ペルソナP3P
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「という訳で隣のクラスに転校生が来た」
「何が“という訳”なのか分かりません」
昼休みに購買へノートを買いに行ったら、自販機で飲み物を買っていたらしい錦へ捕まった。この色素の薄い先輩はアマネを引っ張って渡り廊下か出られる場所にある柿の木の下へ連れて来ると、腰を降ろしてまぁ座れと隣の地面を叩く。
そこにアマネが座った矢先の言葉である。
アマネとしては“とうとう来たのか”という感慨深さしか感じられないが、錦や他の生徒達にとってはただ“転校生が来た”というだけだ。その転校生が実は“人”とは少し違う事を知っているのは、アイギスが思い出していない以上アマネだけである。
缶珈琲を手に錦が遠くを眺めるような目をした。
「まあそれはどうでもいいんだ。野郎の転校生に興味は無えし」
「潔いですねぇ。女子ならいいんですか」
「そうだな黒髪ポニテのキツイ性格なら……そうじゃねーよ! お前に聞きてえことがあったんだよ!」
少し錦の好みを把握したところで本題を思い出したらしく、ぐるりと錦が振り向いてアマネを見る。
「お前、“並盛”って知ってるか?」
「――、一応は。並盛町でしょう?」
予想外の単語が出てきた事で、僅かに返事が遅れてしまった。錦はそのアマネの態度をどう思ったのか鼻を鳴らして缶珈琲へ口を付ける。
「オレ中学の時その並盛だったんだけどよ。並盛って“雲雀恭弥”って奴が牛耳ってんだよ」
「その名前は知ってます。『風紀財団』の創立者ですね」
「そう。その“雲雀恭弥”って奴なんだけどよ、オレの一つ下でまだ高一なんだよ。つまりお前と同じだな」
「それは……若いですね」
「中学じゃソイツが風紀委員長やってて、オレこの髪だから結構何度も注意されてよー。それなりにケンカも強いってんで気に入られてたっぽいんだわ」
「ケンカで気に入られるって」
口では気に入られる理由へ呆れたかの様に言ったが、実際は錦が何を言いたいのか分かってきて内心冷や汗が流れていた。それが分かったように錦がアマネを真っ直ぐに見やる。
「ソイツがこの前久しぶりに連絡してきたと思ったらよ、“通う学校にアマネって名前の奴がいないか”ってきたんだぜ」
やっぱりか。と頭を抱えたくなるのを寸前で堪える。よく考えてみれば確かにアイツはどうやってアマネの居場所を知ったのか。
アパートの住所はメールで送ったが、送った相手は雲雀ではない。そこから伝わったにしてもアパートは見張られていたし、アマネは逃げていたので居場所を特定するのは難しかった筈だ。
だが雲雀は逃げている途中のアマネを見つけ出した。いくらアマネが最初は人目に付きやすいように逃げていたとは言え、雲雀は今までアマネの見た目を知らなかったのだから、普通であればおかしい。
いくらアマネの顔立ちが昔から変わっていないとはいえ、もしかしたら顔が変わっているかもしれないと考えることだって雲雀には出来たはずだ。それがなかったというのは笹川から聞いていたというのもあるかもしれないが、それだって“不確定”である。
そこまで考えて、まさかと思って錦を見れば缶珈琲を飲み干したところだった。
「走ってるバイクから振り落とされる気分が分かるか」
制服の袖を捲って腕の青痣を見せつけてくる錦に、アマネは申し訳無い気分になる。つまり彼は、雲雀に頼まれてアマネ探しを手伝わされたのだ。
頼まれたという表現だってきっと正しくない。命じられてとか脅迫されて、というべきだろう。あの雲雀がお願いをすることは少ないし、そもそもが唯我独尊な男だ。
錦の言い方から推測するにアマネのアパートへ届けに来る前か来た直後に、雲雀は巌戸台の地理を調べるのが面倒で現在その付近へ住んでいる錦を呼び出した。そうしてバイクでアマネを探し、見つけたところで錦を振り落としてアマネを助けに乱入。そのままアマネの頼みを聞いて走ってくれたのだろう。錦の事など放置して。
自分が悪い訳ではないが、アマネは気分では無く本気で申し訳なくなって錦へ頭を下げた。
「……幼馴染が申し訳ありません」
「いやもうアイツが横暴なのは昔から……幼馴染!?」
「あの馬鹿には後で言っておきますマジで本当すみません」
「おま、謝る前にもうちょっとその事詳しく説明しろ! 誰が誰の幼馴染だ!?」
何だか違う方向へ驚かれているが、アマネとしては、そこはどうでもいい。雲雀と幼馴染だと言って驚かれるのなど今に始まった事では無いのだ。
問題はアマネが頼んだせいで動いた雲雀が他人に迷惑を掛けていたことである。それもそれでやはり今に始まった事ではないが、だからといって無視していいことではないだろう。
ここは雲雀の統治する“並盛”ではないのだから。
「あれ、でも風紀財団で社会的になったからいいのかぁ?」
「良くねえだろっ! お前が変人な理由が良く分かった。あんなのの幼馴染なら変で当然だ」
「俺はマシな方だと胸を張って言えます」
「嘘吐け! ……あーもう、謎の奴等に追われてた理由も聞こうと思ってたけどどうでもよくなったわ」
