ペルソナP3P
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日曜日になって、チドリの行方はいまだ知れない。タカヤ達と一緒にいるのだろうが今の彼女はその事をどう思っているのか。
きっと苦痛を覚えているのだろうなと思うのはアマネの勝手な推測だ。けれども“似ている”のでそうそう間違ってはいないだろう。
助けられるかを、考える事はやめた。
こめかみへ手を当てて『×××』を使いタカヤの居場所を探る。彼等は昨日チドリを取り返しに行ってからタルタロスの中へいるらしかった。それでは影時間にならないと彼等へ会いに行く事は出来ない。
だがアマネの記憶では確か、影時間になって直ぐにチドリはSEESをタルタロス前へ呼び出す筈だ。だとすればアマネがSEESより前にタカヤ達の元へ向かうのは不可能に近い。
手は無しかと諦めかけた思考を、首を振って霧散させる。
「影時間は普通の時間とは流れが違う……向こうの一時間がこっちの一日だとして……イザナミに……いや無理だなぁ」
二年後に関わるシャドウ的存在に頼むのは、時間も無いし常識的にありえない。そもそも協力してくれるとは限らなかった。ならばまだ可能性がある者の元へ行った方がいい。
行き先を決めてアパートを出る。今日はもう戻ってくるつもりは無いので、ナイフも召喚器も隠し持っていた。警察に話しかけられたりしたらアウトだ。
タルタロスの昼の姿である学校とは逆の、ポロニアンモールの路地奥。ベルベットルームへ繋がるドアを開けると、相変わらずイゴールが手を組んで座っている。その傍らに立っていたテオドアへ軽く挨拶をして、イゴールの向かいの席へ腰を降ろした。
「タルタロスの中へ繋がるドア、あるかぁ?」
「……はてさて、どういった意図でございますかな?」
「影時間より早くにタルタロスの中へ行きてぇ。向こうと外じゃ時間の流れが違うが、このベルベットルームは“どちらから入っても等しく時間が流れてる”だろぉ。ということはここを経由すりゃ外が昼間でも影時間に適応して入れると思ったんだぁ」
イゴールが目だけでアマネを見る。
「更に言うなら現状俺の身体は路地で呆然と突っ立てて、意識だけがここへ来ているとする。人間は意識でしかここへ来れないとしよう。だがイゴール。俺は『シャドウ寄りの人間』だぁ」
「言い切られるのですか」
「言い切る。同時にイゴールやエリザベス、テオドアやマーガレットがこの部屋から出られる事も知ってる。タルタロスの中や外へ自由に、なぁ」
思い出すのはエリザベスが『兄』と外を歩き回っていた姿や、八十神高校の文化祭で勝手に出店していたマーガレットの姿だ。
エリザベス達は特に制限も無さそうにベルベットルームから出歩いていた。どちらの時間も何処の場所も関係なく、だ。
つまりここは全ての場所と繋がっている。同時に『シャドウ寄りの人間である』アマネは、ヒトよりシャドウやペルソナに近くもあり遠くもあるイゴール達と“同じ”だとも考えられるのだ。
その仮説だらけの考えが正しいのであれば。
「俺はこのベルベットルームを経由して、タルタロスへもテレビの中へも行ける」
無論意識だけでは無く身体ごとだ。でなければ意味が無い。
エリザベス達が実は実体を持っていないというのであれば話はまた違ってくるが、アマネの作ったものを食べられる彼女達が意識だけの存在だとは、個人的な思いで言えば考えたくも無かった。
言い切ったアマネをイゴールは暫く見つめていたが、やがておもむろに組んでいた手を解くと、周囲に並んでいた扉の一つを指差す。テオドアがその扉の傍らへ移動して待機するのに、その扉がタルタロスへの扉だと悟った。
「ですがお客人。一つお忘れになってはいけません。貴方は“ヒト”です」
椅子から立ち上がりかけた姿勢のままイゴールを振り返る。
「――今更。俺は最初からずっと“ヒトであり続けたい”と願ってる」
「ならば問題はございません」
少しだけ満足そうに口角を上げたイゴールへ、今度また何かお菓子でも作って持って来てやるかと思いつつ席を離れた。テオドアの控えている扉へ近付けば、テオドアがエレベーターボーイというより執事の様に扉を開ける。
ドアの向こうはタルタロスのエントランスだ。見える場所にストレガの姿は無い。
潜り抜ける前にテオドアを見れば彼はぎこちなく首を傾げた。
「貴方は姉上達と親しいのですね」
「エリザベスとは多分目的が同じで、マーガレットにはからかわれてるだけだぁ。でもそれを親しいと言うなら、俺は君とも親しくなりてぇよ」
「それは、恐れ多い事ですね」
「そこはありがとうって言って欲しかった」
扉を潜れば背後で扉が閉められる。携帯を確認すると止まっていた。相変わらず荘厳な雰囲気の中に佇む上階への階段。
ストレガがタルタロスへ来ている理由としては、彼等も『最後の日』の為に最上階を目指している事が考えられる。SEESより人数の少ない彼等が最上階へ到るには、それこそ必死な思いをしているのだろうが、よく考えるとアマネは一人なのでもっと苦労しなければならない。
