ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
明後日には二三年が修学旅行へ行くという日に、休み時間に次の授業の支度をしていると教室の出口に真田が現れた。彼のファンなのだろうクラスの女子が小さく黄色い声を上げるのが、聞こえているのかいないのか無視をして教室を覗き込み、アマネを見て手招く。
桐条といい真田といい、何故こうも目立つ人がアマネを探しに来るのか。そう思いつつも誰にも連絡先を教えていない事を思い出して納得した。アマネから行くことは殆ど無いのだから、彼らから来なければアマネには会えない。
席を立って真田の元へ行けば真田は朗らかに笑みを浮かべた。
「暇か? 頼みがあるんだ」
「暇じゃなかったら聞かなくていいんですか」
「明後日から修学旅行に行くんだが、その間の天田の面倒を見てくれないか」
暇かどうかを尋ねたのは向こうの癖にこちらの都合を聞かずに喋りだす真田へ、そういう男だと分かっているとはいえ眉を顰めてしまう。だが内容は至って普通だった。
そういえば『前』の時は天田とコロマル、それから一年だったアマネだけが留守番だったのを思い出す。普段から食事を作っていたから別に気にしていなかったが、なるほどアマネがいないとあの寮は子供だけになってしまうのだ。
無論天田だって二泊三日ほどの短期間なら自力で食事もどうにか出来るだろう。大人びた子であるし、そもそも二年前に親を亡くしてから自分の事は全て自分でやっていた筈だ。
だが真田が心配するのも尤もだとは思う。
「どうして俺なんです」
「おにぎりが美味かった」
他に任せられる者がいるのではという意味で尋ねたら、返された言葉は率直だった。
「それに天田もお前に懐いてるからな」
「……懐いてはいねぇと思うんですが、桐条先輩や他の皆さんは俺があの寮へ出入りしていいって思ってるんですか」
「別にいいだろ。お前は“知っている”んだからな」
真田はあっけらかんと言い切る。むしろ知らない者はあまり寮へ入れられないだろう。そういう点ではアマネは最適か。怪しい事を除けば。
自分で自分を『怪しい』と称した事に内心落ち込みつつ溜息を吐く。
「天田君に俺が行く事をお伝えください。二泊三日分でいいんですよね」
「ああ。助かる」
「……真田先輩は、もう少し俺を警戒なさっては如何ですか?」
老婆心という訳ではないが、アマネだったらこんな怪しい相手を警戒せずにはいられない。
「? 自分で言っただろう。お前を信じるかどうかはオレ達自身の問題だと。だからオレはお前を信じる事にしただけだ」
そう言って真っ直ぐにアマネを見るこの人が、やはり少し苦手だ。
二三年が修学旅行へ旅立った日の放課後。先輩達がいないからきっと空いてるとゲーセンへの佐藤の誘いを断り、小学校のほうの校門で待っていると鞄を背負った天田が駆けてきた。別に走って来ずとも良かったのに息を切らせてやってきた天田は、アマネを見上げて何故か嬉しそうである。
「……おかえりぃ」
「ここまだ学校ですよ。別にいいですけど」
「家に帰るまでが帰り道です? 俺あんまり言われた事無ぇからどうでもいいかなぁ」
「そういえばアマネさんは一人暮らしでしたね」
「両親ももう亡くなってるかなぁ」
巌戸台分寮へ帰る為に歩き出しながら言うと、天田が驚いたようにアマネを見た。
「……高校生だから一人暮らしなんだと思ってました。その、ごめんなさい」
「謝る事じゃねぇよ。別に親がいねぇのは俺に限った事じゃねぇだろぉ」
これから寮へ帰る前にスーパーへ寄って、夕食の材料を買わねばならない。どうせなら天田の食べたいものを作ってやろうと思い、前もって天田に一緒に帰る約束を真田と通してしておいたのだ。天田は荒垣のことがあった後アパートへ泊めてもいるので、他のメンバーへ比べれば抵抗も無かった。
スーパーへ向かいながらこの後の予定について考える。この前寮のキッチンを借りてホットミルクとおにぎりを作ったが、本格的に夕食を作るとなれば少し掃除をするのが先だろう。
真田から頼まれたのは真田達がいない間の天田の食事に関してだけだが、少し掃除するのは許されるだろうか。アマネや荒垣がいないだけであそこまでキッチンが使われなくなるのかと考えなくも無い。
「天田君は、いつも何食べてんだぁ?」
「えーと、コンビニ弁当とか、出来合いとか」
「……Si 分かった」
思ったより成長期の子供に深刻な問題だった。モノレールの中の座席で思わず頭を抱えてしまうくらいには酷い。
隣に座っていた天田もこれは良くないと思ってはいたのだろう。だからアマネのそんな変な行動にも何も言わなかった。アマネが知っている『二年後』には成長期を迎えてだいぶ成長するのだが、それすら今の状態では不安になる。
「荒垣さんは偉大だった……!」
「カレーは美味しかったですけど、偉大かどうかはちょっと……」
