ペルソナP3P
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玄関の外で足音がして振り向くと、ドアの郵便ポストに新聞が投函されたところだった。立ち上がって新聞を取りに行き、部屋へ戻りながら確認していけば昨日の事が既に記事になっている。
テーブルの上に新聞を広げてその記事を示せば、珈琲を飲んでいた雲雀が覗き込む。
「本当に転落死なんだ」
「別にその人が元凶という訳ではねぇんだけど、間違った遺志を継いでしまったという意味では悪かったんだろうなぁ」
「でも妄信的な馬鹿だったんでしょ。白蘭とやってること似てるけど、せせこましい」
「白蘭を貶さないでください」
思わず敬語で言ってしまったのは白蘭が自分の『鏡』だからだ。彼が悪者だと自分も悪者である気がするので遠慮したい。
新聞には他に桐条財閥の総帥が倒れたともある。死亡では無く『意識不明の重体』とあり、今後の財閥はどうなるのかと懸念する内容だった。
死んでいないのなら奇跡だと思ったが、アマネ以外は誰も『死んだ事を知らない』のだから現段階でも悪いことには変わり無いのだろう。複雑な気分になりながら記事を読んでいると、雲雀に呼ばれた。
「お腹空いたんだけど」
「怪我人を労わろうって気は無ぇのかぁ」
「手の込んだ物じゃなくていいよ」
「すげぇ労わりありがとう」
「どういたしまして」
新聞を広げたまま立ち上がり台所へ向かう。雲雀はそのまま新聞を読み始めるのに、今日も学校へ行く事は諦めた。
試験は終わったばかりなので心配は無いが、出席日数が気になる。佐藤へまたメールを送っておいたほうがいいだろう。
和風メインの朝食を作って戻れば雲雀が当たり前のように食べ始める。
「今日はどうするの?」
「夜になったら巌戸台分寮に行く」
「じゃあ夕方まで居ようかな」
「何でだよ」
「徹夜してバイク運転したら危ないでしょ?」
何を当たり前なことを、とばかりに言われたが、正しいようで間違っている気がした。一日徹夜したくらいで運転をミスするとは思えない。
「送っていくくらいしてあげる」
「……お気遣いどうもぉ」
雲雀に、雲雀を通して並盛の皆に、あと数ヶ月の出来事を手伝ってもらうつもりは無かった。
手伝ってもらおうとしたところで沢田達が影時間に適性のある気がしない。もしあったのならアマネはもっと早く沢田達の存在へ気付いていた筈だ。
何せ彼等は『死ぬ気の炎』や『トゥリニセッテ』といった存在を知っている。ましてや転生という経験をしたのなら、その世界の差異に気付くだろう。そして調べるなり巻き込まれるなりする。
それが無かったという事は、彼等は今まで影時間に気付いていなかったということだ。なので、影時間を知らないと考える事が出来る。
影時間を知らないのなら、手伝いを申しだされても何も出来やしない。
部屋の掃除を終えたところで雲雀が持ってきてくれたナイフと腕輪を確認する。ナイフを確認するが刃毀れなどは存在しない。流石と言うべきか誰かが手入れをしてくれたのか。
おそらく前者である。というのも一緒に持ってこられた腕輪は持ってきてくれた雲雀が言うには、アマネが沢田の家へ放り込んだ手紙の通りイタリアへこれらがあるのかを確認した際、腕輪はアマネの血を使って改造する前の、宝石が分離して交換出来る仕様のままだったらしいからだ。
それで彫金師タルボ共々渡日してもらい、アマネが郵送した血液を使って作り直してもらったのだという。ありがたいが多大な迷惑を掛けていると申し訳なくなる。
完成したナイフと腕輪は郵送してくれれば良かったのだが、沢田が雲雀へ持っていくように頼んできたらしい。結果的にそれがアマネを助ける結果になった。
布で磨いた腕輪を左手首へ嵌めて具合を確かめる。長いこと付けていなかったというのに腕輪は直ぐに馴染んだ。
「どう?」
聞かれて指を鳴らせば、腕輪が無かった時に比べ大きな炎が燃え上がる。
「……コレがあったら他にも色々と楽だっただろうなぁ」
思い出すのは『あの人』の事だけでは無く、その前の世界の事などもだ。
無為にアマネが傷付き死ぬ事もなかっただろう。もっと犠牲を減らす事だって出来たに違いない。アマネは結局リナリーやアレンを悲しませたまま死んでしまったし、成人するまでに戻ってくるという約束だって果たせずにいる。
前者は数人を除いて皆の記憶からアマネの存在は消えているだろうが、後者はきっと全員が覚えているだろう。時間の流れが違うのだとしても、アマネの体感時間ではもう十何年も待たせているのだ。
それを悪くないと思えるほど、アマネは偽善者ではない。
「そういう所、全然変わってないね」
「そう変わらねぇよ。俺は『俺』だからなぁ」
腕輪を袖の下へ隠してナイフを手に取る。ナイフベルトまでは持ってきてくれなかったらしいが、それは今まで使っていた奴で代用出来るだろう。
鞘へ仕舞ってナイフベルトで装着する。今まではナイフも召喚器も右手で扱い易い様に装着していたので、ホルダーの位置も変えたほうがいいかもしれない。
具合を確かめる為に立ち上がって色々動いていると、雲雀が楽しげな眼をするのに気付いて動きを止める。
