ペルソナP3P
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「ん!」
「貴方はカンタですか」
突き出された八つ橋の箱を受け取る。内容量の少ないソレはおそらく雲雀への土産のついでだろう。雲雀も今頃八つ橋を食べているのか。
京都の土産をアマネに渡した錦は、機嫌悪そうに頭を掻いて顔を逸らした。
「ったく、後輩に土産買ってこなくたってお前も三年になった時に行けるのによ」
「じゃあなんで買ってきたんです」
「かわいそうだろ」
本気でそう思っているらしく、何を言っているんだという眼を向けられる。実際は真田からも貰っているのだがそれは黙っておこうと決めた。言ったところで更に機嫌を悪くするのは目に見えている。
「京都は楽しかったですか?」
「おう。楽しかったよ」
裏返して内容表示の賞味期限を確認しつつ聞けば錦は壁に寄りかかった。
「嵐山とか最高だな。竹林があんなにいい場所だなんて分かるか普通?」
ちょっとチョイスが微妙だが、本人は満足そうだったので何も言わない。そのまま竹林について語りだしていた錦が、ふとアマネの後ろを見て軽く手を振った。
振り返れば廊下を歩いてきていた望月と目が合う。
「よお望月。今日はナンパしてねえのか」
「やだなあ、ナンパなんていつもしてないよ。女の子は可愛いと思うけど」
「言っとくがコイツは女顔でも女じゃねーぞ」
「知ってるよ。でも笑うと可愛いよね」
「うわ……」
「あれ?」
ドン引きしている錦と何が変なのか分かっていない望月とに挟まれて、一番何とも言えないのはアマネだろう。女顔なのは認めるが、可愛いは平然と男子高校生にいう言葉ではない。
同じ学年である事や修学旅行というイベントのあった後だからか、二人は違うクラスでも知り合いのようだった。変わった組み合わせだとは思うが、錦が意外と面倒見のいい事を考えると望月も世話になっているのだろう。
その望月は小さな紙袋をアマネへと差し出してきた。よくある土産物屋の袋で、その中身のせいで歪に膨らんでいる。望月を見れば目があって微笑まれた。
「お土産。貰ってくれると嬉しいんだけど」
「ありがとうございますっ」
「お前オレの八つ橋とテンション違う」
後ろで錦がちょっと落ち込んでいるが、もちろん八つ橋だって嬉しい。嬉しいのだがそれと『望月から貰う』のはアマネの中では重さが違ってくるのだ。
袋を開ければ中から出てきたのは、やはりちりめん作りのキーホルダーである。手の上で転がるそれを後ろから錦が覗き込む。
「……男へやるにはちょっと可愛すぎやしねえ?」
「やっぱりそう思う? 僕も悩んだんだけど――」
「『悩むくらいなら買った方がいい』」
「――悩むくらいなら、って、あれ?」
望月がアマネの言葉へ不思議がっているのをあえて気づかないフリをして、ポケットからアパートの鍵が付いているキーホルダーを取り出す。それは今貰ったばかりの物と全く同じだが、数年分使い込まれていた。一度は金具が駄目にもなってしまったが、それでも付け続けている理由を、アマネ以外誰も知らない。
古いのと新しいのとで並んだ二つのキーホルダーを錦と望月へ見せる。
「ほら、二人なら寂しくないでしょう?」
「ロマンチストっつーか、スゲー嬉しそうだなお前」
「もちろん八つ橋だって嬉しいですよ」
「貴方はカンタですか」
突き出された八つ橋の箱を受け取る。内容量の少ないソレはおそらく雲雀への土産のついでだろう。雲雀も今頃八つ橋を食べているのか。
京都の土産をアマネに渡した錦は、機嫌悪そうに頭を掻いて顔を逸らした。
「ったく、後輩に土産買ってこなくたってお前も三年になった時に行けるのによ」
「じゃあなんで買ってきたんです」
「かわいそうだろ」
本気でそう思っているらしく、何を言っているんだという眼を向けられる。実際は真田からも貰っているのだがそれは黙っておこうと決めた。言ったところで更に機嫌を悪くするのは目に見えている。
「京都は楽しかったですか?」
「おう。楽しかったよ」
裏返して内容表示の賞味期限を確認しつつ聞けば錦は壁に寄りかかった。
「嵐山とか最高だな。竹林があんなにいい場所だなんて分かるか普通?」
ちょっとチョイスが微妙だが、本人は満足そうだったので何も言わない。そのまま竹林について語りだしていた錦が、ふとアマネの後ろを見て軽く手を振った。
振り返れば廊下を歩いてきていた望月と目が合う。
「よお望月。今日はナンパしてねえのか」
「やだなあ、ナンパなんていつもしてないよ。女の子は可愛いと思うけど」
「言っとくがコイツは女顔でも女じゃねーぞ」
「知ってるよ。でも笑うと可愛いよね」
「うわ……」
「あれ?」
ドン引きしている錦と何が変なのか分かっていない望月とに挟まれて、一番何とも言えないのはアマネだろう。女顔なのは認めるが、可愛いは平然と男子高校生にいう言葉ではない。
同じ学年である事や修学旅行というイベントのあった後だからか、二人は違うクラスでも知り合いのようだった。変わった組み合わせだとは思うが、錦が意外と面倒見のいい事を考えると望月も世話になっているのだろう。
その望月は小さな紙袋をアマネへと差し出してきた。よくある土産物屋の袋で、その中身のせいで歪に膨らんでいる。望月を見れば目があって微笑まれた。
「お土産。貰ってくれると嬉しいんだけど」
「ありがとうございますっ」
「お前オレの八つ橋とテンション違う」
後ろで錦がちょっと落ち込んでいるが、もちろん八つ橋だって嬉しい。嬉しいのだがそれと『望月から貰う』のはアマネの中では重さが違ってくるのだ。
袋を開ければ中から出てきたのは、やはりちりめん作りのキーホルダーである。手の上で転がるそれを後ろから錦が覗き込む。
「……男へやるにはちょっと可愛すぎやしねえ?」
「やっぱりそう思う? 僕も悩んだんだけど――」
「『悩むくらいなら買った方がいい』」
「――悩むくらいなら、って、あれ?」
望月がアマネの言葉へ不思議がっているのをあえて気づかないフリをして、ポケットからアパートの鍵が付いているキーホルダーを取り出す。それは今貰ったばかりの物と全く同じだが、数年分使い込まれていた。一度は金具が駄目にもなってしまったが、それでも付け続けている理由を、アマネ以外誰も知らない。
古いのと新しいのとで並んだ二つのキーホルダーを錦と望月へ見せる。
「ほら、二人なら寂しくないでしょう?」
「ロマンチストっつーか、スゲー嬉しそうだなお前」
「もちろん八つ橋だって嬉しいですよ」