てくるシャドウは相手が認識する前に倒していく。もちろんストレガを見つけることは忘れていないが、あいにくアマネにもアマネのペルソナであるイブリスにも山岸のような探索機能は無かった。
おそらくは『×××』を使えば居場所などすぐに分かるだろうが、その代償として頭痛が引き起こされる。僅かな痛みだとしても今から気を取られてしまうような隙を作るのは出来るだけ遠慮したかった。使わずともどうにかなる時は出来るだけそうしたい。
ストレガを見つけたのは三桁を超えた階で、タカヤとジンが出くわしたらしいシャドウと戦っていた。そこへ一緒にいると思っていたチドリの姿は無く、無意識に時計を確認するも止まっていて舌打ちを零す。チドリを止める為にわざわざ人間を辞めかけて来たというのに、無駄足だったらしい。
シャドウを倒し終えて銃をズボンへ挟んだタカヤが振り返る。
「これはこれは、意外な方が来たようですね」
「意外って程意外でもねぇだろぉ。……チドリさんは何処だぁ」
タカヤだけでは無くジンも振り返ってアマネを睨んだ。ともすれば今すぐ手榴弾を投げてきそうな態度だが、タカヤの手前それはしないだろう。ホルスターから召喚器だけを引き抜く。
「彼女が気になりますか」
「気になる気にならねぇって話じゃねぇんだよ。テメェ等の身勝手に付き合ってやる程俺は心が広くねぇんだぁ」
「身勝手ではありません。我々は人類の為に動いているのです」
「エセ新興宗教教主のフリは楽しいかぁ?」
「キサマッ――」
「ジン。……理解いただけないとは残念ですね。貴方は彼女達よりも柔軟な思考の持ち主のようですが、それでも我々とは相容れない」
「……もう一度言うが、実験被験者になった自分の人生に酔い痴れてる奴の考えに同意する程、俺は心が広くない」
「っ――」
初めてタカヤが動揺した。ズボンに差していた銃を抜いて銃口をアマネへ向けてくる。
左手をナイフの柄へ掛けながら、それでもアマネはタカヤから視線を逸らさなかった。
「実験で死ななかっただけいいんじゃねぇかとか、そういう事を言うつもりは無ぇんだけどさぁ。自分がされた実験が世界で一番酷ぇとか思ってんだとしたら、今すぐちょっと裏社会の研究所にボランティア行って来いよ」
「……貴方に何が分かるというのです」
「お前が実験のせいで短くなった命を、世界と一緒に捨てようとしてる事は分かってるよ。でもそれは俺にはただの自暴自棄に見える。世界と心中するのにお前の命は安すぎる」
「……私の命は軽いと?」
「今のお前では、なぁ」
タカヤは笑う。
「では、貴方の命は重いのですか。ふざけた話ですね」
「俺の命はお前よりももっと軽ぃよ。軽すぎて使い方が一つしかねぇ」
その使い方を決めたのはアマネ自身で、タカヤも決めたといえば自分で決めたのだ。だからアマネ達は互いを否定できる。自分の使い方を自分で決めた者として、相手の考えを肯定も否定も出来るのだ。
シャドウが人の気配に気づいて近付いてくるのがタカヤ達の向こうに見える。召喚器を構えて引き金を引けば、警戒するジンとタカヤの間を抜けた幻覚の弾がシャドウへと着弾して消滅させた。
アマネが二人を助ける様にシャドウを倒したことで、二人は訝しげにアマネを見る。特にジンの疑心は顕著で、タカヤのほうはそれとなく察しているのか。
二人を死なせたい訳ではない。ただ止めたいのだと、アマネはふざけた事を考えている。
「タカヤ。誰も迎えになんて来てくれねぇよ」
「貴方は……いったい何処まで知っているのでしょうね」
そう言って笑みを浮かべたタカヤの隣で、ジンが手榴弾を地面へと投げ付けた。どうやらただの手榴弾では無く煙幕だったらしく、周囲一面に白い煙が舞い上がる。
吸い込まないように腕で口元を押さえた向こうで、走り去っていく足音が聞こえた。追いかけようにも視界がハッキリせず、通路の先を何処へ行ったのかも分からない。
「くそっ……話の途中で逃げるとか失礼だろぉおおおお!」
叫んでみても返事は無く、むしろ煙幕の粉を吸ってしまって喉が痛くなる。咳き込んでいれば晴れていった煙幕の向こうには、当然だが二人の姿は無かった。
話をするにはまたあの二人を探さねばならない。タルタロスの外へいるであろうチドリも気になる。
だが目下としては、この階へ響き渡り始めた鎖の音へ注意するべきか。案外あの二人もこれが聞こえたから逃げたのかもしれない。
近づいてくる音へ舌打ちを一つ。ナイフと召喚器を抜いて振り返りつつ構える。
構えた先に姿を見せる“刈り取る者”はそんな些細な動きなど気にも留めず、悠然と近づいてくる動きを止めない。
このタルタロスの中で一番恐れるべき敵だが、アマネはもう奴に負けてやるほど弱くも暇でもなかった。
「ナイフの切れ味が変わってねぇか、確かめさせてもらうぜぇ」
言葉など分からないだろうに“刈り取る者”が咆哮をあげる。その“刈り取る者”へ向けてアマネは地面を蹴った。