「……手合わせはしねぇからなぁ」
「けち」
「ケチじゃねぇよ怪我人だぞぉ俺」
アマネが変わっていないように、雲雀も変わっていないようだった。
テーブルの上に新聞を広げてその記事を示せば、珈琲を飲んでいた雲雀が覗き込む。
「本当に転落死なんだ」
「別にその人が元凶という訳ではねぇんだけど、間違った遺志を継いでしまったという意味では悪かったんだろうなぁ」
「でも妄信的な馬鹿だったんでしょ。白蘭とやってること似てるけど、せせこましい」
「白蘭を貶さないでください」
思わず敬語で言ってしまったのは白蘭が自分の『鏡』だからだ。彼が悪者だと自分も悪者である気がするので遠慮したい。
新聞には他に桐条財閥の総帥が倒れたともある。死亡では無く『意識不明の重体』とあり、今後の財閥はどうなるのかと懸念する内容だった。
死んでいないのなら奇跡だと思ったが、アマネ以外は誰も『死んだ事を知らない』のだから現段階でも悪いことには変わり無いのだろう。複雑な気分になりながら記事を読んでいると、雲雀に呼ばれた。
「お腹空いたんだけど」
「怪我人を労わろうって気は無ぇのかぁ」
「手の込んだ物じゃなくていいよ」
「すげぇ労わりありがとう」
「どういたしまして」
新聞を広げたまま立ち上がり台所へ向かう。雲雀はそのまま新聞を読み始めるのに、今日も学校へ行く事は諦めた。
試験は終わったばかりなので心配は無いが、出席日数が気になる。佐藤へまたメールを送っておいたほうがいいだろう。
和風メインの朝食を作って戻れば雲雀が当たり前のように食べ始める。
「今日はどうするの?」
「夜になったら巌戸台分寮に行く」
「じゃあ夕方まで居ようかな」
「何でだよ」
「徹夜してバイク運転したら危ないでしょ?」
何を当たり前なことを、とばかりに言われたが、正しいようで間違っている気がした。一日徹夜したくらいで運転をミスするとは思えない。
「送っていくくらいしてあげる」
「……お気遣いどうもぉ」
雲雀に、雲雀を通して並盛の皆に、あと数ヶ月の出来事を手伝ってもらうつもりは無かった。
手伝ってもらおうとしたところで沢田達が影時間に適性のある気がしない。もしあったのならアマネはもっと早く沢田達の存在へ気付いていた筈だ。
何せ彼等は『死ぬ気の炎』や『トゥリニセッテ』といった存在を知っている。ましてや転生という経験をしたのなら、その世界の差異に気付くだろう。そして調べるなり巻き込まれるなりする。
それが無かったという事は、彼等は今まで影時間に気付いていなかったということだ。なので、影時間を知らないと考える事が出来る。
影時間を知らないのなら、手伝いを申しだされても何も出来やしない。
部屋の掃除を終えたところで雲雀が持ってきてくれたナイフと腕輪を確認する。ナイフを確認するが刃毀れなどは存在しない。流石と言うべきか誰かが手入れをしてくれたのか。
おそらく前者である。というのも一緒に持ってこられた腕輪は持ってきてくれた雲雀が言うには、アマネが沢田の家へ放り込んだ手紙の通りイタリアへこれらがあるのかを確認した際、腕輪はアマネの血を使って改造する前の、宝石が分離して交換出来る仕様のままだったらしいからだ。
それで彫金師タルボ共々渡日してもらい、アマネが郵送した血液を使って作り直してもらったのだという。ありがたいが多大な迷惑を掛けていると申し訳なくなる。
完成したナイフと腕輪は郵送してくれれば良かったのだが、沢田が雲雀へ持っていくように頼んできたらしい。結果的にそれがアマネを助ける結果になった。
布で磨いた腕輪を左手首へ嵌めて具合を確かめる。長いこと付けていなかったというのに腕輪は直ぐに馴染んだ。
「どう?」
聞かれて指を鳴らせば、腕輪が無かった時に比べ大きな炎が燃え上がる。
「……コレがあったら他にも色々と楽だっただろうなぁ」
思い出すのは『あの人』の事だけでは無く、その前の世界の事などもだ。
無為にアマネが傷付き死ぬ事もなかっただろう。もっと犠牲を減らす事だって出来たに違いない。アマネは結局リナリーやアレンを悲しませたまま死んでしまったし、成人するまでに戻ってくるという約束だって果たせずにいる。
前者は数人を除いて皆の記憶からアマネの存在は消えているだろうが、後者はきっと全員が覚えているだろう。時間の流れが違うのだとしても、アマネの体感時間ではもう十何年も待たせているのだ。
それを悪くないと思えるほど、アマネは偽善者ではない。
「そういう所、全然変わってないね」
「そう変わらねぇよ。俺は『俺』だからなぁ」
腕輪を袖の下へ隠してナイフを手に取る。ナイフベルトまでは持ってきてくれなかったらしいが、それは今まで使っていた奴で代用出来るだろう。
鞘へ仕舞ってナイフベルトで装着する。今まではナイフも召喚器も右手で扱い易い様に装着していたので、ホルダーの位置も変えたほうがいいかもしれない。
具合を確かめる為に立ち上がって色々動いていると、雲雀が楽しげな眼をするのに気付いて動きを止める。
「……手合わせはしねぇからなぁ」
「けち」
「ケチじゃねぇよ怪我人だぞぉ俺」
アマネが変わっていないように、雲雀も変わっていないようだった。