出入りする度に構造の変わるタルタロスを攻略するのは後回しにして、今はストレガを探す為に階段を上がる事にした。
きっと苦痛を覚えているのだろうなと思うのはアマネの勝手な推測だ。けれども“似ている”のでそうそう間違ってはいないだろう。
助けられるかを、考える事はやめた。
こめかみへ手を当てて『×××』を使いタカヤの居場所を探る。彼等は昨日チドリを取り返しに行ってからタルタロスの中へいるらしかった。それでは影時間にならないと彼等へ会いに行く事は出来ない。
だがアマネの記憶では確か、影時間になって直ぐにチドリはSEESをタルタロス前へ呼び出す筈だ。だとすればアマネがSEESより前にタカヤ達の元へ向かうのは不可能に近い。
手は無しかと諦めかけた思考を、首を振って霧散させる。
「影時間は普通の時間とは流れが違う……向こうの一時間がこっちの一日だとして……イザナミに……いや無理だなぁ」
二年後に関わるシャドウ的存在に頼むのは、時間も無いし常識的にありえない。そもそも協力してくれるとは限らなかった。ならばまだ可能性がある者の元へ行った方がいい。
行き先を決めてアパートを出る。今日はもう戻ってくるつもりは無いので、ナイフも召喚器も隠し持っていた。警察に話しかけられたりしたらアウトだ。
タルタロスの昼の姿である学校とは逆の、ポロニアンモールの路地奥。ベルベットルームへ繋がるドアを開けると、相変わらずイゴールが手を組んで座っている。その傍らに立っていたテオドアへ軽く挨拶をして、イゴールの向かいの席へ腰を降ろした。
「タルタロスの中へ繋がるドア、あるかぁ?」
「……はてさて、どういった意図でございますかな?」
「影時間より早くにタルタロスの中へ行きてぇ。向こうと外じゃ時間の流れが違うが、このベルベットルームは“どちらから入っても等しく時間が流れてる”だろぉ。ということはここを経由すりゃ外が昼間でも影時間に適応して入れると思ったんだぁ」
イゴールが目だけでアマネを見る。
「更に言うなら現状俺の身体は路地で呆然と突っ立てて、意識だけがここへ来ているとする。人間は意識でしかここへ来れないとしよう。だがイゴール。俺は『シャドウ寄りの人間』だぁ」
「言い切られるのですか」
「言い切る。同時にイゴールやエリザベス、テオドアやマーガレットがこの部屋から出られる事も知ってる。タルタロスの中や外へ自由に、なぁ」
思い出すのはエリザベスが『兄』と外を歩き回っていた姿や、八十神高校の文化祭で勝手に出店していたマーガレットの姿だ。
エリザベス達は特に制限も無さそうにベルベットルームから出歩いていた。どちらの時間も何処の場所も関係なく、だ。
つまりここは全ての場所と繋がっている。同時に『シャドウ寄りの人間である』アマネは、ヒトよりシャドウやペルソナに近くもあり遠くもあるイゴール達と“同じ”だとも考えられるのだ。
その仮説だらけの考えが正しいのであれば。
「俺はこのベルベットルームを経由して、タルタロスへもテレビの中へも行ける」
無論意識だけでは無く身体ごとだ。でなければ意味が無い。
エリザベス達が実は実体を持っていないというのであれば話はまた違ってくるが、アマネの作ったものを食べられる彼女達が意識だけの存在だとは、個人的な思いで言えば考えたくも無かった。
言い切ったアマネをイゴールは暫く見つめていたが、やがておもむろに組んでいた手を解くと、周囲に並んでいた扉の一つを指差す。テオドアがその扉の傍らへ移動して待機するのに、その扉がタルタロスへの扉だと悟った。
「ですがお客人。一つお忘れになってはいけません。貴方は“ヒト”です」
椅子から立ち上がりかけた姿勢のままイゴールを振り返る。
「――今更。俺は最初からずっと“ヒトであり続けたい”と願ってる」
「ならば問題はございません」
少しだけ満足そうに口角を上げたイゴールへ、今度また何かお菓子でも作って持って来てやるかと思いつつ席を離れた。テオドアの控えている扉へ近付けば、テオドアがエレベーターボーイというより執事の様に扉を開ける。
ドアの向こうはタルタロスのエントランスだ。見える場所にストレガの姿は無い。
潜り抜ける前にテオドアを見れば彼はぎこちなく首を傾げた。
「貴方は姉上達と親しいのですね」
「エリザベスとは多分目的が同じで、マーガレットにはからかわれてるだけだぁ。でもそれを親しいと言うなら、俺は君とも親しくなりてぇよ」
「それは、恐れ多い事ですね」
「そこはありがとうって言って欲しかった」
扉を潜れば背後で扉が閉められる。携帯を確認すると止まっていた。相変わらず荘厳な雰囲気の中に佇む上階への階段。
ストレガがタルタロスへ来ている理由としては、彼等も『最後の日』の為に最上階を目指している事が考えられる。SEESより人数の少ない彼等が最上階へ到るには、それこそ必死な思いをしているのだろうが、よく考えるとアマネは一人なのでもっと苦労しなければならない。
出入りする度に構造の変わるタルタロスを攻略するのは後回しにして、今はストレガを探す為に階段を上がる事にした。