脱力する錦に、実は結構答えにくい事を聞かれる寸前だったのかと思った。
「何が“という訳”なのか分かりません」
昼休みに購買へノートを買いに行ったら、自販機で飲み物を買っていたらしい錦へ捕まった。この色素の薄い先輩はアマネを引っ張って渡り廊下か出られる場所にある柿の木の下へ連れて来ると、腰を降ろしてまぁ座れと隣の地面を叩く。
そこにアマネが座った矢先の言葉である。
アマネとしては“とうとう来たのか”という感慨深さしか感じられないが、錦や他の生徒達にとってはただ“転校生が来た”というだけだ。その転校生が実は“人”とは少し違う事を知っているのは、アイギスが思い出していない以上アマネだけである。
缶珈琲を手に錦が遠くを眺めるような目をした。
「まあそれはどうでもいいんだ。野郎の転校生に興味は無えし」
「潔いですねぇ。女子ならいいんですか」
「そうだな黒髪ポニテのキツイ性格なら……そうじゃねーよ! お前に聞きてえことがあったんだよ!」
少し錦の好みを把握したところで本題を思い出したらしく、ぐるりと錦が振り向いてアマネを見る。
「お前、“並盛”って知ってるか?」
「――、一応は。並盛町でしょう?」
予想外の単語が出てきた事で、僅かに返事が遅れてしまった。錦はそのアマネの態度をどう思ったのか鼻を鳴らして缶珈琲へ口を付ける。
「オレ中学の時その並盛だったんだけどよ。並盛って“雲雀恭弥”って奴が牛耳ってんだよ」
「その名前は知ってます。『風紀財団』の創立者ですね」
「そう。その“雲雀恭弥”って奴なんだけどよ、オレの一つ下でまだ高一なんだよ。つまりお前と同じだな」
「それは……若いですね」
「中学じゃソイツが風紀委員長やってて、オレこの髪だから結構何度も注意されてよー。それなりにケンカも強いってんで気に入られてたっぽいんだわ」
「ケンカで気に入られるって」
口では気に入られる理由へ呆れたかの様に言ったが、実際は錦が何を言いたいのか分かってきて内心冷や汗が流れていた。それが分かったように錦がアマネを真っ直ぐに見やる。
「ソイツがこの前久しぶりに連絡してきたと思ったらよ、“通う学校にアマネって名前の奴がいないか”ってきたんだぜ」
やっぱりか。と頭を抱えたくなるのを寸前で堪える。よく考えてみれば確かにアイツはどうやってアマネの居場所を知ったのか。
アパートの住所はメールで送ったが、送った相手は雲雀ではない。そこから伝わったにしてもアパートは見張られていたし、アマネは逃げていたので居場所を特定するのは難しかった筈だ。
だが雲雀は逃げている途中のアマネを見つけ出した。いくらアマネが最初は人目に付きやすいように逃げていたとは言え、雲雀は今までアマネの見た目を知らなかったのだから、普通であればおかしい。
いくらアマネの顔立ちが昔から変わっていないとはいえ、もしかしたら顔が変わっているかもしれないと考えることだって雲雀には出来たはずだ。それがなかったというのは笹川から聞いていたというのもあるかもしれないが、それだって“不確定”である。
そこまで考えて、まさかと思って錦を見れば缶珈琲を飲み干したところだった。
「走ってるバイクから振り落とされる気分が分かるか」
制服の袖を捲って腕の青痣を見せつけてくる錦に、アマネは申し訳無い気分になる。つまり彼は、雲雀に頼まれてアマネ探しを手伝わされたのだ。
頼まれたという表現だってきっと正しくない。命じられてとか脅迫されて、というべきだろう。あの雲雀がお願いをすることは少ないし、そもそもが唯我独尊な男だ。
錦の言い方から推測するにアマネのアパートへ届けに来る前か来た直後に、雲雀は巌戸台の地理を調べるのが面倒で現在その付近へ住んでいる錦を呼び出した。そうしてバイクでアマネを探し、見つけたところで錦を振り落としてアマネを助けに乱入。そのままアマネの頼みを聞いて走ってくれたのだろう。錦の事など放置して。
自分が悪い訳ではないが、アマネは気分では無く本気で申し訳なくなって錦へ頭を下げた。
「……幼馴染が申し訳ありません」
「いやもうアイツが横暴なのは昔から……幼馴染!?」
「あの馬鹿には後で言っておきますマジで本当すみません」
「おま、謝る前にもうちょっとその事詳しく説明しろ! 誰が誰の幼馴染だ!?」
何だか違う方向へ驚かれているが、アマネとしては、そこはどうでもいい。雲雀と幼馴染だと言って驚かれるのなど今に始まった事では無いのだ。
問題はアマネが頼んだせいで動いた雲雀が他人に迷惑を掛けていたことである。それもそれでやはり今に始まった事ではないが、だからといって無視していいことではないだろう。
ここは雲雀の統治する“並盛”ではないのだから。
「あれ、でも風紀財団で社会的になったからいいのかぁ?」
「良くねえだろっ! お前が変人な理由が良く分かった。あんなのの幼馴染なら変で当然だ」
「俺はマシな方だと胸を張って言えます」
「嘘吐け! ……あーもう、謎の奴等に追われてた理由も聞こうと思ってたけどどうでもよくなったわ」
脱力する錦に、実は結構答えにくい事を聞かれる寸前だったのかと思った。