こいつを倒したら、二人ではなくチドリを探しにタルタロスの外へ行くべきか。
おそらくは『×××』を使えば居場所などすぐに分かるだろうが、その代償として頭痛が引き起こされる。僅かな痛みだとしても今から気を取られてしまうような隙を作るのは出来るだけ遠慮したかった。使わずともどうにかなる時は出来るだけそうしたい。
ストレガを見つけたのは三桁を超えた階で、タカヤとジンが出くわしたらしいシャドウと戦っていた。そこへ一緒にいると思っていたチドリの姿は無く、無意識に時計を確認するも止まっていて舌打ちを零す。チドリを止める為にわざわざ人間を辞めかけて来たというのに、無駄足だったらしい。
シャドウを倒し終えて銃をズボンへ挟んだタカヤが振り返る。
「これはこれは、意外な方が来たようですね」
「意外って程意外でもねぇだろぉ。……チドリさんは何処だぁ」
タカヤだけでは無くジンも振り返ってアマネを睨んだ。ともすれば今すぐ手榴弾を投げてきそうな態度だが、タカヤの手前それはしないだろう。ホルスターから召喚器だけを引き抜く。
「彼女が気になりますか」
「気になる気にならねぇって話じゃねぇんだよ。テメェ等の身勝手に付き合ってやる程俺は心が広くねぇんだぁ」
「身勝手ではありません。我々は人類の為に動いているのです」
「エセ新興宗教教主のフリは楽しいかぁ?」
「キサマッ――」
「ジン。……理解いただけないとは残念ですね。貴方は彼女達よりも柔軟な思考の持ち主のようですが、それでも我々とは相容れない」
「……もう一度言うが、実験被験者になった自分の人生に酔い痴れてる奴の考えに同意する程、俺は心が広くない」
「っ――」
初めてタカヤが動揺した。ズボンに差していた銃を抜いて銃口をアマネへ向けてくる。
左手をナイフの柄へ掛けながら、それでもアマネはタカヤから視線を逸らさなかった。
「実験で死ななかっただけいいんじゃねぇかとか、そういう事を言うつもりは無ぇんだけどさぁ。自分がされた実験が世界で一番酷ぇとか思ってんだとしたら、今すぐちょっと裏社会の研究所にボランティア行って来いよ」
「……貴方に何が分かるというのです」
「お前が実験のせいで短くなった命を、世界と一緒に捨てようとしてる事は分かってるよ。でもそれは俺にはただの自暴自棄に見える。世界と心中するのにお前の命は安すぎる」
「……私の命は軽いと?」
「今のお前では、なぁ」
タカヤは笑う。
「では、貴方の命は重いのですか。ふざけた話ですね」
「俺の命はお前よりももっと軽ぃよ。軽すぎて使い方が一つしかねぇ」
その使い方を決めたのはアマネ自身で、タカヤも決めたといえば自分で決めたのだ。だからアマネ達は互いを否定できる。自分の使い方を自分で決めた者として、相手の考えを肯定も否定も出来るのだ。
シャドウが人の気配に気づいて近付いてくるのがタカヤ達の向こうに見える。召喚器を構えて引き金を引けば、警戒するジンとタカヤの間を抜けた幻覚の弾がシャドウへと着弾して消滅させた。
アマネが二人を助ける様にシャドウを倒したことで、二人は訝しげにアマネを見る。特にジンの疑心は顕著で、タカヤのほうはそれとなく察しているのか。
二人を死なせたい訳ではない。ただ止めたいのだと、アマネはふざけた事を考えている。
「タカヤ。誰も迎えになんて来てくれねぇよ」
「貴方は……いったい何処まで知っているのでしょうね」
そう言って笑みを浮かべたタカヤの隣で、ジンが手榴弾を地面へと投げ付けた。どうやらただの手榴弾では無く煙幕だったらしく、周囲一面に白い煙が舞い上がる。
吸い込まないように腕で口元を押さえた向こうで、走り去っていく足音が聞こえた。追いかけようにも視界がハッキリせず、通路の先を何処へ行ったのかも分からない。
「くそっ……話の途中で逃げるとか失礼だろぉおおおお!」
叫んでみても返事は無く、むしろ煙幕の粉を吸ってしまって喉が痛くなる。咳き込んでいれば晴れていった煙幕の向こうには、当然だが二人の姿は無かった。
話をするにはまたあの二人を探さねばならない。タルタロスの外へいるであろうチドリも気になる。
だが目下としては、この階へ響き渡り始めた鎖の音へ注意するべきか。案外あの二人もこれが聞こえたから逃げたのかもしれない。
近づいてくる音へ舌打ちを一つ。ナイフと召喚器を抜いて振り返りつつ構える。
構えた先に姿を見せる“刈り取る者”はそんな些細な動きなど気にも留めず、悠然と近づいてくる動きを止めない。
このタルタロスの中で一番恐れるべき敵だが、アマネはもう奴に負けてやるほど弱くも暇でもなかった。
「ナイフの切れ味が変わってねぇか、確かめさせてもらうぜぇ」
言葉など分からないだろうに“刈り取る者”が咆哮をあげる。その“刈り取る者”へ向けてアマネは地面を蹴った。
こいつを倒したら、二人ではなくチドリを探しにタルタロスの外へ行くべきか。