「俺が不甲斐ねぇばかりに天田の身長が伸び悩んだら俺は泣く。修学旅行から真田先輩が帰ってきたら直談判する。これじゃ他の皆も同じ感じだろぉ? 伊織先輩なんか絶対三食カップラーメンだろぉ。もっと健康的に……」
「なんで食事に対してそんなに必死なんですか」
桐条といい真田といい、何故こうも目立つ人がアマネを探しに来るのか。そう思いつつも誰にも連絡先を教えていない事を思い出して納得した。アマネから行くことは殆ど無いのだから、彼らから来なければアマネには会えない。
席を立って真田の元へ行けば真田は朗らかに笑みを浮かべた。
「暇か? 頼みがあるんだ」
「暇じゃなかったら聞かなくていいんですか」
「明後日から修学旅行に行くんだが、その間の天田の面倒を見てくれないか」
暇かどうかを尋ねたのは向こうの癖にこちらの都合を聞かずに喋りだす真田へ、そういう男だと分かっているとはいえ眉を顰めてしまう。だが内容は至って普通だった。
そういえば『前』の時は天田とコロマル、それから一年だったアマネだけが留守番だったのを思い出す。普段から食事を作っていたから別に気にしていなかったが、なるほどアマネがいないとあの寮は子供だけになってしまうのだ。
無論天田だって二泊三日ほどの短期間なら自力で食事もどうにか出来るだろう。大人びた子であるし、そもそも二年前に親を亡くしてから自分の事は全て自分でやっていた筈だ。
だが真田が心配するのも尤もだとは思う。
「どうして俺なんです」
「おにぎりが美味かった」
他に任せられる者がいるのではという意味で尋ねたら、返された言葉は率直だった。
「それに天田もお前に懐いてるからな」
「……懐いてはいねぇと思うんですが、桐条先輩や他の皆さんは俺があの寮へ出入りしていいって思ってるんですか」
「別にいいだろ。お前は“知っている”んだからな」
真田はあっけらかんと言い切る。むしろ知らない者はあまり寮へ入れられないだろう。そういう点ではアマネは最適か。怪しい事を除けば。
自分で自分を『怪しい』と称した事に内心落ち込みつつ溜息を吐く。
「天田君に俺が行く事をお伝えください。二泊三日分でいいんですよね」
「ああ。助かる」
「……真田先輩は、もう少し俺を警戒なさっては如何ですか?」
老婆心という訳ではないが、アマネだったらこんな怪しい相手を警戒せずにはいられない。
「? 自分で言っただろう。お前を信じるかどうかはオレ達自身の問題だと。だからオレはお前を信じる事にしただけだ」
そう言って真っ直ぐにアマネを見るこの人が、やはり少し苦手だ。
二三年が修学旅行へ旅立った日の放課後。先輩達がいないからきっと空いてるとゲーセンへの佐藤の誘いを断り、小学校のほうの校門で待っていると鞄を背負った天田が駆けてきた。別に走って来ずとも良かったのに息を切らせてやってきた天田は、アマネを見上げて何故か嬉しそうである。
「……おかえりぃ」
「ここまだ学校ですよ。別にいいですけど」
「家に帰るまでが帰り道です? 俺あんまり言われた事無ぇからどうでもいいかなぁ」
「そういえばアマネさんは一人暮らしでしたね」
「両親ももう亡くなってるかなぁ」
巌戸台分寮へ帰る為に歩き出しながら言うと、天田が驚いたようにアマネを見た。
「……高校生だから一人暮らしなんだと思ってました。その、ごめんなさい」
「謝る事じゃねぇよ。別に親がいねぇのは俺に限った事じゃねぇだろぉ」
これから寮へ帰る前にスーパーへ寄って、夕食の材料を買わねばならない。どうせなら天田の食べたいものを作ってやろうと思い、前もって天田に一緒に帰る約束を真田と通してしておいたのだ。天田は荒垣のことがあった後アパートへ泊めてもいるので、他のメンバーへ比べれば抵抗も無かった。
スーパーへ向かいながらこの後の予定について考える。この前寮のキッチンを借りてホットミルクとおにぎりを作ったが、本格的に夕食を作るとなれば少し掃除をするのが先だろう。
真田から頼まれたのは真田達がいない間の天田の食事に関してだけだが、少し掃除するのは許されるだろうか。アマネや荒垣がいないだけであそこまでキッチンが使われなくなるのかと考えなくも無い。
「天田君は、いつも何食べてんだぁ?」
「えーと、コンビニ弁当とか、出来合いとか」
「……Si 分かった」
思ったより成長期の子供に深刻な問題だった。モノレールの中の座席で思わず頭を抱えてしまうくらいには酷い。
隣に座っていた天田もこれは良くないと思ってはいたのだろう。だからアマネのそんな変な行動にも何も言わなかった。アマネが知っている『二年後』には成長期を迎えてだいぶ成長するのだが、それすら今の状態では不安になる。
「荒垣さんは偉大だった……!」
「カレーは美味しかったですけど、偉大かどうかはちょっと……」
「俺が不甲斐ねぇばかりに天田の身長が伸び悩んだら俺は泣く。修学旅行から真田先輩が帰ってきたら直談判する。これじゃ他の皆も同じ感じだろぉ? 伊織先輩なんか絶対三食カップラーメンだろぉ。もっと健康的に……」
「なんで食事に対してそんなに必死なんですか」